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ローソンストア100は、2005年5月の1号店オープンから20周年を迎えた。今後の20年を見据えストアコンセプトに「あたらしい・おいしい・うれしい」を掲げ、MD面でも生鮮の強化やプライベートブランド(PB)の刷新などさまざまな改革を進める。既存店の減収が続く中、状況をどう打開していくのか。小栗知義社長に注力ポイントや成長戦略などについて聞いた。
客層はコンビニ業界よりも年齢が高め
──ローソンストア100の顧客層を教えてください
コンビニ市場と比較した場合、コンビニ業界全体よりも5~10歳ほど年齢が高い層の方にご来店いただいており、40~60代の方が多い状況です。
──逆かと思っていました。安価な商品が多いためコンビニよりも若年層が多いかと
実際は年齢層は高いですね。もちろん若年層の1人暮らしの方などもご利用いただきますが、2人世帯の方やシニア層も多くいらっしゃるので、結果的に年齢構成は高くなっています。
──男女比はどうですか
おおむね半々ですが、やや男性が多いです。
──取り込みたい顧客層は
当社は以前から生鮮など食卓を彩る商材を扱っていますし、日常生活に必要な商品も展開していますので、ファミリー層や若年層の方を含め、幅広い方に来ていただきたいです。
とはいえ、やはり若い方にファンになっていただいたほうが、当然ながらライフタイムバリューは大きくなるので、そこは戦略的に拡大していきたいです。
──実際、販促施策などを見ていても、7月には「辛すぎる(かも?)チャレンジ」を展開するなど、若年層を意識した取り組みを積極的に展開しています
こうした少し尖った企画や商品展開は得意分野ですので、意識的に仕掛けています。「盛りすぎチャレンジ」などの増量企画やエンタメ企画などローソングループで連携しながら進めるものもあり、特に若い方に人気です。
──たしかにトレンドを捉えた商品開発は非常に強い部分ですね
過去には「悪魔のおにぎり」という商品を投入しましたが、非常に人気で、結果的に「ローソン」でも販売していきました。今では海外の「ローソン」でも販売されています。それ以外でも、具材が1つだけの「だけ弁当」というお弁当も多くのお客様に支持されています。
このように、楽しかったりワクワクしたり、時にはクスッと笑ってしまったり、お客様に買ってみたいと思っていただける商品の開発は、我々の強みの1つですので、今後も強化したいです。
社名の「100」は「お客様満足度100%」という意味合い
──ローソンストア100という店名から、100円(税込110円)で買える商品が多い印象ですが、現状100円の商品の割合はどのくらいですか
税込110円以下の商品が3割程度です。
──「ローソンストア100」という店名と100円の商品構成とで、乖離(かいり)があるように感じますが、社内的にはそこの議論はあるのでしょうか
もうそれはこれまでに何度もありましたね。とはいえ、社名および屋号の「100」は、20年前の創業当初から 「お客様満足度100%」という意味合いでした。
ただし、前身の「SHOP99」では99円の商品が非常に多かったのもたしかで、その印象がとても強いと感じています。
我々としては「100円」という価格にとらわれることなく 、価値に見合った価格の商品をしっかりと提供していくという考えのもと、100円以外の商品構成はどんどん拡大しています。
──昨今の物価高も踏まえると、一般的に商品価格は上がる傾向にありますね
おっしゃる通り原料高や燃料高が進み、物価はどんどん上がっています。その中でも、3月から「マチの安心価格」という取り組みを行い、 卵、牛乳、調味料などの生活必需品などは値下げしているものもあります。トータルで見てお客様にご満足いただける商品構成と価格とは何かを常に議論している状況です。
──イオン系のまいばすけっとが出店攻勢を仕掛けており、100円という意味では100円ショップもあります。これら競合との間でどのように優位性を確立していきますか
我々はローソングループの一員ですので、ローソンやローソン・ユナイテッドシネマ、成城石井などとのグループシナジーが武器になります。
例えば、エンタメ企画であれば直近の7月11日にアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」さんのくじ企画を実施しましたが、これはローソンググループで連携した取り組みです。
新ブランド「LSマルシェ」で青果売場を刷新
──6月から青果の新ブランドとして「LSマルシェ」を始めました。各店舗で売場を刷新し、品目数も従来の1.5倍に増やすというものですが、この狙いは
店舗の入口付近は青果売場です。青果は我々のブランドのDNAとしてとても重要であり、次の20年に向けてここをアップデートしていきます。
「LSマルシェ」によって、売場は見栄えも買いやすさも向上したと思います。お客様やお取引先など多くの方から「非常に良くなった」とお褒めの言葉をいただいています。品目数も増やし、旬や鮮度を踏まえ、シーズンのものを展開していきます。
──生鮮品の取扱数量を拡充すると、在庫リスクも増えます
余剰在庫については、いわゆる「特売」のような形で販売し、フードロスを削減するような取り組みを進めています。
日用品は外部パートナーとの連携も検討
