ルミネ 表輝幸社長インタビュー/ニュウマン高輪から世界へワクワク・ドキドキを発信

2025年09月05日 14:20 / 経営

ルミネは9月12日開業するニュウマン高輪で、100年先の未来を見据えた挑戦を行う。単なる商業施設ではなく、新しい生き方や価値観を提案し、地球環境問題の解決にも取り組む。日本の伝統文化・技術の素晴らしさを世界に発信し、サステナブルな社会の実現を目指す。世界に通用する価値を創出する実験の場となるニュウマン高輪への期待、強化中の海外・サスティナブル事業について表輝幸社長に聞いた。

<ワクワクしかないと表社長>

表輝幸社長

世界で最もワクワク・ドキドキを作る「ニュウマン高輪」

――いよいよニュウマン高輪が本格開業しますね

開業に向け、もうワクワクしかないですね。ニュウマン高輪はルミネ史上最大規模の商業施設で、延床面積は約6万m2、約200店舗(2026年春のミムレ開業時)となります。単なる商業施設ではなく、100年先の未来をもっともっと夢や希望のある社会にしたい。そのための壮大な実験場、チャレンジできる場所としてスタートします。

<ニュウマン高輪>
ニュウマン高輪イメージ図

――今回大きな挑戦を3つ掲げていると聞きました

今回、1.生きる歓びの提供、2.持続可能な未来に向けたアプローチ、3.コミュニティー作りへの挑戦を行います。

ニュウマン高輪はニュウマン新宿の3.5倍、ニュウマン横浜の2倍の延べ床面積があり、単なる物販や飲食にとどまらない、生きる歓びを感じられるような施設になっています。

ルミネブランドは比較的若いお客様向けにトレンドを意識して、半歩先一歩先の提案をする施設ですが、ニュウマンは、自分の考え方・価値観を持っている方々を対象に、グローバル目線でサステナブルな時代感のもと、ものごとの本質を見極めながら、新しい生き方をデザインするお手伝いがしたい。そんな施設です。

自国ファーストやさまざまな社会課題が起こっている中で、真の人の生き方、生きる意味を考えてもらう提案をして、色々なことを感じていただき、自分の可能性・ライフバリューを広げていく。そういうことをニュウマンは特に意識して運営しています。

ニュウマン高輪の28・29階「LUFTBAUM(ルフトバウム)」には植物、音、食を体感する「都心の別荘」が登場します。地上約150m、延床面積約8000m2の広さに、約500本の樹木を配置し、都心にいながら、リトリート施設にいるような特別感を味わっていただけます。

地上150mに約500本の木が植えられた「都心の別荘」登場

――地上150mに植物空間とは思い切った挑戦ですね

ゼネコンにもこんな経験は初めてだと言われました。エレベーターに入りきらない植物もありますので、クレーンを使い28・29階まで運び入れました。富士山も見えますし、四季折々の日本の植物に囲まれ、コミュニケーション、食事、イマーシブオーディオをお楽しみいただけます。

<約500本の木が植えられた「都心の別荘」>
約500本の木が植えられた「都心の別荘」

そのほかにも、ペット同伴可能なカフェ・レストラン、ペットグッズのショップやサロンをそろえ、散策から食事まで1日ペットと過ごせるペットフレンドリーな環境設計を行っています。また、約1600m2を超える空間に合計9つのサウナがそろう「高輪SAUNAS」(たかなわサウナス)も、今冬オープン予定です。

当社は商業施設をライバルだと思っていません。お客様にどれだけワクワク・ドキドキ、生きる歓びを感じていただけるプラットフォームを提供できるか。お客様の期待こそがライバルであり、ニュウマン高輪では、さまざまなチャレンジを行います。

――サスティナブルな社会づくりでは、不要なファッションアイテムを買取・回収し、リユース・リサイクルする「anewloop」を進化させる計画ですね。サスティナブル事業で重視していることを教えてください

サスティナブル事業というと、ボランティアで、大変なことをするというイメージがあります。しかし、当社では楽しみながら、ビジネスとして成り立つサスティナブル事業を行うことで、持続可能な未来を作り出すことに挑戦しています。

ニュウマン高輪では、「anewloop」をさらにアップデートし、ティンパンアレイ、キュアグループ、アーバンリサーチ(THE GOODLAND MARKET)と共創。ファッションアイテムの回収~再生布制作~商品化まで実現する、実証実験を展開します。

高輪中学校・高等学校の生徒が回収した不要になった衣料品、JR東日本の技術職社員が着用していた制服を、特別な技術で再生布へと再利用。資源を循環させます。このような取り組みは当社だけでは実現できません。共創パートナー、地域住民の方や学生たちに自分事として、楽しみながら一緒にチャレンジすることで、持続可能なビジネスとして実現できるのではないでしょうか。

<楽しみながら一緒にチャレンジと表社長>
楽しみながら一緒にチャレンジと表社長

ルミネが挑戦者たちのブリッジコミュニケーターに

――さらにコミュニティー作り、挑戦者たちのブリッジコミュニケーターとなることを目指していますね

人と人とのつながりを通じた温かい接客は、時代が変わり、AIが台頭してきても大切な価値であり、ルミネの大きな財産です。日本人だけでなく、海外の方も、ルミネの接客を支持してくださっています。

約220m2の広大なサービスカウンターを設置し、機能的インフォメーションに加え、コンシェルジュが「ブリッジコミュニケーター」の役割を担います。イベントやワークショップなども開催します。

また、ルミネ直営店舗「800°DEGREES TAKANAWA」では、全国のこだわり食材を薪火・炭火で仕上げた本格ピッツァやグリルを提供。旬の地域食材を使った料理を味わい、生産者との交流を楽しめるイベント「さとタボラ」も定期開催します。都心にいながら、地域の魅力と食の豊かさを堪能でき、なおかつ交流もできる場を提供します。

