公取委/楽天送料無料「一般論として優越的地位の濫用の可能性はある」
2020年01月24日 16:00 / 行政
公正取引委員会は1月22日、オンラインモール運営業者が出店者に対して優越し、不当に不利益を与えるようなやり方で取引条件を変更する場合は、独占禁止法の優越的地位の濫用に当たる可能性があるとの見解を示した。
同日、開催した事務総長定例会見で菅久修一事務総長が、質疑応答で一般論として述べた。質疑応答の要旨は以下の通り。
――楽天が一定額以上買物をすると送料を一律で無料にする方針を発表しました。これに対し、楽天ユニオンが優越的地位の濫用に当たると、今日署名を提出しました。楽天の件は、独禁法に抵触しますか。
事務総長 御指摘の件は、私の知る限りでは、その情報提供者がそういうことを述べている、公正取引委員会に行っていることを聞いているので、それ自体は公正取引委員会としては否定しません。けれども、個別の案件については、一般論で言えば、申告があれば必要な調査をして適切に対処するので、それ以上のコメントは差し控える。
――楽天に限らず、巨大プラットフォーマーによる出店者への不利な一方的な規約変更についてはどうお考えでしょうか。
事務総長 これも一般論ですが、従来からさまざまな実態調査報告書やガイドラインなどでも明らかにしているが、自己の取引上の地位が、例えば、オンラインモール運営業者が出店者に対して優越している場合、不当に不利益を与えるようなやり方で取引条件を変更するという場合には、独占禁止法でいえば優越的地位の濫用に当たる可能性はある。そうなるかどうかは、事実を見なければ分からないと考えている。
――楽天側の送料無料というサービスは3月に実施する方向です。それまでに結論を出すのが難しい場合、差止めを行うことはありますか。
事務総長 かなり具体的な話で、何とも申し上げようがない。優越的地位の濫用という規定は前からあって、これに基づいて、様々なものを様々な状況で、これまで公正取引委員会は対応している。特に、何か今回初めて珍しいわけではない。ただ、内容についても私も十分承知していないので、それ以上のコメントは控える。
――公正取引委員会は、まだ行われていない行為に対して、例えば、差止めであるとか、排除措置命令等を出すことはできますか。
事務総長 この件を外れて一般的にという話ですが、もちろん行われなければ措置を採る必要はない。行われる可能性がある、行われることが見えていれば、調査をするというのは、従来からいろんなことであった。そういう意味で、あまり特異な話でもない。
――行われていないが実施される可能性が高いものに関しては、調査をして、その結果、差止めをした事例はありますか。
事務総長 差止めをするというのは、現に行われているから差し止めるわけで、調査をして、何も行われていなければ、そもそも措置を採る必要性がないと一般的になる。何もやっていないのに命令を出すことは多分ないと思う。
――ということは、(楽天の送料無料が)3月から行われてしまうことも判断の後にあると。
事務総長 少なくとも今、指摘されている個別具体的な件に関しては何とも言えないので、それは分からない。ただ、そういう将来行われることについて、公正取引委員会が情報をいただくことは、一般的にあるので、それはこれまでも必要な調査をしてきたと思う。
――事務総長としてどのようにこのデジタル・プラットフォーマーのこの一連の問題を受け止めていますか。
事務総長 創意工夫、イノベーション、新しいビジネスというのは決して悪いことではないので、それ自体が問題なわけではない。ただ、独占禁止法というのは、公正かつ自由な競争を維持・促進するための法律で、それが損なわれると経済にとってよくないと考えている。公正取引委員会としては、法律と証拠に基づいて、違反があるということであれば必要な措置を採る。違反がなければ、それはそれでむしろ事業者が自由に創意工夫をする。それが、経済の発展につながると考えている。
――今回の件に関して、今後、実態調査を行いますか。
事務総長 実態調査というと一般的な調査で、まずは前提として、個別の事案についての申告については、その有無を含めて基本的にはお答えできない。ただ、いわゆる独占禁止法の違反の疑いについての情報の提供があった場合には、必要な調査をした上で判断する。これは、あらゆる情報についてそうですので、公正取引委員会にそういう情報が来たのであれば、担当部署で必要な調査をする。調査の内容についてはもちろん、事件によって、どこまでするかというのは千差万別だが、必要な調査はすると思う。
――差止めまでいかなくても、事前に指導することはありますか。
事務総長 その案件ごとなのでから、何とも申し上げようがありません。指導というのは公表されないもので、それがあるかないかも申し上げるわけにはいかないと思う。
流通ニュースでは小売・流通業界に特化した
B2B専門のニュースを平日毎朝メール配信しています。