NTTドコモ/d Wi-Fi活用で顧客を見える化、非購入者の分析も可能に

2026年06月09日 11:00 / 流通最前線トレンド&マーケティング

「購買情報だけでなく、来店したものの購入に至らなかった潜在顧客のデータが欲しい」。そう思う企業のマーケティング担当者は多いのではないだろうか。NTTドコモ(以下:ドコモ)では、公衆Wi-Fiサービス「d Wi-Fi」を活用することで、購入者に加えて、非購入者の行動・属性なども分析し、より効率的なマーケティング施策を提案する事業を拡大している。

丸善ジュンク堂書店とNTTドコモの新たな取り組み

「d Wi-Fi」は、ドコモのスマートフォンなどの利用者であれば、SIM認証で自動接続可能。データ通信量を気にせず、気軽にインターネットに接続できる公衆Wi-Fiサービスである。

「d Wi-Fi」で接続可能なWi-Fiスポットは、日本全国のコンビニエンスストア、カフェ、ファストフードなど、さまざまな小売・サービス業界に広がっている。つながりやすく、工事不要※1と店舗側の設置も簡単で、導入した企業の顧客体験価値向上に貢献している。

公衆Wi-Fiサービスとしての提供に加えて、同社では「d Wi-Fi」接続情報による来店履歴をマーケティングに活用する事業を強化している。これまで把握できなかった購買行動を伴わない顧客の属性分析などにより、より効果的な広告・マーケティング施策の提案を行い、店舗レイアウト・商品構成のブラッシュアップを支援する試みだ。※2

「d Wi-Fi」の強みとして、Wi-Fiならではの細かな測位精度があげられる。「d Wi-Fi」の来店検知の範囲は半径20m~30m。エリア全体ではなく、店舗に特化した顧客把握やフロアごとの顧客分析、店舗内の行動を可視化できる。

他の位置情報ソリューションと比較しても、セルラーデータは広範囲をカバーし街中の人流を把握することに長(た)けており、GPSによる検知は屋外での高精度な測位が特長。対して、「d Wi-Fi」は、屋内での位置特定や細かな来店検知が可能だ。

また、ドコモ回線契約者であればSIM認証で「d Wi-Fi」に接続するので、来店客がアプリを起動するなどの手間も生じない。

「d Wi-Fi」が取得した来店データとドコモのビッグデータとの突合もできるため、単なる来店客のカウント、購買情報の取得にとどまらない、顧客の年齢・性別などの属性も把握できる。

d Wi-Fiによるマーケティング イメージ

d Wi-Fiによるマーケティング イメージ

従来、dポイント、d払いを導入している店舗では、来店客が商品を購入して、dポイントカード・アプリを提示することで来店を確認していた。一方、購入してもカード・アプリを提示しなかったり、購入に至らなかったりした来店客の情報は取得できていなかった。

この非購入者の属性、来店履歴、滞在時間、回遊行動、行動パターンなどを把握できることも、大きな特徴となっている。カード・アプリを提示していない顧客データも取得できるため、顧客分析の基盤となる情報量そのものが多くなる。ある大手コンビニチェーンで、「d Wi-Fi」データの活用により、dポイント提示者の約3倍の過去来店者へアプローチできたケースもある。

dポイント、d払いで得られた情報に加えて「d Wi-Fi」の導入・データ分析を行うことにより、dポイントをフックとした、ターゲットを明確化した精度の高いマーケティング施策を実現する。広告媒体としては、dポイントクラブ・d払いアプリ、メッセージS、Myインフォメールなどを使って、来店者へ広告配信を行うことが可能だ。

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※1設置場所によっては工事が必要な場合あり
※2「d Wi-Fi」を活用するマーケティングで利用されるユーザーの情報は、「パーソナルデータの取り扱いに関する同意事項」に定める位置情報を含む顧客のパーソナルデータの第三者提供について同意があるものに限られる

