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ロイヤルホスト/既存店24カ月連続前年超えの秘策

2023年10月27日 16:00 / 流通最前線トップインタビュー

ロイヤルホストの既存店売上高は2023年9月で、24カ月連続の前年超えとなった。外食産業はコロナ禍で最も打撃を受けたが、ロイヤルホストは2021年10月から既存店売上高が前年を超えた。いち早く業績が回復できた要因は何か。生田直己社長に聞いた。

人流が止まったコロナ禍でも来店客に着目

――コロナ禍から業績が回復した要因を教えてください。

生田 外食はお客様が来店しないと成り立たない事業です。コロナ禍では、ここがウイークポイントとして露呈しました。その中でも来ていただけるお客様に着眼点を置きました。あの状況下でも、来店されるお客様が食事をされている風景を思い描きながら、もう一度、そこに施策を打ったのが良かったと思います。

――どんな施策を打たれたのですか。

生田 ロイヤルホストは専門店とは違いますから、単一的な商品で終わらず、さまざまな味を楽しめるセットメニューを提案しました。現在、開催中のイタリア料理とコラボした「ロイヤルホストのフュージョンセレクション イタリアンピアット」のようなフェアを継続しました。来店された時に、いろんなものを楽しんでいただける商品開発・商品構成を打ち出しました。

――フェア以外には、どんなことをされましたか。

生田 やはりテイクアウトの売上が変わりましたので、テイクアウトのメニュー改定をし、よりバラエティの幅を広げました。容器を変えて、よりお客様に価値を伝え、店舗の作業がもう少しやりやすくなる工夫をしました。

――2021年10月から既存店売上高が前年を超えた要因は。

生田 売上高を分析すると、客数はコロナ禍前の2019年前には戻っていません。端的に言えば、客単価が前年比を上回ったということです。当時は、行動制限もあったので、目的を持って来店されるお客様が多かったと思います。外出している人がたまたま来店され、ドリンクだけを楽しまれるという方より、食事をするために来店するお客様が増えた。そうなるとランチやピークタイムのお客様の比率が増加して客単価が上がりました。

――顧客の変化を感じることはありますか。

生田 外食される方の行動も変わりました。商品の傾向を見ると、やっぱり自分に合った良いもの食べたいとか、豊かな時間を過ごしたいと考える方が増えたと思います。例えば、セットメニューの販売比率が上がっています。当社のシグニチャー商品である「オニオングラタンスープ」をセットで注文される方が、コロナ前よりも上昇しています。世の中のニーズと我々の施策がうまくマッチしたことが数字からも読み取れます。

――リピーターのお客様が増えていると感じますか。

生田 当社のアプリや楽天ポイントカードのデータから来店頻度を見ていますが、来店頻度は意外とそんなに高くありません。3カ月に1回来られる方でも結構、ヘビーユーザーとなる感覚です。日常より、少し非日常感のある中で利用されて、年に4回、5回、6回と来店していただくイメージです。リピーターのお客様が次に来店されるまでの期間が、意外と長いのが、ロイヤルホストの特色ですね。

<洋食小皿〜イタリア風〜シーフード包み焼き&イタリアン小皿(税込3278円)フェアメニュー>

――現在の客単価を教えてください。

生田 客単価は非公開ですが、フェアメニューの価格までは届きません。フェアメニューの半分強くらいになる感覚です。ランチやモーニングもあるので、目立つ価格よりも客単価は低いです。ただ、ファミリーレストラン業界からすれば高いと思いますね。

――コロナ禍では都心部の店舗が苦戦しました。立地的な分析はありますか。

生田 ロイヤルホストは立地が良かったと思います。当社は全国展開するチェーンですが、店舗数はまだ220店程度です。東京本部に隣接する「ロイヤルホスト桜新町店」は、少し駅から離れていますが、住宅があり人の往来もあります。郊外型ファミリーレストランの中でも、他社とは違う特色を出して、「食事に行くならロイヤルホストかな」という価値を打ち出しています。

<最新店舗のロイヤルホスト光が丘IMA店>

割引ではなくフェアメニュー訴求で集客

――外食業界では初回来店割引などクーポンが盛んですが、ロイヤルホストはどうですか。

生田 3、4年くらい前、私はロイヤルホストの営業本部長でしたが、当時は、メルマガ会員サービスの割引がどんどん増えていました。割引の仕組みが甘いことがあり、見直しが必要でした。2020年に携帯メルマガサービスを終了し、割引施策を見直しました。そして、メルマガに代わって、アプリを開発しました。

――アプリの狙いを教えてください。

生田 何を売っていくのかと考えた時に、やっぱりコト体験がありました。外から見て行きたくなるようなビジュアルや情報をメインに打ち出し、一回、割引はフェードアウトしました。割引は、繰り返しやらないと来店されないと思ってしまうのですが、意外と止めてみれば、たまたまかもしれませんけど、それほど影響はありませんでした。

