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インタビュー/大創産業 八島淳シニアバイヤーに聞く日本の加工食品の可能性

2024年04月05日 10:00 / 流通最前線トレンド&マーケティング

日本への旅行が世界各国で人気となると同時に、諸外国において、日本の食への関心も高まっている。海外で25の国と地域に約990店舗を出店している大創産業は、日本の食品加工メーカーと協力し、海外マーケットをさらに開拓する計画を推進している。グローバル商品本部 グローバル食品部の八島淳シニアバイヤーに、日本の加工食品の海外展開の可能性について聞いた。

大創産業 八島淳シニアバイヤー

日本の加工食品で海外の他社店舗と差別化

――なぜ、日本の加工食品メーカーへのアプローチを図っているのですか

八島 日本に旅行する人が増え、日本の食品に対する海外の方の評価は、かなり高まってきています。日本の食品が海外の当社店舗において、同じようなものが手軽に買えるということが、他のワンプライス店舗との差別化、集客向上につながると考え、加工食品メーカーとの協力関係を深めています。

現在、日本の加工食品メーカー約200社と取引があり、約1600アイテムを日本から輸出しています。さらに、取り扱いアイテムを増やしたいと考えています。

――海外の店舗で日本の食品への関心が高まっていると

八島 海外のお客様は、日本食品に対する興味は非常に高くお持ちです。日本の伝統的な素材、技術、文化、そういうものに対して他にはない新鮮味を感じられていますね。おばあちゃんの手作りの味といった、日本で昔からある食卓メニューはヘルシーなイメージもあります。

海外の方はネット等の情報をいち早く入手され、日本のさまざまな素材の産地状況や食品の製造過程などをご存じの方も多いですね。日本の安心安全な食品がどういう工程で作られているか、そのこだわりについて調べ、非常に関心を持たれています。

<お土産に日本の食品が人気>
お土産に日本の食品が人気

日本に旅行して、当社の店舗でお土産として大量に食品を買って帰られる方も多いですし、食への関心の高まりを実感しています。

――海外でどのような商品が人気ですか

八島 やはり、抹茶味、梅味、ワサビ味といった日本らしさを感じるお菓子、しょうゆ、ソースなど調味料の人気があります。アメリカの方は、ソフトキャンディーといった甘いものを好まれますね。ブラジルでは、カレーの販売を強化していまして、とても人気があります。どの国でも、日本で買っておいしかった食品を、自国でも気軽に買えると好評です。

――海外展開の状況について教えてください

八島 現在25の国と地域に約990店舗を展開しています(2023年12月現在)。北米に125店舗、南米に153店舗、アジアに576店舗、オセアニア42店舗、中東94店舗を出店しています。そのうち、13の国と地域で食品を取り扱っています。

――海外の類似業態店舗とダイソーの差別化はどう図っていますか

八島 他社と当社では、確実に品ぞろえが差別化になっていると思います。例えばアメリカの均一ショップなどでは、昔からなじみのある商品が中心であり、品ぞろえ自体に目新しさは乏しいと感じます。

日本で100円ショップを展開している当社としては、その店舗にしかない、ニッチな商品や、容量が少なめで使い切りやすい食品、かわいい小物などが安く買えるというのが魅力です。

<食品が他社との差別化に>
食品が他社との差別化に

海外の一般的なスーパーマーケットや、均一ショップで販売されているような、なじみの商品とは違う、目新しい商品が並びます。「こんなものは見たことがない」「使ってみたら非常に便利だ」というような意見をいただくことが多いですね。

――そこで、日本の加工食品メーカーとのコラボに可能性を感じているわけですね

八島 やはり、当社独自の品ぞろえで、海外のお客様にも喜んでいただくには、食品のラインアップ強化は欠かせません。海外では、例えばアメリカですと220~230円程度の基本均一価格がありますが、価格の幅も広げており、日本より少し価格帯を広く設定しても、良い商品なら売れると思われます。

輸出ノウハウなどを大創産業がサポート

――食品メーカーが大創産業と組むメリットは

八島 一部の食品メーカーは独自の輸出ルートをお持ちだと思いますが、食品を輸出する際にいろいろと越えないといけないハードル(輸入規制など)がありますが、食品メーカーにとって、どこに相談すればいいのかわからない方もいらっしゃると思います。

英語などの現地語への対応の不安や、多方面に相談して、食品輸出に関するホームページを見ても、難しくてよくわからないという声をよく聞きます。当社には長年の輸出や海外の食品規制への対応のノウハウがありますので、情報を共有し、アドバイスなどをして差し上げることが可能です。

<輸出ノウハウなどを共有しながら協業していくと八島氏>
輸出ノウハウなどを共有しながら協業していく、と八島氏

――海外の食品規制は厳しいのですね

八島 例えば、アメリカでは食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)を中心に食品輸入管理されており、これに関しての多くの輸入ガイドラインが定められているので、それを全てクリアしないといけません。

