パーソルグループのポスタスは今秋、スマートフォンPOSレジ「POS+ retail(ポスタスリテール)スマホPOS」を本格展開する。スマホ端末により、商品スキャンからキャッシュレス決済まで対応できる小売業向けの新製品で、単なるレジ機能にとどまらず、スタッフの負担を軽減し、働きやすく効率的な店舗づくりを支援する。スタッフの働き方も売り場もより自由にする同社の取り組みを、村上東洋取締役プロダクト&マーケティング統括部エグゼクティブマネージャーに聞いた。
DXで「ともに創る、おもてなしの一歩先を」
――ポスタスが展開する事業について教えてください
小売業、飲食業、美容業、クリニック業向けに、各業界に特化したそれぞれの業種に専用のシステムを提供する会社です。具体的には、POSレジ、詳細な売上分析、セルフオーダー、予約管理など、店舗運営のさまざまな機能を、お客様のご要望に応じてフレキシブルに対応しています。
POSレジ以外にも、店舗ごとに必要なセルフレジなどの機能・設備と組み合わせて提案することも可能です。
日本の店舗運営におけるサービスは、「おもてなし」の精神に支えられ、非常に高いレベルの接客品質を誇っています。これは日本独自の文化として世界に発信できる、私たちが大切にすべき財産だと考えています。われわれは、この素晴らしい接客をお客様とともにテクノロジーの力でアップデートし、より良い未来を創っていきたいと考えています。
パーソル総合研究所調べでは、2030年には7073万人の日本の労働需要に対し、6429万人の労働供給しか見込めず644万人の人材不足になると予想されています。その不足分を女性・シニア・外国人の労働参画を進めても、全体の50%である、298万人が不足すると想定されています。
今後の人材不足はテクノロジーを使って、どう生産性を上げていくかが重要なため、当社ではDX面から生産性向上をお手伝いしたいと考えています。
しかし、職場のIT化を進め、業務をテクノロジーで代替することは人を減らしていくようなニュアンスもありますし、業務効率化にフォーカスされがちです。
当社が提供したいのは、人にしかできない仕事を大事にしながら、人材不足対応や店舗の煩雑な業務を減らせるシステムを提供し、テクノロジーで現場の働く人たちの働きやすさ、お客様の購買体験をよりよいものに支援することです。
――グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を掲げるパーソルグループらしい考え方ですね。
モバイルPOSサービスなどシステムを提供する会社ではありますが、当社のミッションはお客様と「ともに創る、おもてなしの一歩先を」です。
単にレジ機能を提供するのではなく、当社がレジや売り上げ分析などシステム面からサポートすることで、お客様には接客などリアル店舗ならではのきめ細やかな接客・サービスに集中していただきたいと思っています。
強みは業界特化・手厚いサポート・高頻度なアップデート
――ポスタスの強みについて教えてください
小売業、飲食業、美容業、クリニック業に特化したサービスの提供、手厚いサポート、高頻度なバージョンアップの3つが当社の強みです。
業界特化型のサービスを提供しているため、現場のオペレーションの細かいところまで対応しています。店舗での業務は、レジでの会計でも小売業、飲食業、美容業、クリニック業ではそれぞれ重視する点や、業務フローの違いがあります。
例えば、小売業であれば購入方法は、店舗での販売、予約販売、取り置きなど多様です。どの形態で販売したか、管理する必要があります。飲食業や美容業であれば予約システムとの連携が重要ですし、クリニックや薬局ではレセプトコンピューターとの連携など、業界ごとにオペレーションの違いがあります。
その業界ごとのオペレーションの特性を踏まえて当社はシステム設計しており、現場で働く方のストレスを最大限減らせるようなUIを提供しています。レジ作業をする際、すぐに使いたい機能が見つかるかどうか。そんな小さなことでも、意外にスタッフのストレスになります。ともかく、店舗スタッフでしかできない業務に集中していただきたいので、現場に寄り添ったUXを追求しています。
さらに、現場スタッフの負担を軽減するためにも、導入前後のサポート体制も手厚くしており、この点も評価いただいています。
――サポート体制について教えてください
