イオンリテール/AIで現場改革、従業員向け多機能端末とアプリ導入
2025年05月15日 13:14 / IT・システム
イオンリテールは5月29日から、従業員が店舗で利用する多機能端末「オールインワンデバイス」を約390店舗に導入する。
「オールインワンデバイス」は、「AIカカク」「AIオーダー」「AIワーク」「MaIボード」「商品位置検索システム」「AIアシスタント」など同社の店舗支援システムを一つのデバイスに搭載している。
山村卓也 IT企画本部長は「新デバイス、アプリの導入で従業員の働き方改革を行い、エンゲージメント・生産性向上につなげる。賃上げによる人件費が上昇する中、安定的な営業利益を出し続けるには、生産性の改善が欠かせない。ロングスパンで生産性を高め続け、スタッフがよりお客様満足につながる働き方ができるよう、システムの供給で支援する」と説明した。
2025年度は約1万台を導入、2026年度までに順次計約5万台を店舗スタッフに配布する。
新デバイスには商品の賞味期限を読み込み、登録できる文字スキャン、カメラに写る複数のバーコードを一括で読み取りリスト化が可能な一括スキャン、従来の光反射を利用したスキャン機では届かない位置にあるバーコードも読み取る長距離スキャンも搭載している。
また、新デバイスでは6月から、一人ひとりのシフトや時間帯ごとのワークスケジュールを提示する「AIワーク」を柱に、あらゆる業務支援や教育などのシステムを統合した「従業員アプリ」を実証運用する。
従来、「AIカカク」など各システムはパソコン、ハンディターミナルなど別々の端末に搭載され、利用時はそれぞれが搭載された端末を立ち上げるといった手間がかかっていた。
複数システムを一つのアプリに統合したことで、1回のログインで各システムを横断的に利用できる(シングルサインオン)ようになる。
業務内容に応じて必要な情報を優先的に表示することで1画面の情報量を抑え、迷うことなく必要なシステムにアクセス可能だという。
アプリ自体をパーソナライズすることで、個人ごとの業務指示から業務遂行支援、完了連絡までをシームレスに対応。ムダムリムラを減らしたワークスケジュールを実現する。
さらに、「商品位置検索システム」を実装しており、補充する商品のバーコードを読み取ると、商品棚の位置が表示される仕組みで、初めて作業に入る従業員も簡単に補充先の場所を見つけられる。
6月から、生成AIを活用した従業員向けのチャットボット「AIアシスタント」も実装する。
これまで合計数千~数万ページにわたって文書化されていた業務マニュアルや法律を学習したAIが、従業員の質問に対して回答を提示する。
初期実装では、イオンラウンジの利用方法・場所の案内、免税対応・免税対象となる商品・下限金額の確認落とし物の対応、公共料金の支払い、株主優待制度の説明などを対応予定だ。
新人や若手をはじめ多くの従業員に対し、顧客対応での困りごとやわからない業務への知識を提示することで、生産性向上を図っていく。
アプリ、スキャンの機能に加えて、一つの端末で各システムを使用でき、AIアシスタントが業務をサポートすることで、作業負担を軽減。1カ月で数時間の作業時間削減を見込む。
山村氏は「新デバイス・アプリの導入で、属人化・経験重視の業務をさらに変えていく。働き方改革を進め、より現場でスタッフが活躍することにより、お客様に人を接点とした温かみのある買い物体験を提供したい」と意気込みを語った。
なお、従業員が愛着を持ってデバイスを活用できるよう、カバーデザインを複数色用意した。ベーシックな色合いだけでなく、かわいらしく、ポップな色合いも採用した。
取材・執筆 鹿野島智子
流通ニュースでは小売・流通業界に特化した
B2B専門のニュースを平日毎朝メール配信しています。