――全く割引はないのですか。

生田 割引はすべて止めたわけではありません。誕生日の割引クーポンはあります。メルマガは文字だけでしたが、アプリは画像も出せるので、割引を打ち出すのではなく、フェアをちゃんと見せられる。割引でなくてもプラスアルファで、レシートに二次元コードを印字して、そこからフェアメニューのアンケートに回答するとデザートクーポンをプレゼントするなど、特典を変えています。

<ロイヤルホスト光が丘IMA店の客席>

――どんな来店シーンが多いですか。

生田 もちろん、誕生日のようなハレの日もありますが、日常のランチもあります。ただ、ランチでも利用のされ方が変わってきています。単に昼ご飯を食べるのではなく、ママ友で話をしてみようとか、仕事の商談ではなく、仕事仲間でゆっくりランチをしようというお客様が増えています。一方で、ディナータイムは相変わらず、家族連れの方、夫婦の方、親子三世代で来店される方がいらっしゃいます。

――主な来客層の年代を教えてください。

生田 ロイヤルホストは年代層で言うと40代、50代、60代が主になってきています。この層に合うメニューや店内のしつらえも大切ですが、若い方も取り込む必要がある。現在は、産学連携をしたり、学生にSNS販促を考えてもらいZ世代にも見てもらえる情報発信を意識しています。特に、デザートは話題になりやすく、話題感が出ると若年層が増えることもあるので、そこは意識して進めたいと思います。

――ロイヤルホストの強みをどうお考えですか。

生田 ロイヤルホストは創業50年を超えています。1号店から、大事なところは変わりなく残してやっています。セントラルキッチンの味も、いろいろな微調整はあるものの、味は変わりなくやっているのが強みだと思います。

――大事なところとは、なんですか。

生田 一つは経営基本理念です。ロイヤル経営基本理念に、『食品は美味しくなければならない』『調理・製造も取扱いも衛生的でなければならない』『サービス・販売は、お客様の心を楽しませ、社会を明るくするものでなければならない』という言葉があります。ロイヤルで働くメンバーが、そういった目的、思いを常に持っていることです。それに、やっぱりぶれない経営の施策を打ち立てることが、ここにきて大事になっています。

<ロイヤル経営基本理念>

画像提供:ロイヤルホールディングス

――過去の施策から学んだことはありますか。

生田 やはり価格でお客様を取っていくことはダメですね。一時期、ロイヤルホストでもパンケーキ食べ放題をやったりして、価格で集客しようという時もありましたが、結局、一過性です。こういった施策を止めて、経営基本理念という原点に戻ってきたことが良かったと感じています。

――今後のロイヤリティプログラムを教えてください。

生田 ロイヤルフードサービスには、ロイヤルホストをはじめ、天丼てんや、シズラー、シェーキーズなどさまざまな業態があります。また、ロイヤルグループでみると、リッチモンドホテルもあります。そこで、グループ横断で顧客とつながる施策を検討しています。普段は、天丼てんやに来店することが多いけど、誕生日はロイヤルホストに行こうみたいになっていただく工夫をしたいと思います。

――アプリの機能拡張はどんなイメージですか。

生田 単に情報発信だけではなく、コミュニケーションに近づけていきたい。具体的には、アプリから店舗の予約が取れるようにもしたい。また、一部の店舗を除き、テイクアウトモバイルオーダーも導入しています。

店で美味しければ家でも食べたい「ロイヤルデリ」開発

――冷凍食品のロイヤルデリは、コロナ禍で開発したのですか?

生田 実はロイヤルデリは、コロナ禍前から、自社のセントラルキッチンの技術を生かした商品として開発を進めていました。これまでのレシピがあり、それを再現する力があるのが、ロイヤルホストの強みです。コロナ禍になって、ロイヤルデリの売上が上昇し、いまも売上が伸びています。同じコーンスープでも、ロイヤルが作ったスープということでお客様が購入されています。

――ロイヤルデリが売れる要因は。

生田 レストランで食事をすると、「おいしかったから、また食べたい」「家でもできるなら作ってみたい」と思われる方がいます。昔からドレッシングは、店頭でも販売していました。私が店舗で働いていた頃も、ドレッシングを多くのお客様が買われていました。

食べておいしかったから買って帰るというのは、人の心理だと思います。食べておいしかったものが帰りに冷凍ショーケースに並んでいたら手に取って帰ってもらえるので、訴求効果があります。これもひとつのコト体験だと思います。

――冷凍食品の販売方法はどう変化しましたか。

生田 コロナ禍の2020年から冷凍ショーケースでの販売を広げています。当初は、アイスクリームを販売していた冷凍ストッカーに、アイスクリームをやめてロイヤルデリを入れて売ったりしました。冷凍ストッカーでも販売が好調だったため、新たに扉付きの冷凍ショーケースを入れているのが現状です。当初は、冷凍ショーケースがない店舗もありましたが、いまはほぼ全店で入れています。

