流通ISAC/製造・卸・小売が連携、トライアルとNTTのデータ活用が設立のきっかけ
2026年04月07日 13:17 / IT・システム
流通業界で初となる「ISAC(アイザック)」が立ち上がる。サイバー攻撃のリスクが高まるなか、製造・卸・小売が業界を横断してセキュリティ情報を共有していく。立ち上げのきっかけは、トライアルホールディングスとNTTによるデータ活用の取り組みだった。
4月6日、トライアルHD、アサヒグループジャパン、三菱食品、NTTの4社による合同記者会見を実施。4月中に「流通ISAC」を立ち上げ、製造・卸・小売が業界全体としてサイバーリスクに備える枠組みを構築し、情報の共有や分析に加え、セキュリティ対策のナレッジを伝えていく。
そもそも「ISAC」とは、「Information Sharing and Analysis Center」の頭文字で、業界内の情報の共有・連携を行う組織体を意味する。国内ではすでに通信や電力、金融、自動車などの業界でISACが設立されている。
「流通ISAC」では、上記4社に加え、スギホールディングスや三井物産流通グループ、花王、サントリーホールディングスなども設立発起人として名を連ねる。設立時は10社だが、今後は「協調領域」として競合企業も含め広く賛同企業を募っていく。
設立発起人の1社であるアサヒグループジャパンは、昨年9月にサイバー攻撃を受けてシステム障害が発生している。濱田賢司社長は記者会見でもサイバー攻撃におけるリスクを次のように指摘している。
「製造業は食料品、日用品などお客様の日常生活に欠かせない商品を安定的に供給する役割を担っている。メーカー・卸・小売りが密接につながるサプライチェーンにおいて、情報システムを取り巻くリスクが顕在化した際、個社の問題にとどまらず、社会やお客様への影響が大きくなりかねないという課題がある」
卸でも同様の課題認識を持っている。三菱食品の京谷裕取締役によると、三菱食品は約3000社の小売企業、約6500社のメーカー、約400社の物流パートナーとそれぞれデータ連携を行っており、サイバーセキュリティ上のリスクポイントが多岐にわたるという。
「このように複雑なサプライチェーン上でひとたびセキュリティ事故が発生すると、食品流通という社会インフラに対し甚大な影響を及ぼす可能性がある。ただ、企業が単独でサイバーセキュリティリスクへの対策をするには限界がある」
トライアルHDの永⽥洋幸社長は、小売業の立場から情報セキュリティへの課題について次のように述べる。
「製造から生活者への販売までのデータを連携させることで、生産や在庫管理、商品開発のムダ・ムラ・ムリが削減され、お客様のニーズに対応した商品の売り場作りが可能になる。そのような流通エコシステムが今後の流通業界の改革には不可欠。一方で、このような連携が広がるほど、情報セキュリティのリスクも相互に影響し合う」
その一例として、購買データの活用は情報漏洩のリスクやサイバー攻撃の拡大につながると指摘する。
「サイバーリスクはもはや一企業で対応できる課題ではなく、業界全体で情報を共有し、協力して対策を進めていくことが必要になる」
きっかけは業界横断でのデータドリブンの仕組みづくり
各社が危機感を持つ中で、製配販(製造・卸・小売)が連携して「流通ISAC」が立ち上がることになった。こうした業界全体での動きが生じる端緒は、2024年にさかのぼる。「流通ISAC」の事務局でもあるNTTと、トライアルHDの両社による連携がきっかけだ。当時についてNTTの島田明社長はこう語る。
「2024年にNTTとトライアルとで、流通のデータを活用して生産効率の向上や、在庫の効率化などに活用できないかという話を始めた。業界横断でデータドリブンの仕組みを作っていこうとすると、やはりセキュリティが大きな課題となる。そんな問題意識があった。そうした際に、トライアルはいろいろなメーカーや卸業者などとの関係が強くて、そこから話が広がっていった。それで最終的に『流通ISAC』という形になった」
つまり、もともとは流通業界でのデータ活用による効率的な仕組みづくりから話が始まったというわけだ。
このようにして立ち上がることになった「流通ISAC」。設立後はワーキンググループを立ち上げて、月に1度のペースで活動していくという。
取材・執筆 比木暁
流通ニュースでは小売・流通業界に特化した
B2B専門のニュースを平日毎朝メール配信しています。