丸善ジュンク堂書店は新規購買獲得・既存客の休眠防止に活用

丸善ジュンク堂書店とNTTドコモの新たな取り組み

丸善ジュンク堂書店とNTTドコモの新たな取り組み

丸善ジュンク堂書店は、2025年から本格的に「d Wi-Fi」で得られた情報をもとに、マーケティング施策を進化させている。

書店は、幅広い層の顧客が日常的に足を運ぶ業態であり、立ち読みなど、購入に至らない顧客も少なくない。丸善ジュンク堂書店では以前から、顧客の通信環境を向上させるため「d Wi-Fi」を導入していた。

dポイント、d払いも導入済みで、商品を購入し、dポイントカード・アプリを提示した顧客のデータは保有していた。そのため、ロイヤリティが高い顧客への効果的な施策は立てられているが、利用したことがない人や若年層をターゲットにして効率良いアプローチができていないという悩みがあった。

また、書籍はどこの書店、ネットストアでも同じものが買えるため、同社店舗で購入してもらう付加価値・マーケティング施策の必要性を感じていた。ライフスタイルの多様化により、リアル店舗への来店動機づくりの重要性が増している中で、まずは書店に来てもらう施策を考えねばならないといった課題を感じていたという。同社では公式YouTubeチャンネル「読まない時間の本屋チャンネル」の開設などマス向けにも集客施策を実施していたが、さらに顧客の需要を深掘りできるマーケティング施策を模索していた。

そこで、通勤・通学の利用者が多いターミナル駅、郊外などロケーションの違う東京都2店舗・兵庫県1店舗をモデル店舗に設定。「d Wi-Fi」から得られた来店履歴などドコモが提供するデータをもとに、年齢、性別、滞在時間など来店客の分析を進めている。

コンシューマサービスカンパニー カスタマーサクセス部 第一コンサルティンググループの国井嘉秋担当部長は「今まで丸善ジュンク堂書店のような加盟店に、d Wi-Fiで通信環境、dポイントカードやd払いを使用したお客様の購買情報を提供してきました。これらに加えて、d Wi-Fiを使った提案では、来店したが購入に至らなかったお客様の属性、滞在時間、回遊行動を可視化し、今まで見えていなかった顧客ニーズや店舗の改善ポイントについての仮説を立てるための基本情報が提供できます」と意気込む。

国井氏

コンシューマサービスカンパニー カスタマーサクセス部 第一コンサルティンググループの国井嘉秋担当部長

丸善ジュンク堂書店では、「d Wi-Fi」データの活用により、従来のdポイントカード利用、d払いだけの情報と比較し、ターゲットにできる顧客数が1.4倍に増えた。また、dポイントカード、d払い利用者よりも、「d Wi-Fi」の来店検知によりリスト化した潜在顧客の方が、キャンペーンエントリー率・購買率が向上したという。

国井氏は「丸善ジュンク堂書店では、本の購入ランキングは把握していても、それを買ってらっしゃる方が実際どこから来ていて、どのぐらい滞在しているかはわかりませんでした。100人来店して1人が購入している実績なのか、2人が来店して1人が購入している実績なのかなど行動の詳細は見えていなかった。d Wi-Fiデータを活用すれば、さまざまな顧客の行動に対し、仮説が立てられますので、新たなマーケティング戦略の立案や、より顧客満足度の高い店舗設計のための材料を提供。店舗をより良くするような新しい提案もできます」と話す。

たとえば、30~40代女性の来店が多い月があっても、既婚女性が子ども向けの学習参考書を購入するのか、自分自身のための書籍・雑誌の購入なのか、どの来店目的を重視して店づくりをするか変わってくる。属性に応じたコーナーの新設、棚割り、目的買いしやすい店舗の動線設計といったきめ細かな店づくりのために、「d Wi-Fi」で得られた情報が役立つことを期待している。

