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イケア/Life at Home Report 2023発表、過去10年間の暮らしを比較

2024年03月15日 13:50 / 経営

イケア・ジャパンは3月5日、日本を調査対象に含む「Life at Home Report 2023」を発表した。Life at Home Reportはイケアが2014年から行っている家での暮らしに関する調査で、10年目となる今回のレポートは、世界各国の合計25万人以上の調査参加者から収集した過去10年分のデータから得たインサイト(洞察)の集大成となった。

2023年度は新たに世界38カ国3万7000人以上を対象に定量調査を、また日本を含む世界の4カ国(日本、スウェーデン、インド、米国)の計8世帯へのホームビジット(家への訪問)が行われ、日本では、東京都と長野県松本市在住の2世帯でインタビューと撮影を実施した。

<Life at Home Report 2023>

Ingkaグループ Life at Home Communication LeaderのKatie McCrory氏は、「長年にわたり調査を行っているなかで、家に対する感じ方は自分自身に対する感じ方に大きな影響を与えることが明らかになった。調査によると、家での暮らしをポジティブに変えることで、暮らしや周りのコミュニティに大きな影響を与えることができる。よりよい暮らしは家から始まる」とコメントしている。

調査によると、日本の定量調査結果として、「世界では家での暮らしにポジティブに感じている人が多い、一方で日本は少ない」という結果となった。グローバル平均では、現在の家での暮らしをポジティブにとらえている人が60%、家がお気に入りの場所と回答した人も半数以上、そして今後2年間の展望をポジティブにとらえている人も47%と、家での暮らしに対する肯定的な意見が多くみられた。

一方で、日本人は家での暮らしをポジティブにとらえている人が少ないことが分かった。ただ日本の特徴としては、現在の家での暮らしをポジティブにとらえているかという質問に対して「どちらでもない」と回答している人が37%もいるため、これらの人々の家での暮らしを理解し、それぞれのニーズを刺激するソリューションの提案することによって、「ポジティブ」な人を増やすことができる可能性がある。

<家での暮らしをどうとらえているか>

また、どのような家での暮らしがポジティブな要素になるのか把握するため家での暮らしにおけるニーズを分析すると、日本の人々は「楽しさ」「快適さ」「セルフケア」が重要であることが分かった。日本では、楽しさを感じられることとして趣味・関心事のための時間や自分のための時間、バスタイムと回答する人が多い中、グローバルでは大切な人とのハグを一番の項目として挙げている。

さらに、家での快適さを実現するためにはプライバシーを保てることが一番だったが、日本において住民全員のプライバシーを確保できていると回答した人はわずか16%で、ニーズと現実との間にギャップがあることが判明した。そのほか、セルフケアを行うこともニーズの一つとして挙げられ、質のよい睡眠と自分のための時間が欠かせないことがうかがえた。

暮らしの懸念点を調査したところ、世界の人々の間では、家計と可処分所得が家での暮らしの一番の懸念点(40%)だったが日本では3位(18%)だった。調査が実施された時期が新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に変更となったためか、日本では暮らしにおける懸念点として1位は体の健康、2位は心の健康と、日本人は心身の健康に対する懸念が大きいことが明らかになった。

心身の健康を保つために重要な要素である睡眠について尋ねたところ、40%が家での自分のケアや育成のためには、質の良い「睡眠」が必要と回答した。よりよい睡眠をとるための習慣で、日本人が最も重要なこととあげたのは「適切な温度(33%)」で、グローバル平均31%よりも高いことが分かった。特に温度管理は、男性よりも女性が重要視する傾向がある(女性36%、男性29%)。2番目に多くの日本人が挙げた習慣「1人で寝ること」は、グローバル平均19%に対して日本は28%と差があり、この習慣は団塊の世代、子どものいないパートナーとの暮らしをしている人々と女性の間で多く挙げられた。

<家事を多く担っているか>

家事について調査したところ、日本ではほかの家族・同居人よりも多くの家事を担っていると回答した女性は38%、男性はたったの4%だった。グローバル平均では女性は34%、男性は14%と、家事の負担におけるジェンダーギャップはグローバル平均よりも日本のほうが大きく開いていた。また、これらの家事に対する責任やプレッシャーからか、約3割の日本人女性が、整理整頓された家に満足や安らぎを感じるのに役立つと回答している(男性は17%だった)。

■過去10年分のデータから、家でのよりよい暮らしを実現するために重要な8つのニーズが判明

この10年間、世の中は絶え間なく変化し、それが家での暮らしに影響を与えてきた。社会的変化として、「生活費の高騰」「気候変動の影響」「テクノロジーの統合」「戦争や紛争」「パンデミックの影響」が挙げられ、文化的変化として「ソーシャルメディア」「ホームシェアリング(民泊)」「自分らしくアレンジしたスペース」が影響している。このような変化が、人々の暮らし方を形づくり、暮らしの優先順位を変え、再定義を促した。