――エシカルな活動・活発な交流を生み出す仕掛けはルミネの得意とするところですね

今年7月~8月6日、今まで夏のバーゲンだった時期に、「ルミネ・ニュウマン エシカーニバル」第2弾を開催しました。ただの値引きではなく、「季節を楽しみつくす」という視点から、エシカルなモノ・コトに触れながらショッピングを楽しめる取り組みです。

期間中、各店で「anewloop」を再生した衣料のポップアップスペース、外装に傷があったり、終売していたりするコスメをお得な価格で販売する期間限定ストア、フェアトレードのワークショップなどを実施しました。ルミネのキャラクター「ルミ姉」グッズをプレゼントするキャンペーンも好評でした。

驚いたことに、バーゲンを実施した5日間の売り上げは低調でしたが、7月の売り上げを合計すると前年を超えていました。実は2013年からバーゲン時期の売り上げは右肩下がりだったのですが、エシカルカーニバルを始めた1月は過去最高の売上高だった2013年のバーゲン期間に迫る金額となりましたし、7月は過去最高売上記録をさらに更新しました。

つまり、お客様は安さを求めてルミネでお買い物してくださるのでなく、エシカルな取り組みに楽しく参加し、プロパー価格の商品も購入してくださったのです。あらためて、お客様がルミネの理念である「the Life Value Presenter」に共感し、当社の施策を支持してくださっていることがわかりました。

伝統と革新、日本の伝統工芸に新風吹き込みヒット商品が誕生

――海外でも、ブリッジコミュニケーターとして活躍しています

昨年8月にオープンした海外旗艦店ルミネ シンガポール店では、開業時、福井県とタッグを組み、ルミネ独自のトレンド性とグローバル視点でキュレーションした日本のものづくりのすばらしさを提案しました。

越前和紙の今まで廃棄していたような切れ端や、使用されず倉庫に眠っていた眼鏡のフレーム素材を活用したアクセサリーなどが人気を博しました。日本の文化・歴史・技術はすばらしいものがあります。その伝統工芸にルミネが新風を吹き込み、キュレーションすることで、海外のお客様に大変喜ばれる商品が生まれたのです。

<福井県とのポップアップストアが好評>
福井県とのポップアップストアが好評
※左から福井県の杉本達治知事、表社長

日本の文化・歴史・技術はすばらしく、海外で高く評価されています。ルミネがお手伝いすることで、さらに現代にも通用する商品が生まれます。当社の取り組みが産地である福井県、職人の皆様にも喜ばれ、自信を持っていただける。こういった好循環を生み出し続けたいと思います。

開業1周年を記念し、福井県とのコラボレーションは第2弾を実施、好評いただいていますし、他の複数の自治体からも依頼が来ており、もっともっと日本の伝統工芸のすばらしさを海外に伝え、日本に逆輸入する。そんな好循環サイクルをつくっていくことを構想しています。

ニュウマン高輪は未来への壮大な実験場に

――今、一番情熱を感じていることを教えてください

ニュウマン高輪に、多くの人たちの協力を得ながらチャレンジャーに集まっていただいて、100年先の未来を明るく素敵なものにする挑戦ですね。

日本はバブル以降の失われた30年で国際競争力も落ちており、未来に対する不安、閉塞感が世の中に漂っています。残念ながら、自信もなくしている人が大勢います。

若い人たちが、夢や希望をもちにくい現状ですが、日本の商業施設のおもてなし精神、温かく細やかな接客、伝統工芸の歴史・技術力、安全な交通網など素晴らしいものは、日本にたくさんあります。

若い人達に自分たちが変えていくチャレンジをすれば、社会も変わるということを感じられる場所を作って、しっかりサポートしていくことは、とても大事です。我々の今の時代における責任だと思っています。未来に夢や希望が持てる社会をどう作るか。若い人たち含め、国内外のイノベーターがさまざまな挑戦を行うことをサポートします。もちろん、楽しくです。この挑戦のプラットフォームとなるニュウマン高輪にご期待ください。

■表輝幸氏略歴
1963年11月21日石川県生まれ。
早稲田大学大学院理工学研究科修了後、1988年4月に東日本旅客鉄道に入社。入社後、ホテル、住宅、新規事業開発等に従事。2000年日本レストラン調理センター社長にグループ最年少で就任。その後、日本ばし大増、紀ノ国屋のM&Aを手掛け、東京駅グランスタ開発等をけん引。東日本旅客鉄道 事業創造本部 開発・地域活性化部門長を経て、2011年ルミネ常務取締役、専務取締役を歴任。2015年6月に東日本旅客鉄道に戻り、2016年6月に執行役員事業創造本部副本部長に就任、生活サービス10年ビジョンを策定。2021年から常務執行役員。2022年常務執行役員マーケティング本部副本部長としてBeyond Stations構想や100年先の心豊かな未来へとつながる「品川開発プロジェクト」などを推進。2023年6月ルミネ代表取締役社長に就任。趣味はスキューバーダイビング。座右の銘は「仕事はNO!から始まる」。

取材・執筆 鹿野島智子

ニュウマン高輪/「エルメス・イン・カラー」世界最大店舗9/12オープン

流通ニュースでは小売・流通業界に特化した
B2B専門のニュースを平日毎朝メール配信しています。

メルマガ無料登録はこちら

経営 最新記事

一覧

社長に関する最新ニュース

一覧

ルミネに関する最新ニュース

一覧

インタビューに関する最新ニュース

一覧

最新ニュース

一覧