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ヤオコー/川野社長「創業130周年、次の10年見据え長期計画策定」

2020年01月07日 17:15 / 流通最前線トップインタビュー

ヤオコー/川野社長「創業130周年、次の10年見据え長期計画策定」

ヤオコーは2020年、創業130周年を迎える。第9次中期経営計画の最終年度にあたり、メインテーマ「ヤオコーウェイ」の確立の仕上げの年となる。一方で、少子高齢化による人口減少、若年層の来店機会の低下など、さまざまな課題も山積している。今回、ヤオコーの川野澄人社長に、現在の課題と取り組み、次世代を見据えた新規MDの方向性などを聞いた。

店で考えて提案する「個店経営」再評価

――ヤオコーにとって2020年はどんな年ですか。

川野 2020年は、創業130年を迎えます。改めて、社内外にヤオコーの良さを知っていただき、ヤオコーの良いところをより強くする期にしたい。チェーンとしての個店経営という運営の方針を掲げて、企業運営をしていますが、ここ数年、チェーンの部分、標準化を進めてきました。逆に、個店で自分たちで考えながら地域のお客様を見て工夫をして、販売することが、弱くなってきてます。

来期はヤオコーの本来の強みである、個店の良さ、自分たちで考えて、お客様に提案をするということをより強めていきたい。お店がそれぞれ、仮説をもって、思い切って、単品を売り込む。何かを提案することにチャレンジして検証するサイクルを来期はしっかり回せるようにしたい。

――次の10年を見据えた長期ビジョン(計画)を策定するとのことですが、10年後のスーパーマーケット業界をどう想定していますか。

川野 10年後、確実に人口が減って、高齢者の割合が増えることは間違いないでしょう。ただ、団塊の世代の購買力が、落ちてしまう懸念はしていません。一方で、若い世代、特に30代の潜在的な顧客をどう顧客化するのかは、大きな課題です。どう高齢者の需要を捉えながら30代の取り込みを図るのかが、スーパーマーケット業界の大きな課題だと思います。

30代は、ネットが一つの大きな買い物の選択肢となっています。ネット販売への対応は、この10年で、ひとつ形を作らないといけない。

また、我々の主戦場である関東圏においても、どんどんと人口は都心部に移りつつある。川越よりも外側は、すでに超高齢化、人口減少ということが始まっています。同じ埼玉県の中でもエリアによって、状況が異なる。人口が多いエリアでどう商売するのか考える必要があります。

――ネット対応の具体策は。

川野 いま5店舗でネットスーパーをやっています。着実に利用者数は増えているので、ネットで買物したいニーズはあると強く感じています。当社は、ヤオコーのお店を中心に1km~1.5kmくらいの範囲で、お店のお客様を対象にしたサービスという位置づけです。

ただ、物流費も上がり、収益ベースに乗せるのは、非常に難しいビジネスの領域です。一方で、絶対的な売上の分母が伸びてきたので、店舗段階での黒字化は、何となく見えてきました。

<ヤオコーネットスーパーの展開状況>
ヤオコーネットスーパーの展開状況
出典:ヤオコー2020年3月期第2四半期決算説明会資料

――将来的には全店でネットスーパーを導入するのですか。

川野 そうですね。将来的には、全店にいれたいです。お客様のうち、5%ぐらいはお店に近いけど、来れない人がいると言われています。全店、どの商圏でも5%くらいのニーズは間違いなくあるという認識です。ポイントは物流です。

――店舗受取型のネットスーパーはどう評価していますか。

川野 ありだと思います。ただ、ヤオコーとして、来期にやるという話ではない。大きな構想の中で、可能性はゼロではないというレベルです。

――2020年の出店計画は。

川野 今期とほぼ同じ数の出店になります。現在、マーチャンダイジング(MD)の進化という面で、ここ数年停滞した反省があります。新規出店で、旗艦店を出すのは難しいですが、既存店の改装を含めて、新しい売場づくりにチャレンジするお店も作りたいと思います。

――次の旗艦店のイメージは。

川野 基本的に30億円くらいの売上規模がないと、なかなか新しいMDを差し込みにくい。来期の新店では、そこまでの売上を見込めるお店はありません。30億円以上の大型既存店を改装して旗艦店に挑戦します。

いま調理時間を含めて、家庭で料理をするシーンが減ってきてます。一方で、スーパーの惣菜は、手抜き料理ということで、家族に歓迎されない傾向もあります。そこで、旗艦店では、ヤオコーの惣菜が食卓のメインディッシュとして、「今日いいね、嬉しいね」という評価になるような、そんな商品づくりを考えたい。

また、家庭で料理するシーンをどう作ってくかも、重要なテーマです。料理を作ること自体の楽しさを伝えていかなければならない。簡単においしくできる、そういう当社の「クッキングサポート」提案も引き続き行います。

<八百幸成城店>
八百幸成城店

――都心部への出店はどう考えていますか。

川野 都心部への出店は、検討しています。ただ、家賃の競争が激しい状況で、なかなか我々の損益構造だと、立地がとれない状況です。まず、損益構造をどう変えていくのか、しっかり取り組む必要があります。