初期設定をお客様自身で手掛けることで価格を抑えるサービスもありますが、当社は、商品マスターの登録など初期設定の支援から、手厚く提供しています。
店舗スタッフを含めた、リアル・オンラインでの操作トレーニング、365日対応のコールセンターを用意していますし、何かトラブルが起きたら駆けつけサポートも実施しています。
何かトラブルが起きて、お客様をお待たせしてしまうような場合も、すぐに店舗に駆け付けます。別途見積もりなどは不要ですので、このフレキシブルな対応が好評です。
また、年4回と高頻度なバージョンアップも行っておりますので、それぞれの業界の変化に合わせ、さまざまな対応ができるのも強みですね。常に現場をより働きやすくする機能のアップデートを推進しています。
「POS+ retail」はレジから売上・顧客・店舗・在庫管理まで対応
――小売業向け「POS+ retail」にはどのような機能を搭載していますか
レジ・売上管理・顧客管理・複数店舗管理・在庫管理・予約・取り置き・販売促進などを提供しています。
小売業界特化型のサービスだからこそ、レジ機能では、商品や規格の異なる商品を2個以上まとめて販売するバンドル販売、セット販売、セール、社員割引をあらかじめ設定で可能です。
また、在庫管理機能を標準搭載していますので、タブレットやスマートフォンで在庫確認、棚卸ができます。
小売店舗はもちろん、最近キャッシュレス化進む地方自治体でも採用いただいており、2025年8月現在200自治体以上で導入されています。最近では、大型スタジアムの売店、ポップアップストアでの採用も増加しています。
店舗の数や規模を問わずお使いいただけ、民間企業だけでなく自治体の業務にも対応できる柔軟さがあります。
今秋「スマホPOS」を本格展開
――「POS+ retail」をより便利にした「スマホPOS」を今秋本格展開しますね
「POS+ retail」はタブレット、パソコンなどに搭載されていましたが、「スマホPOS」は、店舗運営に必要な「POS+ retail」の機能をスマホ1台に集約できます。
「スマホPOS」を利用すると、商品スキャンも会計もスマホ1台で完結します。また、事前に商品をスキャンし、会計金額を確定するいわゆる「前さばき」ができますので、お客様は発行された前さばき伝票をレジに持っていけば、会計可能です。
レジ台や特定のデバイスに縛られず、より接客しやすく、お客様にとっても、レジ待ちのストレスを減らせる新製品です。
アパレル・インテリアなどマンツーマン接客を重視される業態では、接客をして、そのままの流れで会計に対応できます。接客と会計が一体となったスムーズな店舗体験を提供できますし、前さばき機能を活用すると、レジ前の混雑で販売チャンスを逃してしまう、買い控えによる機会損失を減らすことができます。
――前さばき機能について教えてください
やはり、小売店は混雑時、レジ前に行列ができてしまうことがあります。このレジ待ちは、お客様にとってストレスで、「こんなに並ぶのでは、今日の買い物はいいや」などと思われる方もいらっしゃいます。この場合、店舗側からすると、チャンスロスが起きてしまうわけです。
それを防ぐために、事前に並んでいる最中に、「前さばき」としてお客様の購入したい商品をスキャンして、その伝票だけ持って、レジに行けば会計できるというオペレーションを想定した機能を用意しました。
商品スキャン、会計・包装というオペレーションの流れを分けて担当できるので、お客様のレジ待ちを減らしながら、スタッフ一人一人の負担も軽減できます。
――スマホがあれば会計できるので、常設店舗ではないポップアップストアやイベント会場で便利そうです
レジは、店舗に固定してあるものと思われやすいですよね。スマホPOSは、ポップアップストア、催事場、キッチンカー、イベント会場のような、しっかりした置き型のレジカウンターを設けるのは、短期間の店舗には負担が大きいというシーンで、お使いいただきやすいのではと考えています。
イベントでの販売に加え、水道工事、ガス設備など、お客様の自宅に修理に来て、現地で会計する修理スタッフに使っていただくことや、ガソリンの訪問販売、移動スーパーでの利用も想定しています。
――在庫管理機能も搭載されているのですね
アパレルの店舗やホームセンターなどでは、「この商品はありますか?」とお客様に聞かれることがよくあると思います。しかし、聞かれた時に確認してきますと、スタッフがバックヤードに戻る、業務用コンピューターで検索するといった手間が掛かっていると思いますが、スマホPOSですと、手元ですぐ在庫確認できるのが便利です。
