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東京駅/グランスタ ダイニング

2010年12月14日 / 店舗リポート

東京駅の乗降客ニーズに合わせ飲食店とテイクアウトのコラボ展開

東日本旅客鉄道(JR東日本)グループの鉄道会館は12月4日、東京駅改札内1階「ノースコート」に弁当・スウィーツ・ドリンクバー・セレクトショップ、飲食店、販売企画スペースなど14のショップと2つの販売企画スペースで構成する、約990㎡のエキナカ・レストラン施設「GRANSTA DINING(グランスタダイニング)」を開業した。

<東京駅改札内1階のノースコート内に開業>
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グランスタダイニングはレストランゾーンとイートインゾーンの2つで構成。レストランゾーンでは、老舗の寿司や蕎麦、カリスマシェフのパスタショップなど6店舗内の座席で食事ができ、8店舗のイートインゾーンでは、弁当などをフリースペースで食べられる。14店舗中、10店舗にJR東日本のグループ企業が出店した。

<グランスタ ダイニングレイアウト>※図をクリックすると拡大します。
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飲食店などで構成していたエキナカ商業施設Dila東京ダイニングコートがあった場所を改装して出店。

鉄道会館は2007年10月に東京駅構内の地下1階にエキナカ商業施設として「GRANSTA(グランスタ)」を開店しているが、「グランスタは物販が中心で商業施設の要素として、飲食店としての機能が不足していた。地下と地上と展開フロアは異なるが、既存のグランスタの増床という位置付けでダイニングを展開する」(同社)という。

<飲食と持ち帰りの両方へ対応する江戸せいろ蕎麦>
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鉄道会館が独自に調査したところ、「既存の駅構内の飲食店の平均利用時間は45分程度で、早いお客では15分程度ということが分った。45分という店内滞在時間を考えると、ゆったりと時間をかけて食事ができる飲食店があってもよい。逆に電車に乗る時間の都合などから15分程度というニーズに対しては、すぐに食べられるテイクアウトが必要と考えた」(同社)という。

<軽食やテイクアウトメニューなどを食べられるフリースペース>
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そのため、レストランゾーンに出店する6店舗は全て持ち帰りのメニューも準備しており、お客の時間のニーズに合わせて使い分けができる工夫をしている。

<店舗を説明する野崎哲生鉄道会館社長>
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野崎哲生鉄道会館社長は「駅を利用するお客様のニーズは何か、今の東京駅に欠けている要素は何かを考えて、店舗の構成とサービスを考えた。2007年にグランスタを開業した時と同様に、東京駅ならでは東京駅発といった提案を考えた」と語る。

グランスタ ダイニングの開発に携ったスタッフからも共通して出てきた言葉は「駅を利用するお客様のニーズ」だった。街ナカの商業施設と異なり、交通の結節点の駅で移動する最中に利用するというエキナカ特有のニーズの掘り起こしが一つのテーマとなった。

<東京駅構内でのグランスタ ダイニングの配置図>
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グランスタ ダイニングは新幹線改札口の中央乗換口の近くに位置する。中央乗換口は新幹線の指定席側に位置し、自由席と異なり座席の確保の必要がないため、新幹線への乗り換えまでに比較的時間のある顧客の利用を見込める配置となっている。

<新幹線の発車時刻掲示板を設置>
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新幹線への乗換客の利用を想定して、乗換までの時間をすぐに確認できるように、野崎社長の発案で店舗から乗換口に通じる柱周りに位置する紀ノ国屋の看板の上部に新幹線の発車時刻掲示板を設けた。

野崎社長は「乗換時間が分かれば、ゆっくりと食事ができるのか、弁当しか買う時間がないのかを気にせずに済む。食後の買い物時間の見極めもできグランスタ ダイニングを利用しやすくなると考えた」という。

<食堂車を再現したという日本食堂の店内>
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エキナカ消費のキーワードである「時間」に対応してメニューも提案された。JR東日本グループの日本レストランエンタプライズ(NRE)が展開する「日本食堂」では食堂車を再現した店内で、食堂車でしか食べられなかったメニューを提供。寝台特急「カシオペア号」「北斗星号」で提供しているフランス料理のコース料理のうち、メインディッシュとデザートに限定した「NIPPON SHOKUDOスペシャル」(税込3000円)を展開する。

「通常のコース料理ならば、食事の時間が1時間を越えてしまう。乗換時間でも食べられる時間にするためにメインデッシュとデザートの限定メニューを提案した」(NRE)という。

<日本各地の銘店とのコラボ弁当を集めたニッポンの駅弁>
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駅弁、ホットドック、ジュース、販売企画スペースなど10店舗で構成するイートインスペースでは「東京駅初(発)」という言葉を重視した。

駅弁も供給する日本レストランエンタプライズによると、「東京駅には、当社が展開する駅弁ショップだけでもすでに16店舗が出店。その他の業者の店舗もあわせればかなりの数の駅弁販売店が存在する」という。

そのため、駅弁を販売する「ニッポンの駅弁」では、東京駅初の商品を取り入れた。石川県の高級旅館加賀屋の協力を得た「加賀屋謹製弁当四季彩」(1800円)や駅弁で高級フレンチのフルコースを味わえるをテーマに開発した「ランベリー ル・コフレ」(6300円)といった東京駅初登場の商品を投入。

