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ウイスキー/駅前立地はシングルモルト優位、駅前以外の売れ筋は?

2018年05月29日 17:35 / POS分析

本稿は、流通現場における製配販それぞれのマーチャンダイジング提案活動を、POSデータ分析を中心にいろいろな角度からサポートするマーチャンダイジング・オン(MDON)が、ホームページで連載している「RDSから見る売上トレンド」を、一部編集した上で「流通ニュース」に転載するものです。

■リッチと立地の関係は?

皆さんウイスキーはいかがですか?以前はハードボイルドな大人の飲むお酒でしたが、ハイボールの一般家庭への台頭や、NHKのドラマ『マッサン』のヒットなどで、今やすっかり 定着したカテゴリーではないでしょうか?

齢30半ばを過ぎた筆者もウイスキーを昔は飲めませんでしたが、バーで飲んだウイスキーのお陰ですっかり虜になっています。

少しウイスキーを調べるとシングルモルト、シングルカスク、ブレンデッドといった製法やスペイサイド、アイラといった産地、ストレート、ロック、トゥワイスアップなどの飲み方、甘いからしょっぱいといった香味など、非常にバラエティに富んでいます。

最近ではインドのウイスキーもあることを知りました。そんな奥が深いウイスキーの売れ方について我々の保有する市場データRDSを使って調べてみました。

まずはウイスキー、ブランデー、スピリッツのいわゆるハードリカーの状況を見てみました。

注:RDSとは、食品・日用品を中心に取り扱い、POSシステムを導入している全国の小売業(総合スーパー、食品スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア等)からPOSデータを収集、整備、データベース化したもの。

<ハードリカーの販売額>
ハードリカーの販売額

ウイスキー、スピリッツともに年間で非常に好調ですが、スピリッツもいろいろ種類があります。そこでRDSデータと商品名称等で自由に自分で属性を付与できる、My属性機能を使用して、スピリッツを各酒類に分けて分析しました。

<ウイスキー、ウォッカ、ジンの販売額>
ウイスキー、ウォッカ、ジンの販売額

スピリッツを確認したところ、構成する商品の大半がいわゆるストロングチューハイの類だったので、今回はそれらを除外し、代表格のジンとウォッカに分けました。

ハードリカーの類は軒なみ成長、特にジンが昨年を大幅に超えています。こちらクラフトジンに各社力を入れた結果かと思います。しかしながら、まだまだ構成比は高くありません。一方で構成比の高いウイスキーは、まだ伸びていました。

では、本題のウイスキーについて、まずは国産ウイスキーと輸入ウイスキーに分けて分析してみました。

<国産と輸入ウイスキーの販売額>
国産と輸入ウイスキーの販売額

国産も好調ですが、それ以上に輸入のウイスキーも好調です

<国産と輸入ウイスキーの月別販売額の前年比>
国産と輸入ウイスキーの月別販売額の前年比

年間の各月の前年比を見てみても、国産・輸入ともに安定して好調なのがわかります。

また各アイテムの上位20アイテムを見てみると…

<国産ウイスキーランキング>
国産ウイスキーランキング

国産では概ねサントリー・アサヒビール(ニッカウヰスキー)の二社が全体をけん引しています。1位はサントリー角瓶700ml、2位はブラックニッカクリアブレンド700ml、3位はサントリートリスクラシック700mlが続いています。

では、輸入ウイスキーの売れ筋商品はどうでしょうか。

<輸入ウイスキーランキング>
輸入ウイスキーランキング

1位は、ジムビーム700mlで売上前年比は21.2%増と大幅に伸長しています。2位はホワイトホースファインオールド700mlで15.1%増、3位のバランタインファイネスト40度は0.6%減でしたが、4位のシーバスリーガルは29.6%増と大幅に伸長しています。

輸入ウイスキーでも軒並み有名なブランドが好調。10%超えが多く見受けられます。

では、これらのウイスキーは他にも何か別の括りで売れ方に違いはあるのでしょうか?RDSと商圏分析を組み合わせた、「商圏POS」分析を使って、違いを見てみました。

ウイスキーのは、嗜好性の高い商品ですが、実際の売り場にはペットボトルの大容量のものも多く見受けられます。

■年収や立地や売れ筋商品はどう変化するのか?

