流通ニュースは、流通全般の最新ニュースを発信しています。





島忠・岡野社長インタビュー/ニトリとのシナジーでPB・出店強化

2024年01月10日 14:00 / 流通最前線トップインタビュー

https://www.ryutsuu.biz/report/p120611.html

島忠は2021年のニトリホールディングスとの経営統合後、さまざまな実験を経て、PB強化による「安さ」の打ち出しと「島忠らしいホームセンター」の確立を目指している。岡野恭明社長に、ニトリホールディングスとの経営統合後の島忠の変化、商品開発、今後の出店戦略について聞いた。(取材日:12月5日、於:ホームズ横浜鶴見店)

日用品・アパレル・家具のPB開発を強化

――経営統合後、一番大きな変化を教えてください

岡野 当社がもっとも変わった点は、プライベートブランド商品(以下:PB)の開発を強化したことです。現在、日用品、家具、建材、アパレル、自転車などさまざまなカテゴリーの約2400アイテムを販売しています。これは、経営統合したことによる大きな成果です。島忠だけでPBを開発したとしたら、このスピード、商品数、価格、品質を実現することは間違いなくできなかったでしょう。

――PB開発に経営統合のシナジーが発揮されたのですね

岡野 以前の当社はナショナルブランド商品(以下:NB)の取り扱いが中心でしたので、バイヤーはベンダーの提案を受けて検討する、海外での交渉もベンターに任せるといった体制になっていました。国内品でもメーカーから提示された商品、海外品でもベンダーから提示された商品を、取り扱うかどうか決めるというビジネスモデルでした。

統合後は、商品部の機能を改革し、バイヤーが商品開発の企画や売場提案を行い、マーチャンダイザーが海外の工場まで出向き、素材調達をするなど役割を明確にしました。お客様のニーズに対応するさまざまな商品を開発しています。直近ではバイヤー成果発表会を開催するようになり、実験結果をシェア、成功パターンを各店舗へ水平展開をしています。

――PBの価格帯について教えてください

岡野 シリーズ累計販売数量約53万個のヒットとなったペットシーツをはじめ、ボディソープ、芳香剤といった低価格のものから、中~高価格帯の家具まで幅広く取りそろえています。

<オレンジ色で売り場をジャック>
オレンジ色で売り場をジャック

以前、お客様は島忠に対し「(価格が)高い」というイメージをお持ちだったかもしれません。このイメージを払しょくするため、低価格のPBをコーポレートカラーであるオレンジ色を使って目立つように集合陳列したり、商品のPOPは価格を強調したりと新しい「安い島忠」のイメージづくりを推進しています。

現在、PB商品の売り上げ構成比は15.65%(ニトリ商品含む)ですが、将来的には40%以上に拡大する計画を立てています。

<商品のPOPは価格を強調>
商品のPOPは価格を強調

――ニトリとの共同開発アパレル、作業着もありますね

岡野 島忠・ニトリ共同開発のカジュアル衣料「Neasy(エヌイージー)」は、大人から子どもまで、男女向けに用意しています。下着や靴下、ちょっとそこまで出かけられるワンマイル着、靴、アクセサリーまでラインアップしています。398円から買えるインナーなど、低価格な普段着を提供しています。

<Neasyを強化と岡野社長>
Neasyを強化と岡野社長

ニトリグループのもう一つのアパレル「N+(エヌプラス)」は大人の女性向けアパレルですので、「Neasy」はホームセンターでちょっとした普段着が何でもそろうPBとして差別化しています。まだ全店では導入していないのですが、2023年12月に新規オープンした「ホームズ横浜鶴見店」では、大規模なコーナーを設置しました。

同店ではプロ向けの作業着も充実させており、1階正面に「Neasy」・作業着を展開しています。作業着を買いに来て、普段着をついで買いされる男性も多いですので、衣料品は男性売り上げ比率が高くなっています。