一方で、駅弁の売れ筋価格帯である1200円~1500円の商品構成比を高め、500円台の商品も品揃えし幅広いニーズへ対応する商品構成を意識した。

初めての試みとして、店舗の入口に調理実演販売スペースを設置した。駅弁を共同開発した各地の料理人や老舗の調理担当者などが2週間サイクルで弁当を店頭で調理する。「冷めていて当たり前が駅弁だが、作りたての弁当の提供へ初めて挑戦する」(NRE)という

<新業態の米米米(こめざんまい)>
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ベックスコーヒーショップなど飲食店をエキナカや駅周辺で展開するジェイアール東日本フードビジネス(JEFB)は、「東京むすび米米米」、「野菜ソムリエのジュースキッチン百果百菜」、「東京DOG」、「Yudero 191 フロム アル・ケッチャーノ」の4つの新業態を展開する。

百果百菜とパスタ専門店のYuderoでは、初めて定番メニューを決めずに旬の食材の組み合わせでメニューを提案する商品提案に挑戦。東京むすび米米米では、「おむすび」でも「すし」でもないワンハンドフードをテーマに塩出汁、トマトソース、カレーソース、鶏だしで炊き込んだご飯に具材をトッピングした。

「東京DOG」は全国100店舗の有名店をリサーチし、ケチャップとマスタードなしでも食べれるようにワサビを練りこんだ生地のパンで食べるホットドッグや、惣菜を挟んだデリドック、クリームや果物を挟んだスイーツドッグを展開する。

パスタ専門店のYuderoは1500円からのメニューを主力とするが、テイクアウト業態の3店舗の価格帯は500円以下を中心とした。「おむすび、ジュース、ホットドッグとも街ナカの通常の商品よりも高い価格だが、これまでのエキナカでの販売実績に基づいた価格設定で、素材や商品づくりなど付加価値を感じられる提案を目指す」(JEFB)という。

<JR東日本傘下で初の出店となったKINOKUNIYA entree>
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2010年4月にJR東日本グループに入った高級食品スーパーの紀ノ国屋も小型業態「entree」で出店。東京の銘店「味の浜藤」、「とんかつまい泉」、「wanofu」とコラボレーションした弁当(1000円~2000円)を展開。エキナカでの即食需要に対応し、プライベートブランドのパンやお菓子を充実させ、飲みきりサイズの酒類やおつまみを強化した。

一方で、調味料はおみやげ的なニーズに対応できるこだわりのある商品に限定し、大幅に商品を絞り込んでいる。

<熊谷喜八氏とモーテン・ヘイバーグ氏>
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JR東日本グループ以外のショップの誘致も積極的に展開した。熊谷喜八氏が展開する「patisserie KIHACHI」とデンマーク王室のデザートシェフのモーテン・ヘイバーグ氏が初のコラボショップを開店。「飲むジンジャー」を展開する銀座ジンジャーや福岡のジェラートショップjulass、築地寿司清、牛タン専門店の利久が出店している。

熊谷氏は「これまで駅で販売するお菓子はおみやげ的な要素が強く、日持ちする菓子が主流だった。生菓子が主体とする菓子店は駅では少ないので、新幹線で生菓子を食べたり、生菓子をおみやげに利用する人も増えるのではないか」と語った。

<600円の食堂長おすすめモーニング>
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通勤客も多いエキナカ需要への対応として、朝食メニューも充実させた。通勤客の利用を踏まえ、レストランゾーンでは平日限定で600円台を中心としたメニューを7時から10時までの時間限定で提供する。

「通常のエキナカの朝食価格からすると割高だが、こだわった食材を提供できる価格帯を意識して朝食メニューの提案もしている」(鉄道会館)という。

時間帯ごとに異なる需要へも対応することで、通勤客から旅行客まで幅広い駅利用客のニーズを取り込む計画だ。

グランスタダイニング概要
所在地:東京都千代田区丸の内1-9-1東京駅改札内1階
開発面積:約990㎡
店舗面積:約600㎡
売上想定:年間約40億円(初年度約13億円)
開発運営:鉄道会館
ショップ数:14店舗、販売企画スペース2区画
ショップ業種:レストラン、ベーカリー、グロッサリー、デリ、スウィーツなど
営業時間:7時~22時30分(イートインゾーンは6時30分~22時30分)

■ビジュアル店舗紹介
<エキナカ初出店の築地寿司清>
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<朝の麦とろ定食から肉厚の牛タン極定食まで提供する利久>
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<昔の食堂車の写真からデザインした日本食堂の外観>
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<旬の食材でメニューを提案するYudero 191>
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<赤坂離宮がプロデュースする東京炒飯>
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<ケーキをイメージさせるおむすびの米米米>
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<デリドックなどオリジナル商品を展開する東京ドッグ>
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<東京ドックの新提案商品のデザートドッグ>
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<野菜ソムリエがメニューを提案するジュースキッチン百果百菜>
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<6300円の駅弁、ランベリー ル・コフレなどの見本>
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<初のコラボショップのpatisserie KIHACHI & DESSERTCIRKUS>
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<飲む生姜を提案する銀座のジンジャー>
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<18種類のジェラートを提供するjulass>
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<紀ノ国屋ではPBのパンを木製什器で展開する>
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<販売企画スペースではお土産需要に対応し贈答用の菓子を展開>
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<待ち合わせ場所の目印として日本各地の箸を展示した「箸ら時計」を設置>
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<天井と床は曲線も用いたデザインとし、間接照明で空間の開放感を演出>
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