そこで、ウイスキーの容量と購入者の年収の相関関係を調べてみました。

<年収と購入商品の容量の相関関係>
年収と購入商品の容量の相関関係
※レギュラー500~999ml、小容量 ~499ml、大容量 1000ml以上

年収が高くなるにつれ、大容量の構成比が低くなっています。また駅前、駅前以外でも容量別の構成比に差異が見られました。

では、それぞれどういった商品が具体的に売れているのかを単品別にみてみます。年収300万円未満と1000万円以上で売れている商品に差はあるのでしょうか?

<年収別のアイテムランキング>
年収別のアイテムランキング

年収300万円未満、年収1000万円以上ともに、1位はサントリー角瓶700ml、2位はブラックニッカクリアブレンド700mlで同じ商品でした。

ここで、ペットボトルの大容量ウイスキーと輸入や国産のシングルモルトを色分けして分析してみました。

<大容量ウイスキーとシングルモルトの年収別の順位>
大容量ウイスキーとシングルモルトの年収別の順位

ブラックニッカクリアブレンドの2.7Lペットと同4.0Lペットは、全体順位は8位と9位だったが、年収300万未満では、2.7Lは8位、4.0Lは3位となった。年収1000万以上では、2.7Lは13位、4.0Lは16位でした。

一方で、輸入ウイスキーのバランタインファイネスト40度700mlとサントリーシングルモルト白州700mlは、全体順位は14位と18位だったが、年収300万未満では18位と19位、1000万円以上では9位と10位という結果となりました。

年収が低い属性では大容量の順位が比較的高く、年収が高いと嗜好性の高い商品の順位が高いことが分かりました。

<駅前立地と駅前以外のウイスキーの売上高>
駅前立地と駅前以外のウイスキーの売上高

次に、立地に着目して、駅前立地と駅前以外の店舗でのウイスキーの売上高を調べてみました。

すると、バランタインファイネスト40度700mlとサントリーシングルモルト白州700mlは、全体順位が7位と13位、駅前立地では7位と11位となったが、駅前以外では16位と18位となり順位に大きな変化があった。

<立地別のウイスキーの販売動向>
立地別のウイスキーの販売動向

大容量ペットボトルウイスキーでは、サントリー角瓶1.92Lとブラックニッカクリア2.7Lは、全体順位が9位と14位、駅前立地では18位と23位で、駅前以外では6位と9位でした。

駅前立地では、輸入や国産シングルモルトなどの嗜好性が高い銘柄が好まれ、駅前以外ではリッタークラスのウイスキーの順位が高いという結果となりました。

駅前は比較的地価が高く富裕層が多いという点もありますが、近隣住民だけでなく駅利用者が帰宅途中に「おいしいお酒買って帰ろう」といった購入の仕方もされると思います。

逆に帰りに重い商品は買って帰りにくいので、大容量系は敬遠しがちになるのではないでしょうか。

一方、郊外であれば駅前よりも地価は安くファミリーも多い傾向にあると思います。郊外なら自動車の保有も高く重い商品でも購入しやすい、こういった立地背景により売れる商品が違ってくることが予想されます。

お客様のいる場所により、売れる商品が違う傾向が顕著にみられましたので、自社の製品は大量消費?嗜好品?という括りで見て、展開店舗を変えてみてはいかがでしょうか。

POSデータはウイスキーのように寝かすのでは無く、すぐに分析をした方がよさそうですね。

■RDSについて
http://www.mdingon.com/MdonWeb/service/newrds.html

■RDSから見る売上トレンド
http://www.mdingon.com/MdonWeb/topics/trend/

注:マーチャンダイジング・オン社提供のRDS-POSデータ分析については、記事、写真、図表などを複写、転載などの方法で利用することはできません。

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