──日用品など非食品カテゴリはどのように強化していきますか
例えば「ローソン」の場合、無印良品さんと組んで商品を販売するといった新しい取り組みが進んでいます。我々も非食品の領域をどんどんリニューアルしていく予定です。
もちろん生活必需品はしっかり担保しながら、お客様が買いに行きたいと思っていただけるような商品を、外部のパートナーさんやブランドさんと一緒に取り組むことも検討しています。
──非食品というとカテゴリが広いですが、具体的にどのあたりを想定していますか
我々は今回ビジョンとして「ライフスタイル・ブランド」になることを掲げていますので、お客様のライフスタイルを支える上で必要な非食品とは何か、ずっと議論しています。例えばコスメなどもそこに入るかもしれません。
トータルで「ローソンストア100の非食品は面白いよね、買いやすいよね」と思っていただければと考えています。
──什器の配置など店のイメージも変わっていきますね
ライフスタイル・ブランドを掲げる以上、売場はどんどん進化する必要があります。什器の配置だけでなく、食品と非食品の構成比なども最適なものに進化させていきます。
生鮮であれ日用品であれ、カテゴリをブランディングしていくことが重要です。ブランドを形づくる上で、お客様に「ローソンストア100」というブランドで想起するのは、売場で出会った商品になります。そのため商品カテゴリのブランディングをずっと続けていくことが大事です。
PBを刷新し今期末には従来の3倍に拡充
──PBの「LAWSON VALUE LINE(ローソン バリューライン)」も20周年を機に刷新しました。ロゴを変更し、アイテム数も大幅に増やします
まずはベーカリーからスタートし、今では売場の多くのアイテムで「バリューライン」のロゴが展開されています。
──従来に比べてPBを3倍の規模に増やす計画です
昨年から着手しており、今期末(2026年2月末)には達成予定です。3倍になれば視認性という意味でもインパクトが出ます。すでにベーカリーでは半分以上が「バリューライン」の商品です。それを他のカテゴリにも広げていきます。
──PBを強化する狙いは何でしょうか
ローソンストア100の商品をどういう思いで展開しているのか、お客様にしっかりと伝えたいというのが前提にあります。
20周年を機に新しいストアコンセプトとして「あたらしい・おいしい・うれしい」を掲げましたが、それを具現化するためにもPBをしっかりと提供する。そのためには従来の3倍程度の設置面積が必要だと考えました。
買い物時のワクワク感が存在価値
──ローソンストア100の強みは何でしょうか
歴史的に見ると、コンビニとスーパーのハイブリッドな商品構成という特徴がありますが、現時点で鍵になるのは先ほど述べた「日用品」ですね。
日用品の商品構成がコンビニともスーパーとも異なっており、非常に充実しています。日用品は特に低価格の商品を多くそろえているため、日常生活で必要なものを安価に点数多くお買い求めいただけます。
加えて、創業時からのDNAである生鮮品の領域も強いです。そのため日々のお買い物がワンストップで行える、必要なものがすべてそろう、こういった点が我々の強みだと思っています。
ただ、こうした商品構成とは別に、お客様からは違う面でご評価いただいています。
──具体的には
お店で買い物することが「楽しい」「面白い」といったお声を大変多くいただきます。背景としては先述したようなユニークな商品や販促企画を継続的に打ち出していることがあります。
商品構成もどんどん変えており、生鮮品は月ごとに旬の野菜や果物が変わります。売場がどんどん変化しますので、お客様が買い物する時にワクワク感を感じてもらっているのが我々にとって大きな存在価値だと思っています。
東名阪エリアでドミナントを形成していく
──ここ最近は店舗数が減っており、5月末時点で636店舗です。出店戦略について教えてください
関東、中部、近畿といった東名阪エリアでドミナントを形成することを基本方針に進めていきます。その中でスクラップ&ビルドが基本戦略になります。
約10年前には東北などにも出店していましたが、集中と選択を進め、今は人口密集地域でドミナント展開する方針です。
──店舗の改装はどのくらいの規模になりますか
改装の度合いにもよりますが、見栄えを変えるといった細かなものであればかなりの数の店舗で実施します。
──既存店の減収が続いていますが、打開策は
やはりカテゴリごとのブランディングになっていくと思います。米飯であれば、おにぎり・お弁当でお客様に貢献するブランディングとは何か。生鮮も日用品も同様で、このカテゴリブランディングをどれだけスピーディーに精度高くできるかだと思っています。
──それが実現できればおのずと収益もついてくると
はい、そう考えています。
■小栗知義社長略歴
生年月日:1979年12月28日
2004年:三菱商事入社
2007年:米国三菱商事NYC
2014年:ファーストリテイリング・アジア大洋州EC Director
2017年:ユニクロタイランド最高執行責任者COO
2022年:ローソン入社 マーケティング戦略本部 デジタルマーケティング部 部長
2023年:ローソンストア100入社 上級執行役員 戦略企画本部長
2024年:代表取締役社長就任
取材・執筆 比木暁
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