<ロイヤルホスト光が丘IMA店のロイヤルデリコーナー>

――最新店舗の光が丘IMA店では冷凍ショーケースを拡大しましたね。

生田 光が丘IMA店では、ロイヤルデリというよりも持ち帰りできるショップ商品をしっかりと見せる売場を作りました。例えば、スイートポテトや、ドレッシングをきちっとラインアップして打ち出しました。また、ショップ商品のコーナーをしっかり作り、オニオングラタンスープの器の販売も開始しました。

――ロイヤルデリで来店客層は拡大しましたか。

生田 ここは分析が難しいところです。どちらかと言えば、お客様により付加価値を出したのがロイヤルデリだと思います。冷凍食品そのものの市場からすれば、まだ裾野を広げることができるので、ECでの販売にも注力しています。

――ロイヤルデリの既存店売上高への貢献は大きいのですか。

生田 まだ、それほどではありません。現状では、売上高のほぼすべてが、レストランでの飲食売上です。ただ、ロイヤルデリを買うために来店されるお客様もいらっしゃいます。

味と接客がロイヤルホスト成長の両輪

――フェアメニュー以外の注力施策はありますか。

生田 味は強みであり、我々のバックボーンです。そして、人のやっているサービスが重要です。我々が大事にしているホスピタリティ、空間、清潔感、安全・安心というものを大事にしています。

――外食産業で導入が進む接客ロボットについて、どうお考えですか。

生田 我々はロボットを活用するならば、よりサービスが良くなっていく、人がやることが良くなっていく思考になりたいと思います。省人化するためではなく、接客を良くするために使いたいと思います。

――タッチパネルによる注文を導入した意図は何ですか。

生田 ここもロボットと同じ考え方です。単にタッチパネルを入れて人を減らすのではなくて、タッチパネルを入れたなら、何かプラスアルファになるようなサービスを付け加えていきたい。今までできなかったことを、できるようにしたい。また、今までばらついていたことを安定化させていくといった取り組みがこれからのDXだと思います。

<ロイヤルホスト光が丘IMA店に導入したタッチパネル>

――ロイヤルホストでは、誕生日のフォトサービスとかありませんね。

生田 ロイヤルホストでもかつてフォトサービスやバースデーサービスを実施したことがありましたが、途中でなくなってしまいました。やっぱり現場で追いつかない。でも、そんなサービスを安定的にバラツキなくできることが、これからすごく大切です。

――接客では人材育成が欠かせませんね。

生田 教育訓練も大事です。人が育つ、店舗を自分のお店と思って頑張ってくれる仕組みなどを試行錯誤しながら作っています。単にマニュアルだけではなく、日々働いている人が誇りを持てるような目標設定を作ったりしています。

現場をしっかりリーディングできる店長、料理長の育成、そういう人たちにしっかりとコーチング、ティーチングできるミドルマネジメントの育成も含めて、階層の中でしっかりと教育できる体制を目指しています。特にチェーンストアというのは、それを強めないと駄目だと思います。

――どんな目標設定があるのですか。

生田 店舗では、小さな目標設定をしています。例えば、できるだけ入口を見ようとかですね。入口を見るということは、入口を見て、お客様が来たら「いらっしゃいませ」と言うことにつながります。店舗では、目標設定をしてサービスや調理レベルを向上させていますね。行動を言葉にして目標設定しています。

――最後にロイヤルフードサービスの目標を教えてください。

生田 ロイヤルフードサービスには、ロイヤルホスト、天丼てんやなどさまざまな事業があります。それぞれの事業が、それぞれの価値をしっかり表現できる事業にする必要があります。ロイヤルホストは、51年続いていますから、その価値の有り様というものが、歴史的にも作られて分かりやすくなっている。天丼てんやも創業から30年を超え、形ができている。

でも、最近できたような業態、例えば「ラッキーロッキーチキン」という業態がありますが、「じゃこれってなんなの?」というのを、まだ作れていない。しっかりと事業に合った価値を作り、お客様が本当にそれぞれのシーンで使っていただける事業をやっていきたいと常に、考えています。

そして、何よりも来店された時に、サービス・料理を含めて、期待を裏切らないことが一番大事かなと思います。お客様は何か期待をして来店されるわけですから、その期待を裏切らない。どれだけ、期待の100%に近づけていけるのか、店づくり、施策、経営のすべてで、そこに着眼点を持ってやっていきたいと思います。

<生田直己社長>

■生田直己氏のプロフィール
生年月日:1964年5月21日(大阪府出身)
略歴
1988年3月:近畿大学商経学部経営学科卒業
1988年4月:オージー・ロイヤル(現:ロイヤルホールディングス)入社
2011年1月:ロイヤルホスト(現:ロイヤルフードサービス)東関東営業部第三地区地区長
2015年1月:同社関東第三営業部部長
2017年11月:同社ロイヤルホスト営業本部長
2018年4月:同社取締役ロイヤルホスト営業本部長
2021年1月:ロイヤルフードサービス取締役ロイヤルホスト事業部長
2022年1月:ロイヤルフードサービス代表取締役社長

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