「小売業態別」のピークとライフサイクルの話
2008年11月17日 / 商人舎からのメッセージ
「小売業態別」のピークとライフサイクルの話
結城 義晴氏(商人舎 代表取締役社長)
「商業統計」の2007年最新版。その中に、小売業態別統計があります。
事業の種類、営業の種類のことを「業種」と言います。これは「日本標準産業分類」<総務省統計局>上の事業の種類を意味します。製造業や卸売業の分類と似ていて、「川上分類」とも呼ばれています。小売業では、八百屋、魚屋、肉屋、本屋、薬屋、呉服屋、電気屋などなど、「屋」のつく商売の種類のことです。
ご承知のように、この業種は、競争の中で衰退していきました。残念ながら、顧客志向ではない店が、多かったからです。
それに対して、事業や営業の状態のことを「業態」と呼びます。顧客の側から便利な事業や営業の状態を想定して、組み立てなおすと「業態」となります。したがって、業態は必然的に、「社会的機能分類」となります。
スーパーマーケットやコンビニ、ドラッグストアやホームセンターなど、比較的に新しい小売業の事業の状態を分類したものが「業態」と言われています。
「商業統計」の小売業態別統計は、新しい分類に基づいた調査データで、昭和51年から始められました。この小売業の「業態別統計」をよく見ると、実態が実によく理解できます。
先日、ある大学から、小売業に関する講座を担当してほしいという要請が来ました。その内容は、「百貨店、スーパー、コンビニの分類ごとに」というものでした。はっきりと「百貨店・スーパー・コンビニ」という分類を使いました。
しかし、百貨店とコンビニはいいのですが、「スーパー」では意味が分かりません。「顧客の側から便利な事業や営業の状態」を整理しなおすと、「スーパー」では全く不十分なのです。
だから商業統計の小売業態別統計では、一般に言われているスーパーをまず「総合スーパー」と「専門スーパー」に分類します。
総合スーパーは、イオンのジャスコやセブン&アイ・コーポレーションのイトーヨーカ堂などを指します。
専門スーパーは、生活領域ごとに三つに分かれていて、「衣料スーパー」「食品スーパー」「住関連スーパー」となります。これは、分かりやすい。
衣料スーパーはユニクロやしまむら、食品スーパーはライフコーポレーションやヨークベニマル、そして住関連スーパーにはホームセンターのカインズやコメリ、ホームファッションのニトリなどが代表企業となります。
ここで、くだんの大学からの依頼に話を戻します。
「百貨店・スーパー・コンビニ」。百貨店の売上高ピークは、商業統計では、平成3年。店舗数478店で、年商11兆3499億円。その後、下がりっぱなしで、最新の平成19年には272店・7兆6883億円にまで、縮小してしまいました。
スーパーを、どうも総合スーパーと捉えているらしい大学関係者の見方からすると、この総合スーパーのなかの「大型総合スーパー」は、すでに平成9年にピークを迎えてしまっています。もう10年以上も前のことです。平成19年に1546店舗・年商8兆9870億円が頂点だったのです。
同様に、住関連スーパーは平成14年がピーク。1万3020店で年商6兆1434億円。ただし私は、この住関連スーパーは、今一度、再編成されて、ピークが再びやってくると見ています。
衣料スーパーと食品スーパーのピークは、現時点、あるいはまだ先のようです。平成19年の衣料スーパーの年商は1兆6093億円、食品スーパーは17兆0535億円。どちらも最新統計が頂点です。
日本の人口動態や現在の消費不況を考えると、この平成19年統計がピークと見る方が正しいかもしれません。
そして、コンビニも、最新のデータがピークです。平成19年が、4万3318店で、6兆9609億円。この業態も、私は、そろそろピークを迎えているのではないかと思います。
さて、大学関係者の「百貨店・スーパー・コンビニ」という一般的な認識と比較すると、実態は、ずいぶん違うことが分かります。そのピークを知るだけで、世間の認識のずれが分かります。大学関係者だけでなく、一般マスコミでも、この見方が大勢ですし、学生となると、さらに誤解もはなはだしい。
少なくとも、実業をする人たちには、正しい認識を持ってもらいたいものです。ピークの過ぎた業態。現在がピークの業態。そしてピークに向かっている業態。業態別にライフサイクルが存在するのです。
個別企業の動向や推移とともに、業態別のライフサイクルは、認知しておかねばなりません。それが正確な大局的判断をもたらすからです。
<主要業態別の時系列変化>

■結城義晴 プロフィル——-
1952 年福岡生まれ。早稲田大学卒。㈱商人舎代表取締役社長、コーネル大学リテール・マネジメント・プログラム・オブ・ジャパン副学長。商人の魂をもったジャーナリストを標榜し、主にイノベーションとホスピタリティの側面から論述を展開中。結城義晴のBlog[毎日更新宣言]はそのベースキャンプ。
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