2025年上期スーパーM&A/大手はドミナント拡充、ドラッグの食品強化進む
2025年06月13日 11:00 / 経営
2025年上期は、トライアルホールディングスによる西友の買収に始まり、日本各地でスーパーマーケットのM&Aが加速した。人口減、生活者のニーズの多様化、円安・原材料価格の高騰によるコスト増などを背景に、大手チェーンによるドミナント拡充、ドラッグストアのスーパー獲得による食品強化戦略の案件が目立った。
トライアルは西友買収で全国585店舗体制に
3月5日、トライアルHDは、西友を約3800億円で買収すると発表した。両社の業績を単純に合算すると、売上高1兆2014億円、営業利益426億円、全国585店舗体制になる(2月28日時点、株式譲渡は7月1日の予定)。
両社は店舗の地域的な重複が少ないため、商圏のカニバリゼーションによる閉店は予定していない。買収後も西友のブランドと雇用は維持されるという。
製造・物流拠点も地域補完の関係にあり、共同利用を検討していく。
■トライアルHD/西友買収で売上高1兆2000億円、585店舗体制へ
クスリのアオキは地方の中小スーパー積極的に取得
また、ドラッグストアによるスーパーのM&Aでは、クスリのアオキホールディングスが積極的に地域の中小スーパーを傘下に収めている。
5月8日、同社は香川県でスーパー「PiCASO」を5店舗運営するミワ商店の子会社化を発表した。香川県では、2024年ムーミーが展開するスーパーマーケット7店舗を取得し、同県初出店を果たしている。
2024年にはムーミーのほか、静岡県のスーパーよどばし・ヒバリヤ、千葉県の木村屋、奈良県・和歌山県のスーパーヨシムラ・ハッスル、滋賀県・京都府のハッピーテラダ、東北・関東のトップマートなどを取得している。
■クスリのアオキ/香川県でスーパー5店舗運営「ミワ商店」買収
イオン九州、丸久は九州のドミナント強化
さらに、地方の有力スーパーチェーンが、中小スーパーを取得することで、未開拓のエリアや既存の事業基盤を強化する動きもみられた。
イオン九州は7月1日付で、長崎市内に地域密着型スーパー「ジョイフルサン」9店舗を運営するジョイフルサンアルファを完全子会社化する。
同社グループの店舗が少ない長崎市内において、「ジョイフルサン」の培ってきた信用力を生かし、ドミナントを強化する計画。
中国・九州地方で店舗を展開するリテールパートナーズグループの丸久は、宮崎県でスーパー「ナガノヤ」6店舗、「ウメコウジ」2店舗を運営している永野の全株式を6月30日付で取得する。
永野は、焼き肉のたれやぽん酢などのプライベートブランド商品開発とユーモアのあるネーミングの開発商品(総菜、精肉など)が注目されており、知名度が高い。
丸久だけでなく、宮崎県で28店舗を展開するマルミヤストアを傘下に持つリテールパートナーズとしても、永野が持つ差別化商品やブランド力を活用したい考え。
また、九州南部のグループ企業との物流機能活用によるシナジーも期待しているという。
そのほか、ディスカウントストアとバラエティーストアを運営するジェーソンは3月31日、群馬県沼田市で6店舗を運営するサンモールを子会社化した。
トライアルHDは、3月5日の記者会見で、西友買収はさらなる業界再編への布石であり、主導的立場となる礎を築くと宣言した。今後も、生き残りをかけて、同業種・異業種問わず、スーパー業界の再編が進みそうだ。
取材・執筆 鹿野島智子
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