ある程度専門的な知識が必要ですが、食品の日本からの輸出に関して関連情報を得る機会はあまり多くなく、高いコストもかかります。

私どももいろいろ調べたり、米国の自社店舗と情報交換したりしながら、さまざまな輸出入の規制をクリアできているのかどうかということを確認していますが、メーカーにおいて輸出に関する業務を自前で対応することは難しい部分も多いとと思います。日本では認められている基準も海外では規制対象となるケースも多くあり、使用成分などを詳細に公開しなければならないなど、食品表示の課題などもあります。

各国の食品に関する輸入規制だけでなく、例えば、船で輸送する場合に、賞味期限を過ぎたり、溶けたり、品質が劣化したりなど物流の問題など、越えなければならないハードルは非常に多い。当社で組むことで、そういったハードルを越える負担を軽減できるメリットがあると思います。

――商流から物流までフォローすると

八島 当社の輸出拠点となる日本国内の物流センターから各国の物流拠点へ輸送し、現地各店舗に配送します。

また、商品のトレーサビリティの観点でも、当社の海外店舗に納品し、販売することが明確なので、メーカーにとって、自社の製品がどこで誰に売られているのはわからないということがありません。

<商流から物流までフォローと八島氏>
商流から物流までフォローと八島氏

メーカーとしては、商品を卸業者などを通じての輸出にあたり、その最後にどこに商品が行くのかが分からないと言うことに対して、多くの不安を持っていらっしゃいます。海外に輸出した商品の追跡はなかなか難しいですし、メーカーとして、この商品の品質保証の必要がありますので、不安を抱えられていて、なかなか一歩が踏み出せない。そういう方々でも、ご相談に応じることができると思います。

日本の食品メーカーの海外進出を応援

――メーカーからの引き合いも増えていますか

八島 先日、初めてスーパーマーケット・トレードショーに参加しました。メーカー向けに、「当社と海外マーケットを開拓しませんか」ということをアピールしたのですが、「大創産業ではそんなこともやっているのか」と驚かれましたし、多くの食品メーカーが海外に販路を広げたいと思っていらっしゃることを実感いたしました。

企業経営の世代交代の中で、会社を引き継ごうとしてされている経営者が自社の経営資源をどのように継承し、日本だけでなく、どうやって海外に新規のマーケットを広げようかと考えられている方も多いのではないでしょうか。

先ほども申し上げましたが、当社の海外店舗では基本の均一価格だけでなく、ある程度価格帯もバラエティーを持たせたいと考えています。

メーカーが自社の自慢の商品を海外に出したいというお気持ちがあれば、当社にご相談いただければ、どの国がいいとか、どこにどんな商品をどれくらい輸出できる可能性があるかなど情報共有できると思います。

海外に関わらず、当社の商品は顧客から「私にぴったりの量でした」とおほめいただくことがありますが、海外のお客様も日本の調味料を試してみたい、自分としての適量商品があれば、使ってみたいと思われる方も多いでしょう。

例えば、しょう油をネットで見て、おいしそうで使ってみたいけれど、日本食スーパーにある一般的な商品ではちょっと量が多い。当社の店舗なら、小容量の商品があるので、使ってみようか、買ってみようかと思われ、日本食のエントリー層を開拓できる可能性もあります。

もちろん、メーカーも当社以外にさまざまな販路を試されると思われますが、使いきれる適量、小容量で生活者にアプローチするのに、当社と協業するメリットがあると思います。

――メーカーの皆様にメッセージをお願いします

八島 当社との協業が、メーカーの販路拡大の一つのきっかけになればと考えています。私も食品関連業務にずっと携わってきているので、日本の食品メーカーには、さらに元気になってもらいたいと思っています。

海外の方は、農産物一つとっても、日本ではどれだけ大切に作物を作っているか、収穫までどれだけ手間暇かけているかを知って、これらのことなどに対する関心が高まっています。ていねいで繊細な日本のものつくりに対して感動されるのですね。

また、特に伝統食材の豆腐、漬物などは日本の若年層の関心が薄れてきていると言われていますが、海外では逆に興味がある方が増えています。伝統継承という意味でも、この興味を持たれている海外のお客様に対して、アプローチを強めていくというのは自然の流れではないでしょうか。当社とともに、海外マーケットに展開することで、少しでも、日本の食品メーカーの輸出ビジネスを盛り上げるお手伝いができればと考えています。

<日本食品の良さを、海外のお客様に手軽に感じてもらいたいと八島氏>
日本食品の良さを、海外のお客様に手軽に感じてもらいたい

■八島淳氏略歴
チェーンストア業界で1989年より29年間、食品販売、開発部門に携わった後、2018年に大創産業 食品部に入社

取材・執筆 鹿野島智子

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