――都市型小型店の「八百幸成城店」の現状はどうですか。

川野 八百幸成城店の売上は、着実に伸びています。ただ、率直に申しますと、まだまだ収益的には、難しい。今の形で、一気に多店舗展開を進めようという段階ではない。

MDの進化が停滞、素材の売り方に変化が必要

――2019年に積み残した課題として、どんなものがありますか。

川野 MDの進化が停滞してしまったことが反省点の一つです。人手不足の中で、ムリ、ムダ、ムラなく、オペレーションを回すというオペレーション改善にここ数年、注力しました。これまでは、新しいMDを付け加えていくという中で、店舗の作業もその分増えてきたという経緯があります。新しいMDを一旦、ストップをして、作業として減らすことを優先したため、新規MDの取り組みが遅れた面があります。

家庭での調理時間が短くなっていることもあり、素材を販売する生鮮部門には逆風が吹いている。産地の開発に加えて、素材の買い方や料理時間の変化の中で、手に取っていただける素材の提供ができていない。我々として、進化しきれてない、変えきれてないと思っています。

――MDの改革では、ミールキットを開発するのですか。

川野 ミールキットはまだこれからの商品と見ています。ですので、新規MDはミールキットではないと思っています。お客様アンケートをすると、ミールキットは、やっぱり割高という声があります。また、具材を自分で変えたいとか、もっと選びたいといった声もあります。現時点では、割高感があり、調理のシーンに合わないのかもしれません。

<ヤオコーのミールキット>
ヤオコーのミールキット

――食品表示法が4月から完全施行され、製造所の所在地や製造者の名称などの開示が求められます。PB商品の購入のされ方や開発に影響はありますか。

川野 個人的には、お客様の買い方は変わらないと思います。いままで、ヤオコーとして開発してきたプライベートブランド「Yes!」は、製造者を表示しているものもあれば、表示していないものもあります。

一方で、ヤオコーの「Yes!」というブランドで、お客様の信頼の得ていると思っています。「Yes!」というブランドが付いた商品は、安定して品質が高い、味が良くて、手ごろである、あるいは価格が安いという認識を、統一的に持っていただくことが大事だと思います。

働き方改革で業務プロセス整理「本部業務」2割削減

――人口減少を受け人手不足が深刻化しています。働き方改革では、どんな取り組みをしていますか。

川野 我々の働く場としてお店が一番多いので、お店の作業の絶対量を減らしています。例えば、デリカセンターで、サンドイッチを作って、お店に供給しています。セルフ精算レジを導入して、レジの作業、手間を省くということも進めています。また、効率の非常に高いお店を参考に、標準化を図り、社員の労働時間を短くしてきました。

――本社ではどんな改善を進めていますか

川野 業務プロセスの整理をします。無くすもの、減らすものを決めて、必要に応じてシステム化を進めていきたい。特に、サポートセンター(本社)業務から、しっかりと削減します。サポートセンターの業務自体や組織について、来期、集約します。いわゆる本部業務で2割を目安に減らしたい。大きな流れとして、組織を集約化しながら、重複している業務をなくし、お店に力をかけるということです。

<ヤオコーサポートセンター(本社)>
ヤオコーサポートセンター(本社)

――次の10年の長期ビジョン(計画)のイメージは。

川野 次の10年の長期ビジョンは、若手社員の育成を兼ねて、策定します。私は1975年生まれなんで、団塊ジュニアのちょっと下の世代です。団塊世代は、あと10年くらいは元気に買い物をしてくれる。団塊ジュニアは私のちょっと上くらいの世代で、買い物行動もそんなに変わらない。うちの妻が急にネットにハマって、ガンガンネットで買うことは、まず考えずらい。

一方で、団塊ジュニアの下の世代は、買い物行動が非常に多様化している。そこで、いま働いている30代前半とか、20代後半のメンバーを集めました。彼らのニーズに応えるような店って、どういうお店なのということで、考えさせています。

彼らの話を聞くと、「枝豆はゆでません、冷凍食品の方が旨いし安い、いつでも食べたい量だけ食べられる」といった声もあります。そういう冷凍食品への抵抗感がないとか、若い世代の意識の変化を考えてもらっています。いま、君たちが買い物をしたいお店を作ってくれと言っています。

■川野澄人(かわのすみと)氏プロフィール
1975年10月27日生まれ(埼玉県出身)
略歴
2001年3月:新生銀行退職
2001年4月:ヤオコー入社
2009年1月:グロッサリー部長
2009年6月:取締役
2009年12月:経営改革推進本部副本部長
2011年3月:経営改革推進本部副本部長兼営業統括本部副本部長
2011年6月:常務取締役
2012年2月:代表取締役副社長
2013年4月:代表取締役社長(現任)
2017年4月:エイヴイ代表取締役(現任)
2017年4月:エイヴイ開発代表取締役社長

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