カスハラ対策/マニュアル不可欠、ストレス得点1位はスーパー・ドラッグ

2024年06月10日 18:41 / 経営

UAゼンセンは6月10日、参議院議員会館で「カスタマーハラスメント(以下:カスハラ)実態調査」緊急報告集会を開催した。

<従業員の精神的負担についても分析と松浦会長>
松浦昭彦会長

UAゼンセン所属組合のうち、流通・サービス関連の組合員に対し実施した「カスハラ対策アンケート調査」(第3回)をもとに、カスハラ対策の法制化に向け、カスハラの実態と特に従業員の精神的負担について報告した。

アンケートは1月18日~3月18日実施、210組合・3万3133人(女性2万338人、男性1万2300人、その他465人)から回答を得た。

直近2年以内に、回答者の46.8%(1万5508件)が迷惑行為被害にあっている。迷惑行為を受けた組合員は、「嫌な思いや不快感が続いた」(50.5%)、「同じようなことが起こりそうで怖かった」(8.0%)などに加え、「寝不足が続いた」(1.2%・193件)、「心療内科などに行った」(0.8%・123件)といった精神的ダメージを受けていることがわかった。

<従業員の精神的ダメージが深刻>

松浦昭彦会長は「2020年実施したアンケート時の56.7%と比較すると、10ポイント近く減少しているものの、依然として2人に1人はカスハラ被害にあっている。今回の調査では、新しく従業員の精神的負担についても専門家に分析してもらった。サービスを提供する側と受ける側がともに尊重される社会の実現を目指し、カスハラ対策の法制化への要望、カスハラ被害を未然に防ぐ啓発活動をさらに推進していきたい」と強く訴えた。

また、流通部門での個別報告では、「女のくせにと暴言を吐かれ、後日木刀を持って再来店」「接触したかしないかで、謝罪はしたものの、謝罪がないとSNSで名指しで投稿された」「店舗売り場へ自転車で乗り入れられ注意したところ、自転車を倒して足にぶつけられ、暴言を吐かれた」といった通常のクレームを越えた、暴言、威嚇・脅迫、暴力に苦しむ現場の声が寄せられた。

さらに、アンケートをもとに、桐生正幸 東洋大学社会学部教授とココロバランス研究所の島田京子代表が、カスハラの実態と従業員のストレスについて報告した。

桐生教授は精神保健学、犯罪心理学の知見をもとにしたカスハラプロファイリングの結果、カスハラ対策には、業種・業態の特性に合わせたマニュアル・ガイドラインの作成が不可欠だと指摘。「業種グループごとにカスハラの実情を分析すると第1グループ(GMS、スーパーマーケット、ドラッグ関連)、第2グループ(インフラ、ホテル・レジャー、家電、生活サービス、百貨店)、第3グループ(フード、フードサービス、住生活関連、専門店)、第4グループ(パチンコ、医療・介護・福祉)では被害実態、カスハラ行為者などそれぞれ特徴がある。これら特質を踏まえたマニュアル・ガイドラインを作成しないと現場では役に立たない」と説明した。

島田氏は「ドイツで作成された顧客関連ストレッサー尺度を使い、カスハラ得点と従業員のストレス得点を分析したところ、ストレス得点が最も高いのはGMS、スーパー、ドラッグストアなど第1グループだった。一般生活者の平均に比べ、ストレス得点が高く、重度精神疾患レベルのストレスを感じている従業員もいる」と警鐘を鳴らした。

同集会には、65人の国会議員を含む組合関係者など計125人が参加した。

取材・執筆 鹿野島智子

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