セブン&アイ/買収提案のクシュタール社が記者会見、現状に不満も敵対的買収は否定
2025年03月13日 16:12 / 経営
セブン&アイ・ホールディングスへ買収提案を行っているカナダのアリマンタシォン・クシュタールが3月13日、東京都内で記者会見を行った。
「日本のセブンーイレブンのビジネス、そのワールドクラスの事業運営には変わることなく常に感銘を受けている」──。
冒頭、クシュタール社のアラン・ブシャール創業者兼会長は、セブン&アイの事業をこのように評価した。
その一方で、買収提案からこれまでの経緯については「7カ月くらいの間セブン&アイとの間で友好的な話し合いを試みてきたが、規制関連に限定されたものにとどまっており、幅広い案件の話し合いに至っていないことを残念に思っている」と不満を表した。
その上で「引き続き友好的かつ相方に合意可能な取引を求めている」と言及。敵対的買収については「私たちのスタイルではない。そういうことは検討していない」と述べ、あくまでも双方が合意の上で友好的な買収を目指す考えを示した。
買収後の進め方についても「トップダウンで押し付けるようなことはしない」と語り、「我々は現地のリーダーシップを大切にしている。実際、我々が海外企業を買収した全案件で、現地の経営陣を維持し、権限を譲渡している。本件でも同様の対応を想定している」と説明した。
ブシャール会長は日本の加盟店の重要性についても理解を示した。
「フランチャイズオーナーの皆さんと協力し、適切な利害調整を行うことにコミットする」とし、さらに「ともに活躍、信頼できる日本のパートナーと連携を図ることも期待しており、パートナーを今模索している」と語った。
ブシャール会長は加えて「深く尊敬している伊藤家の指導やパートナーシップも歓迎する」と述べ、セブン&アイの株式およそ8%を保有する創業家への配慮も忘れなかった。伊藤家へは買収手続きの早期の段階で手紙を書いたが、会うことはできていないという。
アレックス・ミラー社長兼CEOは、両社の統合による日本国内の影響について問われ「我々は、成長するために投資をする」と述べ、「店舗を閉鎖したり、従業員を解雇するような計画はない」と強調。さらに「フランチャイズオーナーの意見を聞きたい。(オーナー達に対しては)尊敬の念しかない」と述べた。
両社の統合によるメリットとして「マーチャンダイジング、サプライチェーン、デジタル化、カスタマーエンゲージメント、これらの分野でベストプラクティスを共有できる」と説明。イノベーションに投資して、その成功モデルを世界中に展開していくという。
アメリカでのコンビニシェアは、セブン&アイが1位でクシュタールは2位。セブン&アイ側は、両社の統合がアメリカの独占禁止法に抵触するのではないかと懸念している。
この点について、ミラー社長は「規制当局から承認を得られる明確な道筋がある」と改めて述べた。「アメリカは大きく、コンビニ市場は競争が激しい。15万以上の店舗が現在運営されており、トップ10のプレイヤーのマーケットシェアは20%ほどしかない」とし、両社はアメリカ全域で相互補完的で異なる市場で事業を運営していると説明した。
さらに「我々はM&Aで成長してきた会社。過去20年の間に75ほどの買収を行った。世界中の規制当局とやり取りしており、その過半はアメリカ。FTC(アメリカ連邦取引委員会)とは現在もやり取りをしている。セブン&アイに対して、アメリカの規制問題に関して解決策があることを示したい」と語った。
取材・執筆 比木暁
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