「イオンの反省」は店に表れる
2009年04月02日 / 商人舎からのメッセージ
「イオンの反省」は店に表れる
結城 義晴氏(商人舎 代表取締役社長)
1
3月18日に、イオン(株)岡田元也社長が「反省会見」をしました。
「今日はイオンの反省会でございます。お客様第一といいながら、我々が出遅れておりました」
翌日には主要紙の朝刊に「イオンの反省」と題した全面広告が打たれました。
「イオンの価格は、他店にくらべて、決して安くはありませんでした」
「イオンの売り場には、欲しいと思える商品が並んでいませんでした」
「イオンは、お客さまへのサービスを、怠っていました」
「もう一度、お客さまが求める本当の低価格、売場、サービスを取り戻すことに全力を尽くしていきます」
2
正式の広報文書は、3月18日付で、以下のようになっています。
「私達イオンは、前身のジャスコ創業以来、お客さまの声に学び、また優れた競合企業から学び、お客さまのご満足を最大化することを企業哲学として、日本の流通構造改革に取り組んでまいりました」
顧客満足の最大化を、流通構造改革に定める。それがイオンのポリシーの一つ。
「しかしながら今日のイオンは、時代の経過や、組織の巨大化に伴い、創業以来綿々と受け継がれてきた『お客さま第一で行動する』という企業文化の発露が不十分な状況にあります」
時間の経過とともに組織が強大化して、顧客満足が不十分となったと自戒しているわけです。
「結果として、お客さまのご期待に添えない状況が発生していることを真摯に反省し、もう一度創業の精神に立ち戻り、『お客さま満足』の実現に向けて行動してまいります」
この文面では、イオンは顧客の期待に添えないことを反省しています。だから、「顧客満足」を第一とする創業の精神に戻る。イオンの言わんとすることは、よく分かります。
「イオンの反省」は、このあと、三つの具体的政策を提示します。
第一は「ベストプライスbyトップバリュ」に新たに500品目を追加導入すること。これは、ナショナルブランドと同等の品質の商品をディスカウント価格で提供することで、いわゆる「コンペティティブブランド」(競争ブランド)開発。
第二は、5000品目の「トップバリュ」全体の34%の1700品目の価格引き下げを行うこと。これは、ウォルマートの「ロールバック」と同じ考え方。
第三は、ナショナルブランド3400品目の価格引き下げ。
これは普通の「ディスカウント」。
この後に文章があります。
「イオンは今後もお客さま代位企業として、価格リーダーシップを発揮すべく、全商品の見直しとNB商品の値下げを推進してまいります」
第一は、4月14日以降順次展開。
第二は、3月18日に600品目値下げし、8月まで順次実施。
第三は、3月20日より順次値下げ。
3
さて、この「イオンの反省」。
競争相手としてではなく、取引先としてではなく、新聞広告を見た顧客として、あなたは、どう感じるでしょうか。「反省を販促にしている」と思うか。「この時期の反省とは、やはり商人だ」と感じるか。
4
戦後の商業界で、「反省」は一時、ブームのようになりました。戦後の闇市商売の顧客無視に対する反動のごとき運動となりました。それが「正札販売運動」。
「私は、これまで、お客さまを無視した商売をしておりました。反省とともに、お詫びし、全品安売りの売り尽くしをし、生まれ変わります」
亡くなられた倉本長治先生、新保民八先生、須田泰三先生など、この「反省」を商人たちに迫り、正しい商人に改心させ、商売の立て直しを実現させました。
多くの商人が反省し、立ち直りました。立ち直らなかった商人も、また、いました。ただしその反省が、商人としての本当の反省だったか否かは、しばらくして、店を見れば、すぐに分かりました。恐ろしいことに、店には、如実に表れるからです。
「イオンの反省」に関して、私は、その評価をここで明らかにするつもりはありません。商業の場合、「反省」のあとの店の状態が、何よりも本当に反省していたのかどうかを、教えてくれるからです。
世界最大の企業ウォルマートの創業者サム・ウォルトンは1992年に逝去しました。しかしその後もウォルマートは成長を続け、今年1月末の決算では4012億ドルの年商(100円換算で40兆円)の超巨大企業となりました。
サム・ウォルトンは『Think small(小さく考えよ)』を合言葉にしました。「私たちが巨大な会社になったのは、巨大な会社のようには振舞わなかったからだ」
「イオンの反省」は、自ら自戒する如く、「時間の経過と組織の巨大化」に理由があるようです。だから、イオンの反省は、「巨大な会社のように振舞わない」ことに向けられるだろうと、私は思うのです。組織の振る舞いが、店舗に表れてしまうのが、商業の特徴だからです。
■結城義晴 プロフィル——-
1952年福岡生まれ。早稲田大学卒。(株)商人舎代表取締役社長、コーネル大学リテール・マネジメント・プログラム・オブ・ジャパン副学長。商人の魂をもったジャーナリストを標榜し、主にイノベーションとホスピタリティの側面から論述を展開中。結城義晴のBlog[毎日更新宣言]はそのベースキャ
ンプ。
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