消費増税などス-パーマーケット業界に逆風が吹く中、3年半で既存店客数は9%増加、既存店売上は10%増加し好調なのがサミットだ。竹野浩樹社長就任以来、「日本のスーパーマーケットを楽しくする」をテーマに、意識改革を徹底し、着実に成果をあげている。前編では竹野社長に、サミットの好調の要因、顧客に寄り添う選ばれる店づくり、ユニークな販促企画について聞いた。
顧客に寄り添う店づくりで既存店好調
――既存店売上が好調を維持していますね。
竹野 中期経営計画で定めた定量的目標は昨年で達成しました。計画3年目となる今年は、11月まで予算通り進捗しており、計画通りにいけるんじゃないかなと思っています。消費増税があり、ポイント還元の対象にならない企業でありながら、よくやっていると思っています。台風など天災、ラグビーの盛り上がりなど先が読めない中、うまくしのいできました。
――好調な業績の要因を教えてください。
竹野 風土改革、意識改革が順調に進んでいるからだと思います。もともとサミットは、私の以前の社長たちが、会社、売場の仕組みを作ってきてくれていた歴史があります。ですから、人も人事制度も変えていません。変わったのは人の(仕事への)モチベーション、ガッツ、意識です。
――どのような意識改革に取り組んだのでしょうか。
竹野 人がチャレンジするには、自分の意見が真っ向から否定されない、意見が言い合える安心できる環境が必要です。意見を言っても安全だといえる環境づくりをトップが率先してやっています。当社では、意見の修正やアドバイスはしますが、出た意見を否定せず「いいね!いいね!」と励ましたり、より良いものにするために意見を言い合ったり、安心して自分の意見が言えます。
私を含めて会社の経営陣が、それを一貫して支えています。これが価格競争に陥らず、顧客に選ばれる店となり、店舗の皆の力で売上増、1人当たりの買い上げ点数増につながっています。
――価格競争にとどまらない選ばれる店づくりとはどういうことでしょうか。
竹野 店舗のコミュニティ化、顧客とのコンタクトポイント増やすということです。サミットが、地域の中で仲間として迎えられ、台風、消費税増税といった逆風下でも選ばれる価値を提供し続けているからこそ、既存店売上の好調を維持できています。
おいしく、高品質な商品の追求、お手頃な価格の商品がいつでもそろうという食のソリューションは、我々の仕事の一部です。それに加えて、我々が提供する価値を突き詰めていくと、こちらが提供する価値以上のものを感じて、サミットを選んでくれ、ファンになってくれているのが、案内係のレポートでもわかります。
いいものが並ぶスーパーというだけでなく、社会に組み込まれた存在、顧客にとって、店のスタッフとコミュニケーションや、企画のワクワク感で楽しんでもらうことも重視しています。
――人口減少、少子高齢化の時代に価値を提供するとは。
竹野 料理しない、包丁も使わない、火もつかわない、車を使わない、量も使いきれない現代に、どこまで向き合っていくかが課題です。そのために断絶したコミュニティの代わりとなる、コミュニティのような、寄り添う店を目指します。品ぞろえだけでないところに経営の関心があり、志がそちらにあることが他社との違いです。そこに、サミットのすさまじさを出していこうと思っています。
――お客に寄り添う店とは、どんな店でしょうか。
竹野 来た人がその日の気分で買う物を、原料でも惣菜も、冷食でも変えられる、サミットって便利で、寄り添ってくれていると思われるような店づくりが大事です。競争は激化していますし、競合の出店もあり、年々商圏は小さくなっています。当社では、地域のすべての人を対象とし、その需要に柔軟に対応します。
今困っていることに対応することで、今まで来なかった人もきてくれるような店を目指しています。1店当たり1日4000人くらい来店されるのですが、これだけの人数が立ち寄ってくれるところはなかなかないと思います。駅も人が多いですが、通り過ぎるだけですから。この人の立ち寄るところに、何が加わったら新しいことが起こるだろうと常に考えています。
