カインズ/吉川美南店で人時生産性20%アップ、高家社長「次世代型店舗の第一歩」
2025年12月10日 11:58 / 経営
カインズが12月11日にオープンする「吉川美南店」(埼玉県吉川市)では、同じ規模の既存店と比べて約20%の人時生産性向上を目指す。高家正行社長は12月9日、その次世代型初号店に込めた思いを語った。
吉川美南店は、カインズが第3創業期として取り組んできたさまざまな施策を盛り込んだ次世代型店舗。店舗の開発に3年間も要した。同社がこれまで提供してきた「くらしを豊かにする多様な商品を、手に取りやすい価格で提供する」価値はそのままに、テクノロジーの活用や店舗設計を工夫している。
高家社長は「さまざまな取り組みを全て集約させて、次世代のカインズをこの店からスタートさせる」と述べた。そして、この店で「次世代型のチェーンストアオペレーション」や「店舗で働くメンバーの新たな成長」などを実現するという。
100人力の仕事を80人力でこなせるように運営を変え、一人当たりの付加価値を高める。取り組みを通じてカインズ全体のオペレーションモデルを変えていく。
業務効率化のために、まずは自律走行搬送ロボット(以下、AMR)を導入した。夜間に物流センターからカインズの店舗に物が納品されるが、夜間のうちにAMRがカゴ車を品出しをする通路まで自動的に運ぶ。
従来は、朝出勤した従業員が商品のバックから通路までカゴ車を運んで行き、そこで品出しをするという作業が行われていたが、AMRの導入によって出勤時には陳列に必要な商品が既に各通路に設置されている状態になる。これまでいくつかの店舗で実験した結果、日中の作業時間を月間約100時間も削減するという結果が出た。
加えて、店舗のバックヤードには、移動ラックを設置。AMR同様、倉庫での定番機器ではあるが、導入によって商品の積載効率が2倍弱まで上がった。「本部とのデータの連携というものがなくては実現できない。物流センターのデータと店舗のデータ、本部の商品部が持っているデータがつながってこそ実現できる」という。
加えて、約1万2300m2の売場内に電子棚札を導入した。「取り組み自体は小売業の中でも目新しいものではないが、カインズのような大きい店で電子棚札を入れるのは、なかなか投資コストがかかる。チェーンストアの中でも利用実績はそんなに多くないのではないか」と語る。
ブラックフライデーなどセール時にも、電子棚札があれば値札の差し替え作業が大幅に削減可能。10万点規模の商品を扱うカインズでの効率化の意義は大きく、月間約150時間の作業時間削減を見込む。
これらの取組によって、新店での働き方は、既存店とは大きく変わるという。
高家社長は次のように述べた。
――「仕事の中身が変わる、作業の仕方が変わることを新しくこの店では設計した。それをやることで一人一人のメンバーの業務の付加価値が向上し、その人の必要なスキル、あるいは働き方、そういったものが向上し、それが一人一人の成長につながっていく。そういったところまで次世代型店舗では実現をしたい。
単に新しいテクノロジーが入り、効率化を追求しただけの店ではなく、それに加えて新しいあるいは楽しいワクワクする顧客体験というものを併せて実現する。昨今の労働力・人口の減少や働き手不足に、我々カインズだけではなく日本全体が直面しているわけで、その傾向というのはこれから大きくは変わらない中で、一人一人働くメンバー自身の業務価値を上げ、成長を促していく」――
だが、吉川美南店は決して完成形ではない。
「あくまでもこれがスタートライン。ここからさまざまな進化を遂げていきながら、一歩ずつカインズの次世代型店舗というものを作っていき、かつ、それを既存店にも広げていきたい。まさにその第一歩をここに踏み出す」としている。
取材・執筆 古川勝平
流通ニュースでは小売・流通業界に特化した
B2B専門のニュースを平日毎朝メール配信しています。


