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カインズ/商品開発を刷新「新プロダクトブランド」nendoと開発

2023年09月14日 17:42 / 商品

カインズは9月14日、これからの10年を見据え、新たなプロダクトブランドを佐藤オオキ氏が率いるデザインオフィスnendo(ネンド)と協業により開発し、商品開発体制を刷新したと発表した。同日、都内で開催したカインズ「リブランディングプロジェクト発表会」で、高家正行社長CEOが明らかにした。

<プロジェクト発表会>

高家社長は、「カインズは、1978年に創業し、2007年にSPA宣言を出して、カインズでしか買えない良いもの、商品の企画開発を進めてきた。2018年には、IT小売業宣言を出し、ITやデジタルを活用して、買い物を便利にして、お客様とコミュニティを作る。買い物体験をさらに、エモーショナルにする取り組みを開始した。そして、2023年、カインズとしてさらに進化することをここに宣言する」と取り組みの趣旨を説明した。

<オリジナル商品の売上高推移>

2007年のSPA宣言以降、オリジナル商品は進化を続け、2012年以降11年連続して国内のデザイン賞を受賞するとともに、2016年以降は海外のデザイン賞を受賞するなど、評価が高まっている。また、オリジナル商品の売上高は、2007年のSPA宣言時と比較して、直近では約2.3倍に拡大した。今回、いまだけではなく、5年後、10年後を見据えたものづくり、組織づくり、ブランドづくりを進めるために、nendoと協業するに至った。

具体的な取り組みとして、これまでバイヤー個人のアイデアや技量に頼りがちで、商品カテゴリーごと縦割りの環境だった商品開発体制を、ブランドチームによる企画立案と意思決定プロセスに刷新。従来の事業部やカテゴリーを超えた、ライフスタイル重視の商品開発を可能にする。これにより、従来のより良い「商品」からより良い「くらし」へと、顧客に提供する価値を進化させる。

<高家社長>

商品開発体制について、高家社長は、「これまでの商品開発は、比較的個人のアイディアを基に、どんなニーズがあるのか、どんな商品が売れているのかを考え、個人が企画立案し、バイヤー、マーチャンダイザー、事業部長という縦のラインの中で意思決定をする。いわば、個人の力を中心とした商品開発、縦の意思決定に基づく商品開発が中心だった。この開発体制は、ニーズを迅速に捉え、それを商品開発に結びつけ、商品の改良に結びつけるスピード感があり、これが良い商品を提供できた原動力になっていた。一方で、個人の力に頼るがゆえに、知性や技術がなかなか蓄積されにくい、商品が単発での展開になる、横断的な情報共有が難しいなどデメリットがあった」と従来の体制を解説した。

<従来の商品開発体制>

その上で、「今回、カインズの提供したい価値、カインズらしさとは何かを再定義した。そして、生活シーンを想像し、暮らしにおける課題を抽出し、そこから開発テーマに落とし込むプロセスを採用した。これにより、単品の思考ではなく、より面的な考え方の商品開発を実現する。品番や、テゴリー、事業部を超えて、ライフスタイルあるいは暮らしのスタイルを重視した、カインズらしい商品開発が、これによって可能になる。これからも、良い商品を開発するが、この開発体制によって、『より良い暮らし』を提供する、そこを目的に一新した」と新しい商品開発体制の狙いを説明した。

<新しい商品開発体制>

新しい商品開発体制は、従来の個人による立案そして縦の意思決定のプロセスを、チームによる企画立案、そして横の意思決定のプロセスに変えるのではなく、付加するのがポイントとなる。従来の個人による立案というカインズのこれまでの強みを生かしつつ、「暮らし」をテーマにしたより横断的な開発ができるチームによる立案、横の意思決定プロセスという開発体制をハイブリッドに組み合わせることによって、商品開発をさらに進化させ、暮らしに貢献する取り組みとなる。

<新旧の商品開発体制をハイブリッドで展開>

今回、カインズの価値提供を体現する、くらしを「支える」、日々のくらしを「楽に」、日々のくらしを「すこやかに」、くらしを自分らしく「クリエイティブに」、いつものくらしに「プロの視点を」、職人さんの一日を「よりよいものに」、ペットとのくらしを「心地よく」、自転車をくらしの「パートナー」にという「8つのくらしのコンセプト」を新たに作成した。