そのほか、プロ向け商品では、1800円のPB安全靴など、安くて、便利な商品を多数開発していますので、ぜひお客様に手に取っていただきたいですね。

<1800円のPB安全靴も>
1800円のPB安全靴も

――家具のPBについて教えてください

岡野 ニトリグループ全体の家具の商品構成を見たとき、ニトリが中価格帯以下は網羅していますので、島忠は、中~高価格帯を中心に開発しています。天板が伸長式のセラミック製ダイニングテーブル、撥水加工をしたソファなどヒット商品も生まれています。

<伸長式のセラミック製ダイニングテーブル>
伸長式のセラミック製ダイニングテーブル

島忠はニトリの側に出店しても、共存できると思っています。島忠らしく、中価格帯以上のPB家具の開発だったり、コーディネートをしっかりしながら、空間を素敵にできるような見せ方であったり、品ぞろえであったりというところを意識していきたいと思っています。

PBは、何よりも安く、他のお店にはない商品であることに加え、当社の採算も改善するため充実させていきますが、NBを買いたいお客様も多くいらっしゃいますので、PBに偏らない品ぞろえが必要です。

NB、島忠PB、ニトリPBと豊富に取りそろえた、さまざま商品から選べるのが、島忠の強みだと思います。

「ニトリホームズ宮原店」での実験成果を生かし商品構成を再検討

――「ニトリホームズ宮原店」ではニトリPBを増やしましたね

岡野 経営統合後、「ホームズ宮原店」から「ニトリホームズ宮原店」に大幅リニューアルした宮原店では、特にホームファッションを強化し、その分効率が悪いホームセンターの商品をだいぶカットしました。ニトリPBの効果などで、店全体での売り上げは増加したのですが、ホームセンター商品の数字は厳しかったです。

島忠は、ホームセンターが売り上げの7割を占めていますし、お客様にとっては、いざ困ったときにホームセンターなら、必要なものがあるだろうというのが、ホームセンターのよさなのですが、そこを削ってしまったことになりました。そこで、宮原店のやり方をそのまま既存店に展開するのは止めました。改めてホームセンターらしさ、ホームセンターの強み、他社に負けないホームセンターというものを研究し直して、もう一度商品構成をやり直そうということで、さまざまな実験をずっと繰り返しています。

――ニトリと島忠の顧客ニーズに違いがあったのですね

岡野 やはり、お客様は島忠とニトリを使い分けされて、お店を選んで買っているということを改めて感じました。ニトリと島忠は、マーケットで共存していたということに気づきました。

――ニトリPBを増やすだけでは顧客ニーズに対応できないと

岡野 もちろん、お客様は安さを求めています。しかし、使い慣れたNBを買いたいという需要もありますし、ホームセンターらしい商品を減らしてしまったことで、顧客ニーズに対応できませんでした。そこで、NB、PBの商品構成、価格、商品陳列、販促物、什器などお客様が求めているホームセンターとは何か、実験を繰り返しました。

――どのような商品構成に変えたのでしょうか

岡野 ホームセンターには、ドラッグストア、コンビニエンスストア、スーパーマーケットにない商品が求められています。また、コロナ禍を経て、生活者は1カ所でさまざまな買い物を済ませたいというニーズが出てきています。当社は経営統合後、「衣食住を兼ね備え、ワンストップでお買い物できる店舗」を目指し、日用品、家具、食品、医薬品・コスメがそろう店舗づくりを行っています。2023年12月にオープンした「ホームズ横浜鶴見店」にこれまでの実験結果を反映しました。

島忠らしさを模索した「ホームズ横浜鶴見店」

<ホームズ横浜鶴見店は実験店と岡野社長>
ホームズ横浜鶴見店は実験店と岡野社長

――「ホームズ横浜鶴見店」の売り場づくりについて教えてください

岡野 生活用品と家電を組み合わせて陳列したり、TPOS(Time、Place、 Occasion、Lifestyle)に合わせて商品を配置したりと、従来のカテゴリー一辺倒とは違う売り場づくりを進めています。

また、寝具などは実際使ってみないと良さがわかりませんので、さまざまな価格帯のマットや枕を体験しながら選べる売り場づくりも行っています。

――コーディネートを強化した売り場について教えてください

岡野 シンプル、モダン、ノルディック、ナチュラル、ナチュラルビンテージの5つのテーマを設定しました。ニトリの家具はシンプルなものが多いですが、島忠はPBに加え、NBも多く取りそろえていますので、多様な組み合わせで、「理想のお部屋」を追求できます。

