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INDITEX/日本でZARAなど15店を出店、今後も販促は不要

2015年04月07日 / トピックス商品店舗流通最前線経営

ZARA、Bershkaなどアパレルブランドを展開するスペインのINDITEXグループは、2015年度に日本国内で15店程度を出店する。

4月7日、ヘスス・エチェバリアINDITEXグループ広報本部長が来日し、流通ニュースの取材に答えた。

INDITEXグループのブランド戦略、出店戦略、ネット通販への対応、TVCMやチラシを打たない独自のプロモーション戦略などを聞いた。

■複数ブランド展開が、グループの成長を促す

<ヘスス・エチェバリア広報本部長>
ヘスス・エチェバリア広報本部長

4月7日現在では、日本国内のZARA95店を年内に99店、Bershka21店を21店、ZARA HOME11店を15店、Stradivarius11店を11店とする目途がたっている。

INDITEX社の2015年1月期の売上高は181億1700万ユーロ(1ユーロ130円換算で約2兆3500億円・前年比8%増)となった。グロスプロフィットは105億6900万ユーロ(約1兆3700億円・同7%増)、最終利益25億100万ユーロ(約3300億円・5%増)だった。

<ブランド別売上高>
ブランド別売上高

日本国内の売上高は非公表だが、展開する8つのブランドの全てが前年実績を超えた。店舗数は世界で6683店まで拡大し、好調な実績となった。2014年は日本国内で20店強を出店したが、2015年は15店程度を出店する予定だ。

エチェバリア氏は、日本事業の黒字化については回答を控えたが、「我々は事業を進めるにあたって、投資と成長は平行してあるものであり、日本でも同様な展開をしている。日本での事業は最初からポジティブなもので、日本のファッションセンスは、とてもエレガントであり、テイストも素晴らしい。日本でのファッションは、全アジアでも流行するもので、常にアジアのファッションの中心として日本を見ている」と語った。

<RFID>
RFID

継続した投資が成長に必要で、「新規出店と既存店の改装」、「ロジスティクス」、「技術革新」の3分野を中心に投資を行う。現在、RFIDによる商品管理システムの導入を進めており、日本でも5月末ごろからシステム導入に向けたトレーニングを開始し、9月、10月ごろには国内全店に導入する計画だ。

2015年の出店でも複数のブランドを出店する戦略を踏襲する。1975年に開始したZARAを中心に、1991年に開始したPull&Bear、1994年に開始したStradivarius、1998年に開始したBershka、2003年に開始したZARA HOMEなどをそれぞれ出店し、グループ全体の成長を目指す。

<ZARAららぽーと富士見店(以下、全てららぽーと富士見の出店店舗)>
ZARAららぽーと富士見店

かなり早い段階から、事業全体に占めるにZARAの売上構成比は63~65%という売上構成比が定着している。ZARAの成長とともに他のブランドも売上を伸ばしており、健全な成長をしているという。現在、全てのブランドが実店舗(Online)のほかにネット通販(Offline)に対応しており、統一したプラットフォームで運営しているのも強みとなっている。

■出店はブランド単位が基本

各ブランドはあくまで、独立したもので、客層や出店戦略が異なる。それぞれのブランドがどこに出店するかは、各ブランドの判断によるため、すでに自社ブランドが展開している地域やショッピングセンターに出店するとは限らない。例えば、Bershka単独の売上高でも16億6400万ユーロの実績で、ブランドを単独企業として考えてもかなりの規模を確保し、各ブランドとも利益を出している。

ZARAは1975年に開始したブランドで歴史があり、結果的にZARAのある地域に後発ブランドが出店することはあるが、自社ブランドを併設出店する考えはない。出店の判断はあくまで、ブランドごとの決定で、最終的な出店については、会長が調整する仕組みだという。

<日本法人の本社入口、全8ブランドのロゴも>
日本法人の本社入口、全8ブランドのロゴも

ファーストリテイリングでは、ベーシックアパレルを重視するユニクロとファッション性を重視するジーユーを併設出店することで、顧客の選択肢を増やし、グループ全体の売上を上げる戦略をとるが、INDITEX社では併設出店は基本的に考えていない。

