三菱地所、三井不動産、イオンモール/テナント支援強化、出店費用の抑制策も
2023年07月20日 15:34 / 店舗
コロナ禍を経て、大手デベロッパー各社では、単なるリーシングに止まらないテナントとのコラボレーション、ビジネス支援の動きが活発化している。
コロナ禍で疲弊しているテナント候補、新規事業にチャレンジしたい小規模事業者に向け、初期出店費用を抑えた企画を提案したり、物流2024年問題に悩む専門店に共同配送サービスを提供したりと、テナントの課題解決を支援する三菱地所、三井不動産、イオンモールの動きを追った。
■内装を負担、賃料は歩合制
三菱地所は7月6日、東京・人形町に、都市型商業施設「M’s(エムズ クロス ) CROSS 人形町」飲食ゾーン「ハシゴ楼」(1~5階)をオープンした。
同施設のユニークな点は、内装・内装造作のほとんどを三菱地所が負担。飲食店の出店コスト低減を図るなど、コロナ禍で疲弊した飲食店支援も企図したところだ。
開発計画が2019年にスタートしたものの、2020年からのコロナ禍で大幅に見直しせざるを得なかった。そこで、当初計画の1フロア・1テナントではなく、1フロアに複数テナントを誘致した。賃料も一部固定費以外、8~9割は売り上げ歩合性とするスタイルに切り替えた。
造作などの初期投資の回収は、5年をめどとしている。
さらに、新しい試みとして、テナントは全国から公募した。出店コスト、賃料を従来のリーシングに比べて費用感を抑えることで、新規出店にチャレンジしたい全国の人気店、商業施設初出店の店舗などを呼び込み、個性的な施設づくりに挑んだ。
今後も、テナントとともに、施設を盛り上げる販促などを合同で手掛ける計画だ。
■ECブランドの実店舗への挑戦を支援、CRM戦略を深化
ECプラットフォーム「ecforce」を提供するSUPER STUDIOと三井不動産は7月15日、RAYARD MIYASHITA PARK(東京都渋谷区)に、OMOストア「THE[]STORE」(ザ・ストア)をオープンした。
「THE[]STORE」は、EC・D2Cメーカーのリアル店舗出店を支援する仕組みを採用した。リアル店舗を出店してみたいが、運営リソース・ノウハウの不足などから二の足を踏むECブランドに対し、実店舗、運営スタッフ、販売のためのデジタル施策を提供し、サポートするもの。
常に新しく魅力的なテナントを誘致したいオーナーと、出店費用を抑えつつ、リアル店舗にチャレンジしたいテナントがWin-Winとなる店舗を目指している。
出店者は、週単位でリアル店舗をオープンできる(最低1週間から)。アパレル・食の物販、試食・試飲、新商品発表などに利用可能となっている。
店内は用途、ブランドイメージに合わせてカスタマイズ可能な可変式の什器を用意した。ブランドの世界観を最大限表現できるよう、店頭の大型モニターと2面のデジタルサイネージを設置し、各種映像を投影している。
「THE[]STORE」の仕組みを利用すると、自社単独で出店するより、初期投資を抑えることができる。賃料はテナントによって、固定制、売り上げ連動性を取り入れているという。
また、店頭で来店者は自身のスマートフォンを使って、商品にひも付けられたQRコードを読み取り、買い物をするため、実店舗でありながら、EC並みのOMO戦略を実施することも可能。リアル店舗の販売データとECのデータを連係し、取得した情報をもとに、顧客への継続的なマーケティング施策の実施、継続購入率分析ができる。
SUPER STUDIOのECプラットフォーム「ecforce」の利用者の出店が多いため、単なるPRとして期間限定出店するだけでなく、実際に売り上げ増につながることを可視化できるデータをテナントに提供。テナントのCRM戦略の深化を狙った企画だ。
将来的には、三井不動産が手掛ける物流施設事業との連携も目指す。
物流施設の賃料に固定制でなく従量課金制を取り入れたり、WMSとECのデータの組み合わせで業務効率化を図ったりとSCMの全体最適を見据えた提案にもチャレンジしたい考え。
■自社モールだけでなく路面店・他社施設も共配
イオンモールでは中期経営計画に掲げた「既存事業の枠組みにとらわれない新たなビジネスモデルの創出」の一環として、テナントの専門店企業に向け、共同配送サービスを近畿・東海エリアで今春開始した。
自社モールに止まらず、路面店、他社ショッピングセンターの店舗間輸送と組み合わせたもので、専門店企業の「コストの削減」と「物流サービスの品質維持」を実現する。
※出典:イオンモール2024年2月期第一四半期決算説明資料
日本ショッピングセンター協会の「SC白書2023」によると、2022年は36SCがオープン。コロナ禍で開業が激減した2021年24SCに比べると増加しているが、2019年46SC、2020年41SCに比較すると、この10年来減少傾向が続いているという。
また、行政との連係、高齢者対応、多世代交流コミュニティー化などデベロッパー各社は新しい商業施設像を探っている。深化したテナント支援を含むデベロッパーの挑戦は、今後もさまざまな展開を見せそうだ。
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