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楽器店市場/2022年度0.6%増の1939億円で2年連続拡大

2023年09月25日 10:30 / 店舗

帝国データバンクは9月20日、「楽器店市場」動向調査2023を発表した。調査によると、2022年度の楽器店市場(事業者売上高ベース)は、前年度から0.6%増の1939億円となった。2021年度の1927億円を上回り、2年連続で前年を上回った。また、売上高の動向では前年度から「増収」となった企業の割合は24%と、2021年度(27%)に比べて縮小したものの、前年度並みを維持した企業の割合が多かった。

<楽器店市場推移>

出典:帝国データバンク

損益ベースでは、2022年度は「増益」が34%を占め、約6割が黒字を確保した。嗜好性の強い楽器では、楽器の仕入れ価格の上昇分を販売価格へ比較的反映させやすく、安定した利益を確保した楽器店が多かった。他方、楽器製造の原料となる金属や木材価格の高騰に加え、輸入品も多いことから物流費の上昇や円安による影響を受けて楽器の仕入れ価格が上昇しており、赤字となった企業も約4割を占めた。調査は、ギターやピアノ、DCM等「楽器」販売を主力とする国内のべ1300社を対象に実施した。

<楽器店業績推移>

出典:帝国データバンク

楽器店市場は、少子高齢化や習い事・趣味の多様化を受けて近年は頭打ちの状態が長く続いてきた。こうしたなか、2020年度はコロナ禍の感染拡大に伴う外出制限の影響で一般顧客向けの店舗販売が大きく落ち込んだほか、付随して運営するケースも多い音楽教室なども休講を余儀なくされたことで、大幅な市場縮小を余儀なくされた。一方、2020年度後半以降は巣ごもり需要の拡大でギターなどの弦楽器や電子ピアノなどの需要が増加したほか、学校での部活動やサークル活動なども再開したことで、ティーン層を中心に販売が増えている。

なかでも、特に2022年度はガールズバンドを題材としたアニメ・マンガ作品『ぼっち・ざ・ろっく!』の影響で、新たにギターを始めるライト層向けの販売が増加した楽器店もみられた。総じて、エレキギターを中心に新しく楽器演奏にチャレンジする巣ごもり特需の発生が、楽器店市場を下支えする形となった。

<ぼっち・ざ・ろっく!>

出典:帝国データバンク

国内最大手の島村楽器によると、2022年度下半期に販売した楽器のうち、前年から最も伸長したのは「エレキギター」で73%増加したほか、アンプやエレキギターなど「バンド関連」楽器が上位を占めた。過去には、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『けいおん!』、『響け!ユーフォニアム』などのテレビアニメ・マンガ作品がきっかけとなり、音楽に興味を持ったライト層向けの楽器販売が好転したケースは多く、楽器演奏人口のすそ野の広がりにも寄与している。

<楽器売れ筋ランキング>

出典:帝国データバンク

コロナ禍で打撃を受けた楽器店市場は、足元では行動制限の緩和や「5類」移行による音楽教室の再開、ライブ活動・コンサート向けの楽器需要が回復傾向にある。また、アニメなどの影響も重なり、楽器演奏に新たにチャレンジする巣ごもり需要などの発生が楽器店市場を下支えし、2年連続で前年度を上回るなど、ポストコロナに向かうなかで市場回復の兆しが見えつつある。

今後は、広がる楽器演奏のすそ野をいかに維持するかが、少子高齢化で長期的な縮小が避けられない国内市場を今後も維持するカギになるとみられる。コロナ禍で販売量が増加したエレキギターは、販売店から「中古販売の在庫がやや多い」といった声も出始めるなど、難易度の高さなどを理由に楽器から離れてしまうケースも散見され、楽器演奏に興味を持ったライトなファン層の引き留めが課題となる。

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