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日本のPBブームは終焉するか?

2010年06月14日 / 商人舎からのメッセージ

日本のPBブームは終焉するか?

結城 義晴(商人舎 代表取締役社長)

「あなたは、どちらに掛ける?」
こう呼び掛けてから、11カ月ほど。
コラム執筆が途切れてしましました。
本当に申し訳ありません。
改めて、このコラムを再開します。

日本の食品プライベートブランド(PB)が、3年間で10%の構成比に至るという「予想」。
当たるも八卦、当たらぬも八卦とは言いましたが、いかがでしょうか。
ACニールセンの国際比較調査で、消費流通の先進国及びBRICsやメキシコの平均は、20%。
食品市場の中の5分の1が、プライベートブランドなのです。
アメリカは19%で、世界平均よりもやや低い。
2010年3月中旬、そして5月には2週間にわたって、私はアメリカの定点観測に行ってきましたが、かの地では、PB比率が飛躍的に高まっています。これもリーマン・ショック以来の消費不況が原因の一つ。
もうひとつは、食品や雑貨といった商品群の「コモディティ化」が進んでいること。
日本の場合、2008年段階で、何と4%ですが、2008年、2009年と、これだけブームとなったプライベートブランド。急速なシェア・アップが進むだろうことは、かなり確かな予想となります。
日本でも食品・日用雑貨の「コモディティ化」が進行しているからです。

しかし、今年2010年2月、第44回を迎えたスーパーマーケット・トレードショーのセミナーで、食品流通研究会会長の井口征昭さんは、テーマを掲げました。
「PBブームの終焉とその後」
井口さんはわがコーネル大学リテール・マネジメント・プログラム・オブ・ジャパンの講師にして、わが尊敬すべき先輩でありまして、その見識の高さは、誰もが認めるところ。あの「無印良品」生みの親ともいえるキャリアの持ち主だからです。
2010年も中ごろの現在、「PBブーム」がやってきていることは確かでしょう。
しかし、そのブームに終焉が訪れ、その後、どうなるのか。
ブームが、シェア1割までシェアを押し上げられて、その後、終焉し、定着するのか。それとも世界平均の20%まで、今後も、占拠率は拡大されるのか。

「日本のPB占拠率が現在4%として、2012年までに10%となる」
この予測は、3年で2.5倍を意味します。
もちろん統計の取り方によって大きく違いますが、概算、「3年で2.5倍」と頭に入れておくとよい。
もちろん、日本全体での予測だから、PB比率がどんどん高まる小売企業もあれば、メーカーがつくり、卸売業や商社が探してきた商品を、丁寧に販売する小売企業もある。
そのうえで、全体に「3年で2.5倍」。

今年3月3日、イオンはPB「トップバリュ」の品目絞り込みを発表しました。
私が「日本のPBは2.5倍に成長する」と予測した期限の2012年。
それまでに300品目に収れんさせる。そしてこの300品目は年間売上高10億円以上の商品とする。「トップバリュ」のブランドの中で、年間販売額10億円以上の品目は2009年度段階で50品目でした。
そのイオンの「トップバリュ」の成長の軌跡。
2003年度の年間販売額1,632億円(前期比124.70%)
2004年度2,037億円(124.80%)。
2005年度は2,040億円(100.10%)と踊り場。
2006年度2,201億円(107.90%)。
2007年度2,647億円(120.30%)。
2008年度3,687億円(139.30%)。
そして最新の2009年度は    4,500億円で、前年比122.05%。
全体のボリュームを追い求めてきたイオンのトップバリュが、品目当たりのボリュームを求め始めたのです。

私はプライベートブランドを大きく4つに分類しています。
第一が、[エコノミー・ブランド]。これは、「トレードオフ」によって、ナショナルブランドに比較して低価格を狙う商品群。最も一般的なプライベートブランドです。  
第二は、[クオリティ・ブランド]。これは、品質の向上を狙う商品群。
さらに第三は [ライフスタイル・ブランド]。これは新しいライフスタイルを提案する商品ですが、ライフスタイルは多様化します。従ってこのブランドも多様化します。
第四は、[コンペティティブ・ブランド]。これは[ファイター・ブランド]とも呼称します。すべてのブランドに対して競争的低価格を狙う商品群です。
イオンは、この4つのパターンのブランドを持っています。
[エコノミー・ブランド]は「トップバリュ」。
[クオリティ・ブランド]は「トップバリュセレクト」。
多様化する [ライフスタイル・ブランド]は、①「トップバリュレディミール」、②「トップバリュ共環宣言」、③「トップバリュグリーンアイ」、「トップバリュヘルシーアイ」。
簡便性を求める生活、環境や安全を追求するライフスタイル。そんなことに対応するブランドです。
そして[コンペティティブ・ブランド]は、「ベストプライスby TOPVALU」。
この4つのプライベートブランドのパターンは、イギリスのテスコやアメリカのクローガー、セーフウェイといった国際的なスーパーマーケット・チェーンが持っている体系でもあります。
イオンはこの体系に基づいたプライベートブランド開発の上で、1品目当たり10億円を超えるボリュームを狙い始めたのです。

どうでしょう。
こういった取り組みが進行している日本のプライベートブランド。
「ブーム終焉のとき」を迎えているのでしょうか。
井口さんは「ブームが終焉して、本格化が始まる」と言いたいのでしょうが。

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