どこの棚にあるか、今この店舗はなくても他の店舗からお取り寄せ・取り置きに対応するなど、さまざまな選択肢を手軽に提案できます。お客様の購買体験が向上しますし、販売機会ロスも減らせます。もちろん、スタッフの業務負担も軽減できます。
スマホPOSが店舗をもっと自由に
――スマホPOSが店舗をもっと自由にしますね
固定的なレジカウンター、据え置きのレジ台ですと、店舗デザイン、スタッフの動線はレジ周りを考慮して、設計しないといけません。
置き型のデバイス、特定の業務用端末を使用する場合は、在庫管理で店舗とバックヤードを行き来することも含め、スタッフの負担になります。
しかし、スマホPOSですと、手元にあるスマホ1台で会計・前さばき・在庫管理・取り置き・取り寄せなどができるので、もっと店舗設計や接客が自由になると想定しています。
――ほかに、スマホならではの使い方はありますか
スマホならではの拡張性も強みです。専用端末ではなく汎用品のスマホですので、世の中で色々提供されている便利なアプリをその企業の必要に応じてインストールして、利用可能です。
当社のシステム以外のさまざまな業務アプリを入れ、スタッフの業務用のスマホとしても使っていただけるのが、専用の業務用端末や置き型のコンピューターとの大きな違いですね。
スマホなので、スタッフ同士のコミュニケーション、通話・チャットもできますし、本部~店舗間のタスクの管理のやり取りにも使えます。
例えば、本部と店舗の間のタスクのやり取りは、「月末なので今月までのキャンペーンのポスターをはがしてください」といった細かいTODOも、業務管理アプリをインストールしておけば、作業告知~店舗で確認~タスク終了~終了確認とできます。
スタッフ向けマニュアルも、店舗でファイリングした紙で見るより、スマホで確認できれば便利ですよね。動画マニュアルも、いつでも手元で見られます。
勤怠・福利厚生関連のアプリを入れれば、スタッフのモチベーション・コンディションをチェックするサーベイも実施しやすくなります。本部が店舗スタッフの状況・課題をリアルタイムで把握できれば、問題を初期段階で発見できるため、店舗のフォローなど改善をしやすくなります。
いわゆる業務用の汎用端末として、スタッフにも、本部にもさまざまな拡張の仕方ができるのが非常に強いところだと思っています。
――導入の初期費用はいくらですか
スマホ1台とモバイルプリンターで初期費用は約10万円からです。これに月々のランニングコストが約4900円からとなります。また、スマホを1台追加ごとに月額1000円追加されます。
来年初頭電子レシート対応・飲食業界向けスマホPOS開始
――今後のアップデートのスケジュールを教えてください
今後は、勤怠管理、顧客の個人端末にアプリを搭載し、個人のスマホなどで会計できることも目指します。
また、電子レシート対応も来年初頭に開始します。
――今は小売業向けだけですが、ほかの業界用にもスマホPOSを導入しますか
飲食業界向けのスマホPOSも、来年初頭サービス開始予定です。
――流通業界へのメッセージをお願いします
パーソルグループとしても、働くことで人がどう輝くということを大事にしたい。そのためには、レジ周りの困りごとをDX面で解決する黒子として、我々をご活用いただけると嬉しいですね。
特に、今回本格展開するスマホPOSは、店舗やスタッフをより自由にするお手伝いができると考えています。
レジ周りの負担が減ることで、もっとスタッフが働きやすくなれば、お客様により良い体験を提供することに注力できます。お客様にとっても、スムーズな決済、無駄なレジ待ちが減ればよりストレスが少なく、一層楽しくお買い物していただけます。店舗・お客様双方にとって新しく、快適な購買体験を提供できるよう、これからもサポートしていきたいと思っています。
■村上東洋氏略歴
2007年インテリジェンス(現パーソルキャリア)入社。求人メディア事業にて法人営業、各種企画を経験したのち、2020年グループ会社であるポスタスへ異動、プロダクト&マーケティング統括部長、2025年取締役・プロダクト&マーケティング統括部長
流通ニュースでは小売・流通業界に特化した
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