商業施設のフロアごとの顧客分析も可能

丸善ジュンク堂書店以外でも、流通業界のさまざまな業態で「d Wi-Fi」を活用した顧客分析が導入されている。ショッピングセンターでは、各フロアに「d Wi-Fi」を設置することで、フロアごとの客層や滞在時間の分析に利用したケースがある。

ネットワーク本部ネットワークサービス部Wi-Fi推進部門の梅原靖志担当部長は「ショッピングセンターのフロアごとにアクセスポイントを設置することで、あるフロアだとこれぐらい滞在いただいていたり、逆に別のフロアだと短かったりと、きめ細かに来店客の行動を分析できます」と話す。

「d Wi-Fi」からの情報に加え、ドコモの持つ基地局情報と突合することで、周辺施設からの来店率や潜在顧客の特定もできた。梅原氏は「Wi-Fiだけですとスポット情報ですが、基地局のデータと掛け合わせると、どの地域から来ていただいているのか、周辺の施設からの来店率など、もう少し広い範囲の顧客行動も把握できます。実際に導入したショッピングセンターでは顧客に向けた適正なレイアウトの提案、集客のための施策に活用いただいています」と説明している。

梅原氏

ネットワーク本部 ネットワークサービス部 Wi-Fi推進部門の梅原靖志担当部長

若年層や遠方来店者の多さなど新たな発見があり、データで集客の実態を見える化したことで、マーケティング施策の精度がアップ。集客イベントにおけるのべ来場者数、周辺施設からの集客率アップにつながったという。

キャンペーンのエントリー・来店者数がアップ

そのほかにも、大手小売チェーンでは、キャンペーン情報の配信を「d Wi-Fi」接続履歴のあるユーザーに対して実施した。「d Wi-Fi」接続履歴があり、来店が検知できたユーザーに対して広告配信を実施することで、従来の来店履歴に基づかないチラシ、他社配信サービスなどの販促と比較して、アクション率が高く、キャンペーンのエントリー者数・来店者数が10%以上増加した。

広告出稿後の送客数を確認できる点も、今後に生かせると評価され、複数拠点へのアクセスポイント設置の実施につながった。

また、ある小売チェーンで、複数ブランド間における送客施策に「d Wi-Fi」を活用した事例もある。ブランドの認知向上と新規顧客獲得のため、認知度の高いブランドBの顧客をブランドAに送客したいというニーズがあった。

そこで、ブランドBの来店客に対し、週末にブランドAへ誘致するような広告を配信するといった、これまでと異なる顧客行動パターンに対して広告配信を行った。来店者(未購入者含む)を把握することで、効果的なマーケティングデータを獲得。施策の効果向上、来店検知を生かした効果検証に寄与した。

国井氏は「d Wi-Fiで得たデータを活用して売り上げアップ、送客はもちろんですが、自社店舗に来店しているユーザーなのに、購入に至らなかったお客様のニーズや関心を可視化できることが大きいと思います。dポイント・d払い加盟店の悩みに寄り添いたい。マーケティング施策の改善を一緒に考えていきたいと思っています」と述べた。

「d Wi-Fi」データを活用すれば、マーケティング施策の精度が上がり、ロイヤルカスタマーの満足度向上、新規顧客の獲得につながる。ドコモは今後も、「d Wi-Fi」を単なる通信環境提供にとどまらず、得られた情報を活用したマーケティング支援サービスとしてさらに強化していく考えだ。

■問い合わせ先
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■国井嘉秋氏略歴
入社以来、カスタマーサクセス部門で加盟店支援に従事。現在はデータ協業やマーケティング支援を統括。現場経験に基づく精緻なコンサルティング提案を強みとする。

■梅原靖志氏略歴
法人部門での10年間にわたるシステム開発や営業推進の経験を経て、2025年7月より現職。現在はd Wi-Fiを活用したマーケティングソリューションのビジネスモデル構築および拡販を推進している。

取材・執筆 鹿野島智子

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