「2014年4月に東京・青山に旗艦店を出店したZARA HOMEでも、出店にあたり、地域の顧客がその地域に、そのブランドを望んでいるのかを慎重に考慮して決定した。出店でも商品づくりと同様に、顧客中心の視点を最優先する」と語る。

<ZARAの店内>
ZARAの店内

日本未進出の4ブランドの上陸時期は未定だが、中期的に見て、会長の承認を得た上で実施する。長期的な視点としては、日本の顧客に提供できるブランドという評価があれば、全ブランドを展開する予定だ。

日本でのこれまでのZARAの成長、ZARAに続くBershka、ZARA HOME、Stradivariusの展開については、満足できる結果と評価した。注意深く一歩一歩、事業を拡大するやり方は、日本国内に限らず、全世界で共通なもの。いかにお客さまに対して新しいサービスを提供するかがブランド成功の鍵だという。

■ネット通販は、あくまで利便性拡大の手段

INDITEX社では現在、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、ロシアなど世界27か国でネット通販(online store)を展開する。日本でもZARAで、ネット通販を行っており、5月には、ZARA HOMEもネット通販に対応する。その他のブランドも状況を踏まえて順次、ネット通販に対応する予定だ。

<ZARA HOME>
ZARA HOME

ネット通販の役割について、エチェバリア氏は「あくまでネット通販は、プラットフォームの一環で、一つのチャネルとして成長させるものというよりも、お客さまの利便性を高めるものだ」と語る。

「お客さまはネット通販と実店舗をあまり区別していない。ZARAやStradivariusというブランドを買い求めている。たとえば、ネット通販で商品を見て、予約も購入もしないが、実際の店舗で買うとか、逆に店舗で実物を見て、ネット通販で購入するという形で一緒に使っている」という。

■顧客起点の短期間の商品づくりで広告は不要

INDITEX社は、TVCMやチラシなどを投入しない企業として知られる。その理由について、エチェバリア氏は「顧客起点の商品づくりをビジネスモデルの根幹としており、顧客の声を吸い上げ、それを商品化し、短期間で商品を店頭に届ける仕組みでは、チラシやCMが入る時間的な余地がない」と語る。

<Bershka>
Bershka

例えば、従来型のアパレル企業では、商品を販売する5~6月前に一定数量の商品を買い付け、在庫を持つプッシュモデルとなっている。在庫を前提に商品を顧客に売り込むため、必然的にプロモーションやTVCMが必要となってくる。

しかし、INDITEX社のビジネスモデルは、常に顧客を起点とした商品づくりを中心とするプルモデルを採用する。各店舗から集められた顧客の声は、デザイナーに伝えられ2~3週間で商品化する。

「最も大切なことは、各ブランドごとの顧客が、どんな商品を望んでいるのか、どんな商品を気にいっていないのか、という情報を各ブランドのデザイナーがいち早く、正確に知ることができるかだ」という。

<Stradivarius>
Stradivarius

生産については、本社の近くで行う近隣型のモデルを採用し、シーズンごとに割合は変わるものの、近年の生産高の約63%は、スペインとポルトガルを中心としたヨーロッパで行い、35%はアジアで行っている。

物流システムは、社内開発チームが開発したデータベースアプリケーションをもとに、流通センターでの注文受取りから店舗への商品配送までを、ヨーロッパ内では24時間、アメリカ、アジアの各店舗では48時間以内で行う仕組みがある。

「我々にとっては、お客さまと商品が出会う店舗そのものが広告だと思っている。週に2回、新製品が届くリアルタイムのサイクルがあり、まさに、店舗そのものが広告だ」と語った。

<Stradivariusの店内>
Stradivariusの店内

■ヘスス・エチェバリア氏の略歴
1962年スペイン・バルセロナ生まれ
マドリードの大学2校でメディア学と哲学の単位を取得
出版、新聞メディア、タバコメーカーの広報業務を歴任
2005年INDITEXグループに入社

