キリン／ファンケル完全子会社化でヘルスサイエンス企業実現

2024年06月17日 15:30 ／経営

キリンホールディングスは6月14日、ファンケル社を完全子会社化することで、アジア・パシフィック最大級のヘルスサイエンス・カンパニーを実現すると発表した。

＜キリン＞

キリンHDは6月17日から7月29日まで、ファンケルの完全子会社化を目的とした公開買い付けを実施。買い付け価格は1株当たり2690円。買い付け予定は8205万1400株（下限：4111万7700株）で、買い付け代金の総額は約2200億円の規模となる。

現在、保有していない約67％の株式を取得するもので、株式取得資金は有利子負債で調達し、充当する予定だ。ファンケルの3月期実績は売上高1109億円、営業利益126億円だった。

ヘルスサイエンス事業として、キリンの強みであるR＆Dのコア技術を活用した機能性素材の開発・展開に加え、ブランドビジネスとしてのBtoC事業を通じて、アジア・パシフィックの人々に幅広くリーチし、健康課題解決に貢献する、独自のビジネスモデルの構築を目指す一環。

昨年の豪州のナチュラルヘルス企業であるBlackmoresの取得に続き、今回ファンケル社を完全子会社とすることによって、アジア・パシフィックの全域において、キリン、Blackmores、ファンケルの3つのブランドの強みを活かしたBtoC事業を力強く推進する。今後は、まずは各ブランドが強みを持つエリアでの展開・事業基盤のさらなる強化を通じて、経済的価値・社会的価値を創出し、アジア・パシフィック最大級のヘルスサイエンス・カンパニーを目指す。

2019年の資本業務提携以来、2社による付加価値創出の取り組みを実施してきた。新型コロナによるパンデミックや原発処理水問題等、市場としての不透明感があったが、国内のインバウンド消費も徐々に回復するなど、外部環境としては良い兆しも見え始めている。そのような中で、グループのヘルスサイエンス事業は、プラズマ乳酸菌の事業拡大に加え、オセアニアや東南アジア等における強いブランド・販売チャネル・高い規制対応力を有するBlackmoresを取得したことにより、着実にケイパビリティが蓄積されてきて大きく進化している。

これらの状況を踏まえ、今後アジア・パシフィックにおいてヘルスサイエンス事業をさらに展開・成長させる上では、まさに今がファンケルのアセットを最大限に活用し、ヘルスケアとスキンケアという身体の内と外の両面からの健康課題へのアプローチを行うステージだと考え、ファンケルの完全子会社化を決断したという。

完全子会社化により、強固な国内BtoC事業基盤を獲得。ファンケルの強みの1つである国内におけるリアル店舗とECチャネルという強固なDtoCの基盤をフル活用し、キリンの国内DtoC事業と掛け合わせることで、国内の収益基盤を確立する。具体的には、ファンケルのCRM、いわゆる顧客関係力の強みをこれまで以上に活用することでDtoC事業を強固にする。

また、各社の強みの相互補完を実施。ファンケルの化粧品事業とサプリメント事業を獲得することで、キリンがこれまで行ってきた飲料やサプリ等の身体の内側からの健康アプローチだけでなく、スキンケアといった外側からもアプローチができる。「肌の健康」を健康課題として悩む人が多く、ここに対する社会課題解決の幅を拡げながら、経済的価値を生むために、お客へ提供できるソリューションを強化する。

さらに、Blackmoresなどのグループの知見を活用したファンケルの海外成長の加速にも取り組む。ファンケルの海外事業の売上構成比は全体の1割程度のため、ここには伸びしろがあると考えており、グループの力で成長を目指す。

そのほか、各社の機能の共通化・効率化を図る。非上場化に伴う上場維持のための費用の削減などのほか、各社が持つ本社機能・SCM等の共通化・効率化にも取り組む。これらの施策は、完全子会社化が実現することによって今まで以上にスピード感を持って進む。

事業の成長のためには、成長する市場で競争優位性を発揮することが重要となる。キリングループとしては、ヘルスサイエンス事業をグループの第三の柱とするために、成長すると期待されるアジア・パシフィックのBtoC市場において、グループの強みを活用してより多くの健康課題の解決に取り組む。

目指す姿として掲げている“アジア・パシフィック最大級のヘルスサイエンス・カンパニー”となることで、「世界のCSV先進企業になる」というグループビジョンをさらに前進させることができると確信しているという。

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