<8つのくらしのコンセプト>

高家社長は、「カインズは、安くて、デザインも良く機能的なフライパンを開発してきた。これを8つの暮らしのコンセプトの視点で商品開発するとどうなるのか。機能的でデザインの良いフライパンということに加えて、例えば、日々の暮らしを楽にするというコンセプトであれば、焦げにくいフライパン、日々の暮らしを健やかにしたい方には、余分な油をカットするフライパン、暮らしにプロの視点を入れたいという方であれば、シェフのおすすめのような鉄のフライパン、自転車の暮らしをパートナーにしたい方には、屋外でも使えるようなフライパンから派生したスキレットもある。8つのコンセプトに基づいて、商品開発を進めていけば、幅広く多様な価値を提供できる可能性が広がる」と新しいコンセプトを解説した。

<新コンセプトを生かしたフライパンの発想>

新コンセプトは、商品開発体制だけでなく、売場にも反映している。6月にオープンした「カインズ ハンズ新宿店」は、小型店であり、新たに策定した8つのコンセプトをベースにした売場づくりを実験的に開始している。

<カインズ ハンズ新宿店のレイアウト>

そして、この8つのコンセプトをもとに、新たに8つのプロダクトブランドを設立した。「カインズスタイル」は、「日々の暮らしの楽に」をコンセプトに、日々のちょっとした不平さやストレスを解消するブランド。暮らしを自分らしくクリエイティブにする「カインズメイク」は、豊富な選択肢から自由に組み合わせることができるブランドとなる。

また、ペットとの暮らしを心地よくするペット用品専門の「カインズペット」、「自転車を暮らしのパートナーに」をコンセプトとする自転車用品専門の「カインズサイクル」職人の一日をより良いものにサポートするプロ用資材専門の「カインズプロ」、日々の暮らしを健やかにしてくれる心と体を整える人に優しいブランド「カインズフィット」、いつもの暮らしにプロの視点を加え、日常生活をより快適にする各業界のプロが認めたブランド「カインズイズム」を展開する。

ベースとなるブランドの「カインズ」は、「暮らしを支える」をコンセプトとし、「安心・安全」「誰でもコーディネートできる」「満足できる価格」の3つを備えた商品で、顧客の暮らしに寄り添う商品を開発する。

<8つの新ブランド>

最後に高家社長は、「ブランドの整備することで、今後は店舗展開の可能性も広がる。例えば、小規模な一つのプロダクトブランドに特化した店舗に、プロダクトブランドを組み合わせることで、新しいライフスタイルの提案も可能となる。『より良い商品から、より良い暮らしの提供へ』、カインズらしいライフスタイルをここからさらに広げる」と述べ、小型の専門的な新業態開発の可能性にも言及した。

<トークセッション>

発表会では、土屋裕雅会長、nendoの佐藤オオキ氏を交えたトークセッションを開催した。土屋会長は、「私が佐藤オオキさんのファンだったことが、協業のきっかけ。カインズの商品開発は、機能性を重視して、デザインをいじめるようなところが特長だったような気がする。一方で、nendoさんの作品は、機能性とデザイン性のバランスがよく、使った時にちょっとカッコイイ。どういう頭の構造で、こういうデザインができるのかと思っていた」と協業のきっかけを紹介した。

<土屋会長>

佐藤オオキ氏は、「土屋さんの第一印象なんですが、何回かご提案をする中で、『これをやったら、多分、売れると思うけれど、何かそれで面白くないんだよね』とおっしゃっていて、面白いことを言う方だなと思いました。ビジネスとか利益を度外視する意味ではなくて、短期的なヒットよりも、より中長期的な視点であるとか、広範囲な価値基準で経営判断をされる方なんだろうなと。そういう方とであれば、いろんなクリエイティブやデザインのようなものをやっていける可能性があるんじゃないのかなと思いました」と土屋会長との出会いを語った。

<佐藤オオキ氏>

新たなプロダクトブランドの一部商品は、既存ブランドの「カインズ」の商品をリニューアルする形で、数アイテムがすでに店頭で発売されている。2024年春を目途に、まずは、「カインズスタイル」の商品を集積したコーナー展開を開始する予定となっている。

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