イートインでは、コーヒーの淹れ方教室など開催していますが、これからは、もっと必要とされている情報を提供するなどの、新しい役割が果たせたらと思います。困っていることで教室を開催するなどできたら、よりよい信頼、なんでも相談してくれる間柄になるのではないでしょうか。社員、顧客、お取引先が、社会というステークホルダーの中で、家族的な価値を共有することを目指しています。
――サミットといえばユニークな企画が人気ですね。
竹野 各売場が一押しの惣菜で勝負する「総菜選挙」、メーカーにも参加してもらい、メニューの人気投票で対決する「サミットカップ2019」、各店を回る「スタンプラリー」などが今年は人気でした。同業他社が、簡単にまねできない企画だと自負しています。
形だけまねて、トップがやらせても、現場がその(販促策の)開催の意義を納得していなければ、大胆なプランは出てきませんし、途中で面白いアイディアも潰されてしまうでしょう。我々は「のけぞるような」面白いプランを考え、提案する商品、食べ方に意義を感じてくれればいいのです。
単純な売上増といった結果を求めていません。我々の独自性のあるチラシに顧客が「にやっ」とすればいい、サミットに他社とのに違いを感じてくれればいい。いくらもうかる、いくらリターンがあるなどという、小さい話でなく、サミットのチラシを通じて、記憶にとどめてもらい、足を運んでくれればいいと思って取り組んでいます。
――買物だけでない楽しさを提供すると。
竹野 全店で、店を現わす独自のスタンプを作りました。これを使い、スタンプ3つ集めるとクリアファイルがもらえるというスタンプラリー企画を実施したのですが、子どもから大人まで参加し、中にも100店近く回った人もいました。すぐに売上につながるわけではありませんが、みんなが楽しく参加しているというのは、想像以上の価値があります。
スタッフと顧客、顧客同士で会話が弾んで、サミットって面白いと思っていただける、地に足の着いた楽しさを提供しています。
今はやりの「コト消費」などと言わずとも、各店から、お店の活性化のため、何をしたら顧客が喜んでくれるか、お互いへのリスペクト、各人、各店の情報共有に基づいた提案が出されています。顧客や従業員同士が喜ぶ姿が見たいと、顧客目線で企画を考えてくれています。
顧客、従業員、取引先が楽しめる。顧客はサミットに楽しく行き、従業員はサミットで働く誇り、安心感があり、取引先にはサミットとつきあってよかったと思われる。
地域と一体になる企画など、商品だけ、価格だけでない、会社の底力があるからできることで簡単にまねされることはないと思っています。今後、やらされ感がなく、現場のチーフ、パートさん全員にこの志がつたわっているか、全員に伝えるのが経営課題です。
――取引先も販促で盛り上がったと聞きました。
竹野 メーカーの社長が登場した「サミットカップ2019」では、メーカーの社長の顔を初めて見たという声もありました。当社の従業員だけでなく、メーカーの従業員さんも必死でした。「なんで(企画に)出られないんだ」という社長もいたので、今後も企画を考えています。
各ステークホルダーを巻き込み、モノが充足しているという売場の状態でなく、顧客、取引先と喜び、悲しみもともにする。食を提供するのは当たり前、それ以外のことがサミットを良くして、業績を伸ばしています。今後の中計ではそういったことを定義しようと思っています。もちろん、販促だけでなく、その日の気分に合わせて、買う物を変えられる魅力ある商品作り、売場づくりも欠かせません。
(12月23日後編に続く)
■竹野浩樹(たけの ひろき)氏プロフィール
生年月日:1965年3月27日(東京出身)
1989年4月:住友商事入社
2010年4月:同社ブランド事業部長
2015年6月:サミット取締役常務執行役員
2016年6月:同社代表取締役社長就任(現任)
2018年6月:サミット・コルモ代表取締役社長(兼任)
■サミット/竹野社長が語る客数増加戦略(後編)
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