マルエツ/若手MDが現場を巻き込み商品販売、本間社長「やりたかった1つの形」
2025年06月02日 11:59 / 経営
マルエツの本間正治社長は、2023年3月の社長就任から今年で3年目を迎える。5月30日には同社の方針などを説明。進めてきた社内改革が一定の成果を生んでいるようだ。
社長に就いて経営方針に「真に、お客さまのために」を掲げた。
その理由として本間社長は「社長就任時に、客数が6期連続前年割れだった。客数を回復しないと業績にも寄与しない。そのためには会社の都合ではなく、お客様がマルエツに何を求めるのか、何に不満があるのか。ここだけ見ていくことにした。社長や部長など会社の上司ではなく、お客様を見ようと。
社内の呼び方も『さん』付けにし、身だしなみも変えた。もっとフレキシブルに皆が活発に議論して、言いたいことが言えるような環境にした。こうしたことを1年目、2年目にやってきた」と述べる。
取り組みの成果は現れている。その1つが「2層のとろけるクリームパン」(税込192円)。5月16日に約130店舗限定で発売したところ、約10日間で6万個を売り上げた。
これまで商品開発では「作業がこんなに簡素化する」といった説明が多かった。ところが、このクリームパンでは「ホイップを入れるなどひと手間がかかるけども、こういった商品を出したい、お客様に召し上がっていただきたい」と若手のMD担当者が店長ミーティングで説明。
これを受けた現場も「じゃあ一緒に売っていこう」と力を合わせ、店によっては最高で1日1000個を売った。「現場を巻き込んで商品についてしっかり説明し、一緒になって取り組んだ。私が社長になってやりたかったことの1つの形」と手ごたえを感じている。
クリームパンに限らず、こうした取り組みにより生活者から「美味しかった」という声が寄せられるのが目指す方向。「マルエツ社内で食べて美味しいではなく、お客様が食べて美味しかった。そうなるようにお客様目線でもっとアプローチしたい。社内の会議室の中だけで納得するということは避けたい。
従業員が楽しんでこういうことをやってみたいとうことを売場で提案していく。これを風通しよくスピーディーにできる。そういう会社を目指して一歩ずつ進めている」。
そうした動きの一環で、本部と店舗での役割分担も見直していく。検討しているのは、「マルエツ プチ」のような小型店では、採用や教育は店舗ではなく、すべて本部が担う。
「その分、店舗では美味しい商品を作ることに手間をかけてほしいし、創造的な売場を作ってほしい」との狙いだ。
並行して従業員の働きやすさにも配慮する。「スーパーマーケットの働き方を見直していかないと、働きたいと思ってもらえなくなるのではないか」といった危機感がある。
「スーパーマーケットで働きたいと思えるような職場環境にしていきたい」と取り組んでいるのが、従業員の休憩室やトイレの整備。無機質な場ではなく、居心地の良い空間になるよう設計している。
「従業員の休憩室とトイレは、改装リニューアルの際に必ず手を入れる。仮にリニューアルの投資額に限界があれば、売場よりも休憩室やトイレを優先する。なぜかと言うと、従業員が使う場はフレッシュであるべき。そこは働き方に対する会社のメッセージだと思っている」。
一方、懸念点は総売数で前年割れが続いている点だ。「正直長期化している」という。
背景として考えられるのが、家計の負担が増していること。「お客様が家計の負担感を感じた中で買物していただいていることを痛切に感じている」。
そこで従来の「価値」に加えて「価格」という軸を置いた。
NB商品を日替わりで安くするというオーソドックスな施策に加え、イオングループの強みを生かして、イオンのプライベートブランド(PB)である「トップバリュ」「ベストプライス」の扱いを増やし「昨年の倍以上に増やす」という方針。
「マルエツの独自性を出し、お客様が求めるNBとの価格差を考慮して、グループPBは積極的に拡販していく」。とはいえ、安売りに走るわけではなく「カテゴリや全体の品ぞろえの上・中・並のバランスを見て吟味していく」との戦略をとる。
そして「価値」については、マルエツの強みである「生鮮」と「デリカ」を引き続き強化する。これにより「お客様の来店動機は高まるのではないか」とみている。
取材・執筆 比木暁
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