具体的には、2014年から2019年の間、テクノロジーは人間関係を邪魔するものとしての見方が強かったが、パンデミックにより仕事や、学校、遠方の家族をつなぐライフラインとなった。

また、ウェルビーング(心身ともに満たされた状態)が、家の外での活動から、家での暮らしに組み込まれた活動へ変化した。10年前は、家の外での活動で心身の健康を高める傾向が強くあったが、この転換点となったのがパンデミックだ。2021年には、35%が身近な場所に独自の緑豊かなスペースをつくりたいと考えていることが分かった。2023年は、家での暮らしの懸案事項として、グローバルでは家計(40%)の次に身体の健康(37%)があがった。このことから、家での暮らしに「健康」という要素が重要であることが分かった。

さらに、2016年は、所有物の過剰な多さに罪悪感を持つ人がわずか15%しかいなかった。2020年には、自然への関心度が高まり、43%の人がよりよい家を求めて職場から離れた場所へ引っ越すことに前向きだった。現在は、よりサステナブルな暮らしに対する願望が高まり、20%の人がエネルギーや食物を自給自足できる家が理想と感じている。

そのほか、以前は、食事やエクササイズ、仕事、娯楽などのために人々は頻繁に外出していた。一方で、パンデミック中の2020年の調査では、29%が家でエクササイズを始め、49%が以前よりも料理を楽しみ、32%がオフィスに行くよりも家で仕事する方がいいと回答した。

<家でのよりよい暮らしを実現するために重要な8つのニーズ>

10年間のデータから、よりよい家での暮らしのために必要な8つのニーズ(コントロール感、快適さ、セキュリティ、セルフケア・育成、帰属意識、楽しさ、達成感、将来への夢や願望)が明らかになった。

調査から現在を考察すると、暮らしを良くする8つのニーズを求める一方で、現在多くの人々が暮らしの選択について大きく3つの葛藤に直面している。葛藤の一つは、「活動を増やすvs活動を減らす」だ。パンデミックの発生により、家がオフィスから保育所、ジムなど多くの役割を果たす必要があり生産性を高める家を求める一方で、自分のスペースを確保し穏やかな暮らしを追求したいという葛藤がある。

2つ目の葛藤は「連帯感vsプライバシー」だ。家の中でも大切な人と一緒にいることで楽しさや安心、帰属意識が生まれ連帯感はウェルビーイングにも重要だが、自分らしさの表現や自由にはプライバシーも必要で、自分だけのスペースを確保することも大切という葛藤がある。

そして、3つ目の葛藤は「豊かな暮らしvs身の丈に合った暮らし」。この10年間で「豊かな暮らし」の定義が広がり、健康・ウェルビーイング・サステナビリティが含まれるようになった。生活費の高騰により手ごろ感が重視される身の丈に合った暮らしの反面、金銭的な面だけでなくサステナビリティや健康的な面でも豊かな暮らしを追求したいという葛藤が顕在化している。

イケアは、2014年から家の実用面を探るために調査を開始し、その後年数を重ね調査範囲が暮らしの感情的・心理的な側面まで広がっている。毎年イケアは世界中の人々に話を聞き、今の家での暮らしには何が重要で、それをさらに改善するためにイケアがどのようにサポートできるかを把握するために取り組んでいる。

昨年創業80周年を迎え、家での暮らしにおける課題や夢を把握し、ホームファニッシングビジネスから培った家での暮らしに関する経験や知識を活かしながら、常に今の日本の暮らしにあったアイデアを提供している。

人々のニーズを知り、寄り添い、応えたいという想いから手ごろな価格で提供する商品を増やし、春の新生活に向けて自分らしいスタイルを表現しながらスッキリとした収納の実現や限られたスペースの部屋にプライベートな空間をつくるためのソリューションの提案、家での心身の健康をサポートする商品を届けるなど、イケアは、より快適な家での暮らしの実現に欠かせない存在になることを目指しているという。

この定量調査は、Ingka Holding B.V. (Ingkaグループ)に代わってYouGovが実施したもの。YouGovは、国際的なリサーチおよびデータ分析グループ。今回、38カ国の18歳以上の合計3万7428人を調査対象にオンライン調査を実施した。

対象国は、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、中国、クロアチア、チリ、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、インド、アイルランド、イタリア、日本、ラトビア、リトアニア、マレーシア、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、フィリピン、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、セルビア、シンガポール、スロバキア、スロベニア、韓国、スペイン、スウェーデン、イギリス、アメリカ。

データ収集は、2023年5月から6月の期間に実施。性別、年齢、地域に対して割当(クォータ)を適用し、結果がターゲットグループの母集団を表すよう、データは、各国の統計から計算された理想的なウェイトに基づいて、性別、年齢、地域の側面に従ってウェイト調整している。

Life at Home Report 2023(ウェブサイト)

日本のインサイト(PDF)

Life at Home Report 2023 フルレポート(PDF)

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