■INDITEX社のブランド紹介

ZARA
1975年開始の主力ブランド。ヨーロッパをはじめ全世界のトレンドをいち早く取り入れたアイテムを豊富なデザインとサイズで展開。200人以上からなるクリエイティブチームは世界のあらゆる情報をインスピレーションの源とし、それをもとに全世界のお客のニーズにこたえる都会的で洗練されたデザインを制作する。毎週2回、スペインから世界の店舗に新商品が届き、来店のたびに新鮮な品そろえを提供する。店舗数は世界で2000店舗以上。

Bershka
1998年にスペインで創業したカジュアル衣料ブランド。10代、20代を中心としたファッション・音楽・ソーシャルネットワーク(SNS)・携帯電話・テクノロジーに興味を持つ若い男女をターゲットとする。スポーティからカジュアルなものまで幅広い商品をジャンル別に陳列し、ベーシックなアイテムからファッション性の高いものまで扱う。商品ラインはトレンドアイテムやセクシーカジュアルの「Bershka」、おもにティーン向けのリラックスカジュアル「BSK」、スポーティー、キャンパスカジュアルの「Man」の3ライン。2015年4月現在、世界67か国に970店以上を展開する。

Stradivarius
1994年にスペインのサバデルで創業したレディスカジュアル衣料ブランドで、1999年にINDITEXグループ傘下となり、海外展開を開始した。コンセプトは、「ママのような服を着るには若過ぎるけれど、10代前半の女の子みたいな服装をするには、おしゃれで洗練されすぎている。そんな女の子なら誰でも夢を実現できる」とした。ターゲット層は20歳~35歳の女の子。現在、世界58か国に800店を展開する。

ZARA HOME
2003年に自社開発したホームファニシングブランド。洋服を替えるように、気軽に部屋の雰囲気も、気分や季節によって変えていくライフスタイルを提案する。商品の約70%はベッドリネンやバス、テーブル用のホームテキスタイルで、そのほかテーブルウェアやカトラリー、部屋着やギフトアイテムなどの家庭用雑貨も販売する。スタッフにはその道のプロを2500人以上そろえ、毎シーズン、週ごとに新作を投入しながら、インテリアの最新トレンドの商品を提案する。ユニークなビジョンのもと、デザイナーも国際色豊かなメンバーをそろえ、室内を温かく、ファッショナブルな空間にするためのさまざまな提案をする。現在、世界45か国に400店以上を展開する。

Massimo Dutti
エレガントでユニバーサルなデザインが国境を越えて、自立した都会的でコスモポリタンな現代の男性と女性のハートをつかむブランド。1991年にINDITEXグループ傘下となった。都会的で洗練されたスタイルからスポーティーなスタイルまで、一貫してエレガンスにこだわった、幅広いラインの商品を提案する。最新世代の、機能的で心地良い高品質生地を使って、ベーシックながら新しいファッションをクリエイトする。落ち着いたテクスチャ、100%天然生地、革新的なテイストミックスが、最高の着心地と非の打ちどころのないスタイルを演出する。

Massimo Dutti

PULL&BEAR
1991年に、若い顧客のニーズに適応した、カジュアルなfahsion愛好家のための開発した自社ブランド。店内では衣類をただ販売するだけでなく、提供する製品のメッセージや気持ちを伝えるための空間づくりをする。店舗のファニチャーは、新しいものとリサイクルオブジェクトと混合して独自のスタイルを生み出し、若者たちが住みたくなるような空間とした。
PULL&BEAR

Oysho
2001年に開始した、女性用ランジェリーや下着の最新ファッショントレンドを提供する自社開発ブランド。楽しくセクシーでフェミニンなランジェリーや、モダンで都会的なカジュアルアウターウェア、カジュアルでくつろげるホームウェア、オリジナルアクセサリーや小物を展開する。
Oysho

Uterqüe
Uterqüeは2008年から開始した、ファッション小物と皮製品を含むハイクオリティの服の自社開発ブランド。Uterqüeのクリエイティブチームがデザインするコレクションは、ファッションの最新トレンドの美学とハイクオリティを独創性に融合させたもの。内装は機能的で、来店したお客にとって非常に快適なデザインを目指した。あくなきリノベーションにおけるファッション提案と、高品質と魅力的な価格のパフォーマンスの良さこそがUterqüeの神髄という。
Uterqüe

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