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猛暑と冷夏の夏季商戦/気温上昇に左右されない「乾麺」に注目

2019年07月31日 15:15 / POS分析

使えるPOS分析の第7回目は、夏季に売上が上昇するカテゴリー・商品と気温との関連から、猛暑と冷夏で対応が大きく異なる売場づくりのヒントを探りたいと思います。

今年の7月上旬時点では比較的涼しい日々が続き、生活者の立場としては大変ありがたい天候ですが、経済的には必ずしも良いことばかりではないようです。暑い時には暑くないと売れるべきものが売れません。現に、今年6月最終週の東京の平均最高気温は前年同週比較でマイナス6℃で、その結果RDS市場データでは京浜エリアのアイスクリーム群、清涼飲料群は軒並み大幅マイナスとなりました。また、7月29日には、昨年より30日遅く、関東甲信越地方がやっと梅雨明けし、一気に猛暑がやってきました。

一方で、私たちは昨年の異常気象を経験した後なので、カラダと頭が昨年の異常値を引きづってしまい、ついつい昨年並みの売上を期待しがちです。そこで、読者のカラダと頭をリセットするために、前半は気温上昇との相関の高いカテゴリーを中心に昨年の異常さを確認し、後半は気温との直接的相関は弱いが夏場に売り上げの高まるカテゴリーをチェックして、「平年並みの夏」に備えるためのヒントをお届けします。

※なお、今回分析で取り上げるのは、別途記載の場合を除き、POSエリア:京浜エリア(1都3県)、気温地区:東京、期間:2018年6月最終週~9月第1週の計11週間とします。カテゴリー分類は、JICFS商品分類の細分類(食品)を用います。

■気温上昇との相関の高いカテゴリーは?

では、まずは昨年の気温を振り返るために、平年気温と本年の同週気温を重ねたグラフを用意しました。平年とは、今なら1981年~2010年の30年間の平均気温を意味します。6月終わりから7月一杯は、平年との気温差概ね4~5℃となっていて昨年の気温がいかに異常であったかがよく分かります。なお、昨年最高気温の平均が最も高かった週は7月16日週でした。

図1<6月~9月における週次平均最高気温推移 東京>
6月~9月における週次平均最高気温推移 東京
出典:気象庁ホームページから取得

JICFS分類の食品全236分類の中から、1年を通じて6月最終週からの計11週間の売り上げの割合の高い順に、マーケットの大小に関係なく上位10カテをピックアップしました。相関係数は1に近いほど気温との相関が高いことを表します。0.4以上でかなり相関があると言われていますが、ここではさらに0.5以上に絞りました。

表1<夏期販売指数上位10カテゴリー(気温相関0.5以上)>
夏期販売指数上位10カテゴリー(気温相関0.5以上)
※赤セルは当該期間中最大の指数の週を表す。

昨年35℃近くまでになった7月16日週からの3週間はまさに異常値だったことが分かります。1位の「スポーツドリンク」は年間平均の週販の3倍程度に跳ねています。それに続くのが「氷」でした。この2つのカテゴリーは、最高気温との相関係数では「日本茶・麦茶ドリンク」、「ファミリーアイス」、「パーソナルアイスその他」、「炭酸フレーバー」よりも劣りますが、それら以上にこの3週間の売り上げが突出していることから、気温の上昇の傾斜より、売り上げの傾斜が高いということを表していると考えるのが妥当でしょう。

なお、結果として気温との相関関係が高いカテゴリーは、ほぼ飲料とアイスクリームに絞られました。ある意味当たり前の結果でした。しかし、今年注意が必要なのは、これらのカテゴリーは昨年ほどの「山」を作ることはできない可能性が高いということだと思います。数表を参考にして在庫量の調整・準備が必要となります。

■気温上昇との相関はそうでもないが夏売れるカテゴリーは?

一方で表2は、昨年の夏季にあたる11週の中で、売上は高いが、気温との相関係数がそれほど高くない(0.5未満)カテゴリーをピックアップしました。

表2<夏期販売指数上位10カテゴリー(気温相関0.5未満)>
夏期販売指数上位10カテゴリー(気温相関0.5未満)
※赤セルは当該期間中最大の指数の週を表す。

清涼飲料やアイスクリームも含まれますが、加工食品カテゴリーも多々含まれています。気温との相関うんぬん以前に、夏の売り上げを作る上で重要なカテゴリーといえます。相関係数が0.5未満の中で、季節指数の当該期間平均でトップとなったのは乾麺でした。この中では断トツのトップで、特徴的なこととして、6月最終週からお盆が終わるまで安定的に売り上げが高いのですが、お盆が終わった途端にガクッと指数が落ちます。

そこで、乾麺の全国の上位10商品を調べてみました(表3)。「揖保乃糸」、岡山の「かも川」、徳島の「半田めん」など地方色が豊かな商品がならびました。揖保乃糸が圧倒的に強いとはいえ、この間は食卓に上る回数が多くなるので、飽きが来ないよう品ぞろえ、商品提案など工夫が必要となります。売れ筋商品だけでなく、地方色が豊かな商品も投入することで、変化のある売場づくりができると思います。

表3<乾麺アイテム 販売金額ランキング トップ10商品 RDS全国>
乾麺アイテム 販売金額ランキング トップ10商品 RDS全国

加工食品カテゴリーでは、夏季に気温との相関関係が高くなくても売上の取れるカテゴリーとして、いりぬか・漬け物の素も乾麺と似たような時系列トレンドを描いています。そこで、いりぬか・漬け物の素の全国の上位10商品を調べてみました。

表4<いりぬか・漬け物の素アイテム 販売金額ランキング トップ10商品 RDS全国>
いりぬか・漬け物の素アイテム 販売金額ランキング トップ10商品 RDS全国

エバラ「浅漬けの素」といった知名度のある商品が上位を占めていますが、きゅうりに着目した商品も多くランクインしており、夏野菜の旬との関係でいりぬかや漬物の素の売上が伸びていることが伺えます。また、10位の伊勢惣の商品は、そのまま漬け込める袋入りぬか床タイプで、同タイプの商品も多く見かけるようになっています。

気温相関の高いカテゴリーと、気温相関は低いが売れるカテゴリーをうまくミックスして、売り上げ最大化を目指すヒントになれば幸いです。

■RDSについて
http://www.mdingon.com/MdonWeb/service/newrds.html

本稿は、流通現場における製配販それぞれのマーチャンダイジング提案活動を、POSデータ分析を中心にいろいろな角度からサポートするマーチャンダイジング・オン(MDON)が、「POS分析」に関して色々な角度から紹介するコラムです。

マーチャンダイジング・オンが執筆した原稿を、流通ニュース編集部が編集しております。

注:マーチャンダイジング・オン社提供のRDS-POSデータ分析については、記事、写真、図表などを複写、転載などの方法で利用することはできません。

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