イオンのベトナム戦略4/ミニストップ183店舗展開、店内フード・ドリンクを強化
2024年10月25日 11:00 / 流通最前線トレンド&マーケティング
イオングループのミニストップはベトナムで2024年9月末現在、183店舗を展開している。店内デリカを武器に、郊外にも出店することで店舗網拡大を図っている。ミニストップベトナムの大嶋伸夫社長は「ベトナムにおいて、個店モデルの進化、出店加速、後方支援を切り口に、成長していきたい。商品では店内加工の飲料、おでん、スイーツなどが人気で、これら商品の磨きこみを図る。日本のミニストップとまいばすけっと両方の特徴を備えた店舗モデルの構築を目指す」と意気込む。
ミニストップは、2015年双日との合弁でベトナムへの出店を本格開始した。ホーチミンの183店舗のうちFC出店は8店舗で、ほぼ直営店という構成だ。
なお、ホーチミンにおける競合店(ミニストップ調べ、2024年7月末)では、サークルKが209店舗、GS25は226店舗、ファミリーマート121店舗、セブンーイレブン107店舗となっている。
ミニストップベトナムの従業員数は本社正社員171人・パートタイム4人の175人、店舗勤務正社員701人・パートタイム2017人の計2893人(2024年9月)。日本人は12人(派遣元:ミニストップ7人、双日4人、まいばすけっと1人)。
大学・小中学校内、またその周辺に出店していることが多いため、現在の客層は若年層、特に学生が多い。現在、従来のターゲットである15歳~30歳未満に加え、同国の経済成長に合わせ、増加する中間所得層を取り込み、客層拡大を図っている。
客層拡大の武器として、ミニストップが取り組んでいるのが新モデル店舗の構築と得意の店内ファストフードの強化だ。
大嶋社長は、「ホーチミンの日常生活に必要な商品が、SM価格で買える『ここでいい』、かつ、圧倒的においしいドリンク・ファストフードが買える『ここがいい』店舗を目指している。日常品とともに、新規性・ミニストップにしかない商品で、トラディショナルマーケットから顧客を取り込みたい。
従来は大学の中、小中学校の近くに出店していたため、昼休みに食事を買って、店内飲食する子どもたち、学生たちが中心だった。これからは、40歳以上の顧客を増やすことも重要。生鮮を増やし、ワンストップショッピングできる店舗に変えていく。
出店エリアはホーチミンの中心部から、ローカルエリアへ拡大している。ホーチミンの1区・7区、外国人の多いレジデンスの1階などに進出してきたが、これらの地域は家賃が高く、出店できるエリアが限られる。ローカルの路面店も増やさないと店舗を増やせない」と話す。
生活圏約300m内のバイク・徒歩で来店する顧客がターゲットのため、店舗は間口の狭い都市型店舗(間口4~6m、店舗面積約80m2)から、間口を広げ、セットバックし敷地内にバイクを止めやすいよう、店舗を改革している。
大嶋社長は「ホーチミンでも中心部を離れた、ローカルエリアだとバイクでの来店比率が7割で、バイクが止めやすくないと顧客が来ない。実験店で、店舗の間口広げたところバイクでの来店者が増え、1日400~500人バイクで来店している」と話している。
また、商品面は、「価値軸」と「価格軸」に分けて強化している。
「価値軸」では、ミニストップの武器である店内加工のファストフードを充実させている。レジ横のデリケースには、カップ入り鳥皮チップスなどスナック、おでん、中華まん、ベーカリーがそろう。1万~1.5万ドンのソーセージなどのシンプルな串が売れ筋だ(1万ドン=約60円)。
最下段はベーカリーを並べ、トースターで焼いた「クロワッサン」「コーヒーパン」「韓国パン」などでき立てを提供。おでん、中華まんは登場以来根強いファンがいるという。
ソフトクリームとフルーツを組み合わせたスイーツといった商品も販売している。
昨年からドリンクを強化し、一部店舗でレジにドリンクカウンターを設置した。ソフトクリームや冷凍果肉入りのデザート飲料、大容量のドリンクなどを展開している。ドリンクは強化の結果、前年比1.7倍の売り上げとなっており、ティーメニューの充実が功を奏したとみている。
おでんは単独で楽しめるだけでなく、エースコックとコラボし、カップ麺におでんのつゆを入れて2度楽しめるメニューも提案している。
価格面を意識し、トップバリュを積極導入。生鮮、グロサリー、ノンフードなど価格訴求した商品も展開している。カットフルーツ、バナナが人気のため、今後の即食需要の増加を見据え、カットサラダ、カット野菜の品ぞろえも拡充する計画だ。
さらに、直営での店舗展開のため、店舗レベルを維持向上させる後方支援も重視している。
日本のまいばすけっとのノウハウを採用し、1人の店舗責任者が複数店舗を管理するスーパーインテンデント制(以下:SI制)を拡大、業務効率化を図っている。SI制の店長は現状24人で、今期末までに60人に延ばす。
イオンディライトベトナムとの協業で、省人化とセキュリティー強化のため、バイクキーパー(駐輪システム)も導入。イオンディライトベトナムの高見尚代社長は「ベトナムでは店舗の前に、警備員がいて、バイクの盗難に目を光らせているのが一般的。今のベトナムは人手不足ではないが、いずれ警備員の高齢化、人件費高騰が見込まれる。将来を見据え、ミニストップ店舗にバイクキーパーを導入し、遠隔管理でトラブルを防止できるかなど検証している」と説明している。
また、温度・品質管理を徹底し、安定した商品供給を担保するため、物流面では双日のバリューチェーンを活用している。10月からビンズン省からロンアン省へディストリビューションセンターを移設した。今後の出店強化、商品の多様化・物量増に耐えうるSCM構築を進めている。
<ロンアン省の新DC>
(了)
取材・執筆 鹿野島智子
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- ベトナム基礎知識(出典:外務省、JETRO HP)
- 首都:ハノイ
- 面積:32万9241平方キロメートル
- 人口(2023年、越統計総局):約1億30万人
- 平均年齢:約31歳(2021年)
- 民族:キン族(越人)約86%、他に53の少数民族
- 言語:ベトナム語
- 宗教:仏教、カトリック、カオダイ教など
- 主要産業:農林水産業(GDPに占める割合11.96%)、鉱工業・建築業(同37.12%)、サービス業(同42.54%)
- GDP(2023年、越統計総局):約4300億米ドル(1京222兆ドン)
- 一人当たりGDP(2023年、越統計総局):4285米ドル(1億190万ドン)
- 経済成長率(2023年、年平均、越統計総局):5.05%
- 物価上昇率(2023年、年平均、越統計総局):3.25%
- 日本からの投資(2023年、越計画投資省):65.7億ドル(認可額、株式投資を含む)
- 在留邦人数(外務省海外在留邦人数調査統計):1万8949人(2023年10月現在)
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