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すき家/第三者委員会「強者が生き残るビジネスモデルは限界」

2014年07月31日 / 店舗経営

ゼンショーホールディングス(ZHD)は7月31日、「すき家」の労働環境改善に関する第三者委員会からの調査報告書を公開した。

今年2月から4月にかけて、厨房機器等の施設の不具合や人手不足による従業員の採用難により、すき家123店(4月12日現在)で一時休業や時間帯休業の措置を取り、さらに、これ以外にも124店について22時から9時までの深夜・早朝営業を休止したことを受けたもの。

同日、ZHDのホームページで、「すき家」の職場環境改善に向けてという特設ページで、全56ページにわたる調査報告書と全65ページにわたる従業員アンケート調査結果の全文を公開した。

調査報告書は、今回の事態は、「外食世界一を目指す小川賢太郎CEOの下に、その志の実現に参加したいという強い意志をもった部下が結集し、昼夜を厭わず、生活のすべてを捧げて働き、生き残った者が経営幹部になる」というビジネスモデルが、その限界に達し、壁にぶつかったものと述べている。

小川CEOは、これまでのビジネスモデルに限界を感じ始めていたものの、経営幹部の中に、この思いを共有し、共にビジネスモデルの転換を推進しようとする者はいなかった。また、小川CEOも自らの言う「成功体験に基づく共同体意識」に足を取られ、これを実現することができなかった。

この状況を自覚しているからこそ、小川CEOは、第三者委員会の設置を自ら決断し、その調査と提言を求め、労働環境の改革に真摯に取り組むことにしたと考えられる。委員会は、この決断を受け、会社の自浄作用に期待できると判断して、調査・検討を進めてきた。

調査において、小川CEOをはじめとする経営幹部は、この問題の解決に真剣に取り組む意向であることを繰り返し表明している。

委員会は、これらの経営幹部が委員会の指摘や提言を真摯に受け止め、これを誠実に実行することで、自らの姿勢を内外に示すこと、今回の問題を機に、企業の体質や経営態勢を抜本的に改善し、食という重要な社会インフラを担う信頼できる会社として再スタートすることを期待していると結んでいる。

今回、委員会は、ZHD社とゼンショーに対して、委員会が本件調査を進めるにあたって必要とみなす一切の資料・データの提出を依頼し、その分析を実施。

現場のクルー(アルバイト)、各種マネージャーからゼンショー本部やZHD社の関連部署の幹部職員、取締役・監査役等までを対象に延べ45人、合計約66時間のヒアリングを行った。

すき家の現場(店舗)における労働環境の実態を把握するために、すき家の社員(正社員・契約社員)561 人とアルバイト(クルー)468人に対して、それぞれ、労働環境に関するアンケート調査を行ったという。

調査によると、退職者数は2011年度において103人、2012年度において170人、2013年度において177人となっており、毎年の新規採用数のほとんどを吸収してしまっており、店舗数の増加に比して在籍社員数は伸びていない。ZHDの新卒社員の離職率、従業員の残業時間でも課題があった。

現場の労働実態として、2014年2月以前においても、すき家の非管理監督者社員の平均月間残業時間は多いときで約80時間、少ないときでも40時間を超えており、月間残業時間が100時間以上の社員がしばしば100人を超え、同100時間以上のクルーも常に数百人いる状況であった。

アンケートでは、「慢性的な人手不足(MGR、クルー)の状態なのに、新店をオープンしないで欲しい」。「意欲も低下、慢性的人員不足でおかしくなりそうです・・・会社を守っているので私たちのことも守ってください」などの声も寄せられた。

また、すき家では、2014年2月以前から、社員とクルーの36協定を大幅に超える過重労働が常態化していた。実際、委員会がヒアリングをした社員のうち、店舗勤務経験を有するほとんどの社員が、いわゆる「回転」(店舗において24時間連続で勤務すること)を経験していた。

中には、恒常的に月500時間以上働いていた者や、すき家店舗における業務が多忙で2週間家に帰れないという経験をしている者も見られた。このような過重労働は、多数の社員を過労で倒れさせ、またはうつ病に追い込むなど、社員の生命・身体・精神の健康に深刻な影響を及ぼしていた。

そのため、過重労働は、社員の退職の主な要因となっていた。退職する社員の中には、過重労働により実際にうつ病にり患してしまった者、過重労働に起因する体調不良、過労やノイローゼで通院していることを訴える者や、過重労働で倒れたことを訴える者、居眠り運転による交通事故を複数回起こしたことを訴える者が多く見られた。

例えば、ZHD社グループ人事・総務本部は、2013年の間だけでも、社員の退職理由として、「サラリーマンの生活ではない。このまま働いていても結婚もできないし、まともな生活ができない気がする。転勤の多さもネックであった」。「ハードワーク、睡眠不足・ストレスで倒れた。車で事故が2回、体力の限界」といった理由を把握していたという。

■「すき家」職場環境改善に向けた取り組み
http://www.zensho.co.jp/jp/improve/

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