イオンのベトナム戦略2/GMS・ホームコーディ・アパレルSPA強化、業態開発で事業拡大
2024年10月11日 17:30 / 流通最前線トレンド&マーケティング
イオングループは、ベトナムでもGMS「イオン」を8店舗運営している。イオンの古澤康之 執行役 ベトナム担当は「食品・衣料・日用品がワンストップでそろい、家族で遊べるGMSはベトナムでは一般的ではないため、ニーズがある。まだまだ、ローカルマーケットでの買い物が一般的な社会で、近代的な小売りを提供する。GMSには、ただ安いだけでなく、楽しさや特別な価値も必要だ。専門店を強化し、一般的な売り場を減らして、専門店にフォーカスした店づくりを行っている」と話す。連載第2回では、主に「イオンモール タンフーセラドン」内のGMSと専門店を紹介する。
「イオンモール タンフーセラドン」内のイオンでは、1階に食品・フードコート、2階に衣料品、3階にホームコーディの売り場を展開している。
1階食品売り場では、食品が豊富にそろう。
都市部のベトナム人には、健康志向が広がっており、オーガニックの野菜、カットフルーツコーナーも設置している。
トップバリュコーナーも展開している。なお、トップバリュの食品はベトナム開発した商品を約800SKU販売している。
トップバリュは、「グリーンアイ」のタスマニアビーフといった生鮮、冷凍食品、加工食品など幅広くそろう。
ベーカリー売り場も充実しており、食パン、バゲットといった定番から、菓子パン、オリジナルのパンナコッタなどを提供している。
築地の中島水産のすしコーナーも人気だという。
すしは1個から選べるコーナーもあり、1個1万4700ドン(約88.2円、1ドン=0.006円で計算)程度で買える。
また、タンフーセラドン内のイオンにはセントラルキッチン機能を持たせ、Citimart、ミニストップに弁当、たこ焼き、すし、お好み焼きなどを供給している。
古澤執行役は「デリカは若年層、富裕層に好まれる商品。ハノイのマックスバリュのデリカ売り場は、イオンモール ハドンで製造したものを販売している。ホーチミン市もイオンモールタンフーセラドンのGMSのデリカ製造機能を利用し、グループ各店に提供している。今後開発予定の小型のGMSなど、キッチン機能を持てない店にも供給し、店舗の効率化を図っていく」と説明している。
さらに、イオングループのベトナム戦略3本柱、店舗・業態開発、デジタル・金融事業、商品開発・物流構築のうち、店舗・業態開発では、さまざまな専門店の開発を進めている。
家具・日用品の専門店「ホームコーディ」、ファストファッションの「MY CLOSET」、アミューズメント事業などは、イオングループ以外の店舗への出店も行い、ビジネス拡大を狙う。
「ホームコーディ」は、家具、日用品、キッチン用品などを展開。特に、キッチン用品で家具・日用品の他社との差別化を図っている。一部商品は、1階の食品売り場にも並べ、使い方をトータルで提案している。
「ホームコーディ」商品は以前、大部分を日本から輸入していたが、現在は4割がベトナムで開発した商品となっている。ベトナム人の家族構成は4~5人が一般的なため、大き目のソファが必要とされたり、ベッドもクイーンサイズなど大きいサイズが好まれたりと日本で売れる商品と傾向が違うため、現地のし好に対応した商品構成に切り替えた。
16~25歳向けファストファッション「MY CLOSET」は、イオングループのSPAとして約2年前スタート。イオン色をあえて出さず、韓国系のコンサルタントを入れ、トレンドをリサーチし、開発した商品を販売している。
<母親世代が着られそうなポロシャツも>
※24万4400ドン(約1465円、1ドン=0.006円で計算)
ファストファッションブランドのように約2カ月に1回転の割合で、商品を投入し、旬のファッションを提案している。外資系・日系ファストファッションより3割安く、ベトナムのカジュアルブランドより1割安い価格帯を目指している。現在は服のみだが、今後、シューズ、バッグ、アクセサリーも開発し、トータルコーディネートできるラインアップをそろえる計画。若年層を狙ったブランドだが、母娘で買い物にくる生活者もおり、幅広い層に購入されているという。
アミューズメント事業のイオンファンタジーは、ベトナム全土でプレイグラウンドの「キッズーナ」「ダイナレックス」、「モーリーファンタジー」など38店舗を運営している。イオングループ内の出店は18店舗、その他20店舗はビンコムグループ、ロッテグループなど他社のSCに展開している。
イオンファンタジーベトナムの築山穣 副社長は、「ベトナムは気温が高く、公園が少ない。しかも公園は健康器具の設置が中心で、子供向け遊具が不足している。また、道路はバイクなど通行量が多く、他のASEAN諸国同様、室内遊技場の需要がある」と同国の市場を分析する。
しかし、他社の参入も多く、1つの商業施設に複数室内遊技場が出店する場合もあり、市場の競争は激しいという。そこで、他社はSNS映えするデザインを意識しているが、同社はイベントやスタッフが子どもとどう遊ぶかといったサービス面で差別化を図っている。
ハノイ・ホーチミン両都市と周辺に重点的に展開してきたが、9月21日「イオンモール フエ」に新店舗をオープンし、中部エリアはイオンモールの進出に合わせて出店する。現在、南部のメコンデルタエリアの中規模都市でも、出店可能性を調査中だ。
そのほか、専門店では、「グラムビューティーク」「ペテモ」「イオンバイク」なども展開している。
これらの業態もグループ外への出店を積極的に検討しており、事業拡大を急ぐ。
取材・執筆 鹿野島智子
■イオンの関連記事
イオンのベトナム戦略1/マルチフォーマットで店舗網強化、中部にSCを初出店
イオンのベトナム戦略3/小型スーパー「シティマート」で都市部の中間層・若年層を狙う
イオンのベトナム戦略4/ミニストップ183店舗展開、店内フード・ドリンクを強化
- ベトナム基礎知識(出典:外務省、JETRO HP)
- 首都:ハノイ
- 面積:32万9241平方キロメートル
- 人口(2023年、越統計総局):約1億30万人
- 平均年齢:約31歳(2021年)
- 民族:キン族(越人)約86%、他に53の少数民族
- 言語:ベトナム語
- 宗教:仏教、カトリック、カオダイ教など
- 主要産業:農林水産業(GDPに占める割合11.96%)、鉱工業・建築業(同37.12%)、サービス業(同42.54%)
- GDP(2023年、越統計総局):約4300億米ドル(1京222兆ドン)
- 一人当たりGDP(2023年、越統計総局):4285米ドル(1億190万ドン)
- 経済成長率(2023年、年平均、越統計総局):5.05%
- 物価上昇率(2023年、年平均、越統計総局):3.25%
- 日本からの投資(2023年、越計画投資省):65.7億ドル(認可額、株式投資を含む)
- 在留邦人数(外務省海外在留邦人数調査統計):1万8949人(2023年10月現在)
流通ニュースでは小売・流通業界に特化した
B2B専門のニュースを平日毎朝メール配信しています。