<ナチュラルビンテージを提案>
ナチュラルビンテージを提案

そのほか、ペット用品、リフォームコーナーなどを強化し、「ホームズ横浜鶴見店」での実験をもとに、ホームセンターの標準店づくりを行っていきます。

――ホームセンターの標準店とは

岡野 売り場面積は約4958~6611m2クラスで、次の戦略の柱となるホームセンターの標準を作っている最中です。「ホームズ横浜鶴見店」で、値段、商品構成、売り場づくり、什器などの実験を行い、次の出店では新たな標準店でいきたいと考えています。

――理想のホームセンター像を教えてください

岡野 DIYが強いだとか、園芸グリーンが強いだとか、そういった特徴は出していく必要はあると思いますが、やはりドラッグ、コンビニ、スーパーなど他の業種にはないものがしっかりあって、安くて、ほしいときにほしいものがちゃんと取りそろっている。そういう店が理想ですね。

――既存店の改装は進んでいますか

岡野 ニトリは、チェーンストア理論を実践して、小売業の中でも一番成功している企業のひとつです。ただ、ニトリのやり方が、そのままホームセンターに通用するのかというとそうではありません。ホームセンター流のチェーンストア理論があるということは、実験を繰り返してきて、よくわかりました。

先ほども申し上げましたが、販売効率の悪いものを全部カットしてしまうと、顧客ニーズに応えきれません。プロ向け需要が高かった店舗では、職人の方にとってみればもの足りないお店になってしまいます。取り扱いから外して、お客様からおしかりを受けたこともあります。経営統合当初は、商品をカットしすぎた傾向にありました。

現在は、お客様が島忠に求めておられるホームセンター商品、プロ向け商品の戻すべきものは戻そうという方向性をとっています。もともとプロ需要が高かった店舗は、再度プロ向け商品を強化し直しているところです。

ホームセンターの改装は外観をきれいにしたり、エスカレーターなど設備を充実させたりすることも大事ですが、やはり品ぞろえ、什器のあり方、展示方法、導線の改善などのお客様のニーズに対応していることが重要ですね。

ニトリグループとのシナジーを生かし、全国主要都市に出店へ

――どのエリアに新規出店を考えていますか

岡野 ニトリグループとのシナジーを生かし、全国で出店を検討中です。今、いくつか候補地もあります。ニトリグループには自社物流網がありますので、島忠のドミナントである首都圏にこだわらず、全国の主要都市に出店したいと考えています。

小・中・大と規模別の店舗パターンを作り、よい物件があれば、物件の規模に合った店舗を出店していきます。

――グループシナジーについて教えてください

岡野 例えば、中国の工場で作ったPBはニトリのPBと混載し、物流費を下げるといったグループのシナジーも生まれています。

平台はニトリのものにすべて入れ替え、コストダウンとお客様が選びやすい売り場づくりを推進しています。什器を入れ替えたことで、見た目とともに、作業効率もあがっています。
販促ではアプリを強化し、顧客データ分析を行っています。

<岡野社長と須藤文弘会長>
岡野社長と須藤会長

――新しい島忠のアピールポイントは

岡野 とにかく安くなりましたので、ぜひ一度、お買いものに来ていただいて、その安さを実感していただきたいです。島忠PB、ニトリPB、NBと商品の選択肢も広いですし、新しくなった島忠で、お買いものを楽しんでいただきたいと思います。

取材・執筆 鹿野島智子

■岡野恭明氏 略歴
1972年12月25日生まれ
2003年7月:島忠ホームズ入社
2007年9月:島忠入社
2009年8月:家具営業部長
2012年7月:人事部長
2015年9月:取締役総務部長
2016年7月:取締役家具営業本部長
2017年8月:取締役社長室長
2017年11月:代表取締役社長(現在に至る)

■島忠の関連記事
島忠/須藤会長「実験店・ホームズ横浜鶴見店オープン、新規出店は全国へ」

関連記事

トップインタビュー 最新記事

一覧

最新ニュース

一覧