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サミット/竹野社長が語る客数増加戦略(後編)

2019年12月23日 17:00 / 流通最前線トップインタビュー

扉写真・竹野社長

社員の意識改革が進み、業績も好調なサミットについて、竹野浩樹社長に前編では、意識改革の内容、選ばれる店づくり、人気の販促企画について語ってもらった。後編では、成果をあげてきている惣菜改革、都市型店の出店、キャッシュレス対応、業界の今後などについて聞いた。

惣菜改革、都市型店好調で売上増

――大総菜プロジェクトで商品力を強化していますね

竹野 惣菜改革「大総菜プロジェクト」は、上位10店で大総菜プロジェクト対象アイテムの売上高が、全売上高に対して25%以上を目指しています。現在、20%以上を達成している店が増えてきました。例えば、精肉売場の鶏肉がおいしいので、惣菜売場で唐揚げにしました。その唐揚げが人気なので、今度は冷凍食品にしました。素材から作ったり、買い置きしたり、当社の目指す、気分で買物を変えることができる品ぞろえになっています。

<惣菜が売上をけん引>
惣菜が売上をけん引

――どの部門で一番惣菜改革の効果が出ましたか。

竹野 ベーカリー部門です。商品の食べ方、でき立て感の醸し方、包装などプロジェクトからよく学んでやっています。商品のサイズ、量目、価格、しっかり磨き上げています。そのほかの各部門でも、「大総菜プロジェクト」で得た知識、ノウハウが共有されています。「大総菜プロジェクト」の売上伸び率は、既存店の成長率(1~2%)を上回る8~9%と全体をけん引しています。やみくもに惣菜の点数を増やすのでなく、商品の改廃含め、魅力ある商品作りで奥行きを出すことで数字を上げていきます。

<ベーカリーなど改革>
ベーカリーなど改革

――惣菜、ベーカリーを強化した三田店、鍋屋横丁店が好調ですね。

竹野 ともに店舗入口に惣菜、ベーカリーを設置し、即食簡便商品を強化した都市型店です。インパクトのある売り方を採用した三田店が成功し、そのレイアウトなどの学びを取り入れた鍋屋横丁店も好調です。開店半年ほどで黒字化を達成しました。商品、内装、レイアウトなど商圏に合わせ修正した店舗が結果を出しています。

――来年チャレンジする都市型小型店について教えてください。

竹野 通常出店している約1600~2000m2、約1000m2クラスの店舗では、稼ぐ力がついてきました。今後、山手線沿線など広い面積が確保できない出店条件などを考慮し、約330m2クラスの都市型小型店に来年5月チャレンジし、店舗フォーマットを多様化します。来期以降に出店が決まっている約10店のうち、3店は小型店となる予定です。売れても数億円と言われる小型店を我々がやればどうなるか実験します。この業態が成功すれば、さらに都心に出店できます。

<SCテラスモール松戸に出店>
SCテラスモール松戸に出店

――商業施設への出店は強化しますか。

竹野 ショッピングセンター(SC)などへの出店は重要な戦略ではありますが、商業施設だけにはこだわりません。ネットでなんでも買える時代ですが、首都圏では安全、安価に過ごせる場所として、SCの重要性があります。商業施設の優勝劣敗はあると思いますが、SC出店で我々の価値を提供できるチャンスがあるとみています。

――店舗のキャッシュレス決済対応の進捗はいかがでしょうか。

竹野 QRコード決済の導入は、1カくらいでばっとやりました。急な決定にも関わらず、機械の手配など皆がよく乗り切ったと思います。QR決済利用者は現在2%程度ですが、以前より利用が増えており、成果が上がっています。当社の客単価平均2000~2300円の中、1700~1800円の客単価の人が、スマホ決済を利用しています。セキュリティの問題か、少額決済に適しているのかわかりませんが、客単価は1割低いです。

しかし、各キャッシュレス決済については、キャンペーンをきっかけに利用を開始し、キャンペーン終了後も、その利便性などから利用が定着していると思います。私も、コンビニなどでキャッシュレス決済を利用しています。

<セミセルフレジを導入>
セミセルフレジを導入

――人手不足対策について教えてください。

竹野 セミセルフレジ、セルフレジなどデジタル技術の導入もしっかりやっていきます。現在、社員充足率は90%で、外国人実習生、派遣の活用で95%くらいにしています。足りない分は、社員の残業などでカバーしていますが、人手不足対策は悩みながらやっている感じですね。外国人技能実習生今年度末で計300人、来年度末には200人増え500人体制になります。

また、先日経営層の合宿でも、企業として、中にいる自分たちが働きたくなるような、「魅力のある会社」になることで問題が解決するのではないかという意見も出ました。ハード面だけでなく、家族的に助け合える会社なら人は辞めないのではないかと思います。

――来年3月に新たな中期経営計画を策定しますね。

竹野 当社の使命を再定義する予定です。今まで、スーパーマーケットの使命として、社員の中に刷り込まれていたのは、モノが充足している売場を作ること、食の提供でした。経営理念は変えずに、スーパーの使命とは、我々は何者なのか、我々の使命とは何かを徹底して考え、「食を起点にした社会課題解決企業」として、社会に向き合っていきます。

――食を起点とした社会課題解決企業とはどういうことでしょうか。

竹野 従来のスーパーは、生活に必要な食品などをそろえることが、社会的課題の解決であり、役割でした。今では、ミールソリューションだけでは、足りません。トヨタ自動車が、自動車メーカーから、「移動」に関わるあらゆるサービスを提供していく「モビリティカンパニー」に刷新したように、食を起点にあらゆる課題に応えていく、選ばれる企業を目指します。

我々の目指す姿は何か、経営者層を集めた合宿でも活発に議論し、今後の中計に反映します。スーパーは、もともとは、食材を豊富にそろえ、販売することで社会課題を解決していました。これからは、生活に必要なもの、生活の課題、社会課題そのものを解決する企業になれば選ばれるのではないかと考えています。

――今後の流通業界はどうなると見ていますか。

竹野 2020年は、キャッシュレス・ポイント還元で、体力のない企業は疲弊し、淘汰されるのではないでしょうか。スーパーが生き残るには、増える人件費、キャッシュレス対応など、さまざまな投資が必要になっており、(日々の営業で)日銭が入っても、投資分を賄えない時代がもうそこにきていると思います。

数年前はM&Aが救済策になりましたが、弱体化した企業と組んでも、弱い企業も、強い企業も引っ張られて、価値を出せない、シビアな状況になるのではないかと考えています。生き残るため、強い者同士が組んでやっていく、大変な戦国時代が来るのでないかと思っています。

ダーウィンの適者生存では、強いものが生き残るのではなく、変化に対応したものが生き残るとしています。我々は、売る姿勢も大事にしながら、顧客をみて、顧客に合わせていく。顧客に向き合い、価格だけに頼らない、価値により重点おいて、社会課題を解決し、選ばれる戦略をとり、成長し続けていきたいと思います。

<価格だけに頼らないと竹野社長>
価格だけに頼らないと竹野社長

■竹野浩樹(たけの ひろき)氏プロフィール
生年月日:1965年3月27日(東京出身)
1989年4月:住友商事入社
2010年4月:同社ブランド事業部長
2015年6月:サミット取締役常務執行役員
2016年6月:同社代表取締役社長就任(現任)
2018年6月:サミット・コルモ代表取締役社長(兼任)

■サミット/竹野社長が語る客数増加戦略(前編)
https://www.ryutsuu.biz/column/l120001saizen.html

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