ファミマ×コニカミノルタ/オンラインマニュアルサービス「COCOMITE」で店舗DX推進、本部・店舗の業務効率化と働きやすさ向上
2024年09月26日 14:00 / 流通最前線トレンド&マーケティング
ファミリーマートは、店舗DXの推進により、業務の効率化と働きやすさをさらに強化するため、コニカミノルタ ジャパン(以下:コニカミノルタ)のオンラインマニュアル作成・運用サービス「COCOMITE(以下:ココミテ)」を全国約1万6000店舗に導入した。ココミテ採用により、店舗では、迅速に、いつでも店舗の端末からマニュアルを確認・検索できるようになった。本部では、マニュアル作成・更新をタイムリーに実施、店舗オペレーションに関する情報を一元管理するなど、マニュアル管理業務の負荷を軽減し効率化を実現、働きやすさを向上させている。ココミテによる業務改革を担当したファミリーマート オペレーション本部の室山龍太郎マネジャーと保坂知己氏、COCOMITE事業責任者の中村圭氏に、ココミテを活用した店舗DXについて聞いた。
「ココミテ」でマニュアル作成・検索・活用がスムーズに
ファミリーマートは従来、店内オペレーション、教育、店舗運営(マネジメント)、緊急事態対応、機器の操作など、社内で作成したマニュアルのデータ化を外部委託し、店舗にPDFデータで配信をしていた。外部委託をしていたため、ファミリーマート本部で修正したい場合、時間を要し、柔軟な対応が難しかった。店舗では、マニュアルの活用、検索機能面において使用しにくい部分があり、店舗運営に関する情報の属人化などが課題となっていた。そこで、2021年からコニカミノルタのオンラインマニュアル作成・運用サービス「ココミテ」を導入した。2024年7月現在、約1万6000店舗、約20万人のスタッフに活用されている。
「店舗は使いやすいマニュアルを求めていて、本部ではマニュアルの更新・管理しやすくしたいという当社の課題を解決する手段がココミテでした。例えば、本部側は、マニュアル化を外注しておりましたので、委託先に修正をお願いしてから、新しいマニュアルが店舗に届くまで3~4週間要していました。
タイムリーに店舗に公開しなければいけないマニュアルもある中で、迅速にマニュアルを更新できず、配信までに時間を要するのは、以前からの課題となっていました」とファミリーマートのオペレーション本部 店舗運営業務部 運営企画グループの保坂知己氏は説明する。
ココミテ導入以前はマニュアルがタイムリーに更新できないため、マニュアルとは別にガイドブックを発行する場合もあった。さらに作業を解説した動画もあり、情報が散在し、店舗オペレーションに関する情報を一括して格納・検索できる仕組みも必要とされていた。店舗運営に関する情報が文面、動画などさまざまな手段で存在する中、すべてを把握する必要がある店舗責任者の負担、情報の属人化も課題だった。これらの問題を改善すべく、クラウド対応のシステムを探している中、出会ったのがココミテだったという。
ココミテはオンライン上で効率的なマニュアル作成・管理・活用を実現
<ココミテ画面イメージ1>
※左側の枠に画像や動画、ファイルをワンクリックで挿入、右側の枠に文章を記載する形でマニュアル作成できる。PowerPointのように文字装飾、表やリンクの挿入を行いながら誰でも簡単に見栄えの揃ったマニュアル作成が可能
「ココミテ」は、オンライン上で効率的なマニュアル作成・管理・活用を実現するソリューション。ブラウザ上で画像・動画を用いた見やすくわかりやすいマニュアルを簡単・スピーディーに作ることができ、パソコンやタブレット、スマートフォンとマルチデバイスで作成・共有・閲覧ができる。マニュアルは章節項の多階層構造で作成でき、各ステップに画像・動画を4つまで配置できる。
<ココミテ画面イメージ2>
※キーワード検索は検索対象となる範囲が選択可能。さらにタグ検索、キーワード検索(完全一致、部分一致)で見たいマニュアルがすぐに見つかると好評
導入に向けて、顧客に最適なマニュアル作成と運用をアドバイスする支援メニューも充実している。業務の分析、マニュアルの作成・運用ルールの設定などコンサルティングも提供。既存のマニュアルをもとに、ココミテに最適なフローにデータを修正したり、既存マニュアルからココミテへの移行も対応する。従来使用していた文章を修正・確認して取り込んだり、画像・動画を活用したりもできる。マニュアル作成に不安がある場合、マニュアルの新規作成に関するサポートメニューも用意している。
ファミリーマートにおけるココミテ導入においても、週1回ミーティングを行い、店舗と本部の実情に合った仕様にココミテをバージョンアップしながら、きめ細かく対応したという。
ココミテ活用でナレッジを現場の活きたものに
コニカミノルタのCOCOMITE事業責任者である、ICW事業統括部 ナレッジDX事業開発部の中村圭部長は、「ココミテは人手不足による生産性低下や現場の負荷増などの社会課題の解決を目指しており、 現場で使いやすい、わかりやすいシステムをお客様に提供したいという大前提で開発しています。もともと、マニュアル作成・管理・活用は、業務負担が大きいというイメージの強いものだと思います。
しかし、業務に関する知識やノウハウが、システム上で作成しやすく、現場で見やすく、使いやすくすれば、あらゆる業界のDXにつながる。私が担当するナレッジDX事業開発部の名称には『テクノロジーの力で個や組織の知識を、活(い)きたナレッジとして組織の力へ昇華する』という思いが込められています。そのために、ココミテ導入においても、システム構築などIT分野からマニュアルの運用といった現場の実務まで、お客様の実情に寄り添ったサービスを提供しています」と意気込む。
<お客様の課題に寄り添ったサービスを提供したいと話す中村氏>
ファミリーマートでは、本部の業務効率向上のため、マニュアル作成への負担感を減らすということも課題だった。マニュアル作成を内製化する際、担当者が作成に負担を感じず、直感的に操作できるわかりやすいシステムであることが、ココミテを採用した理由の一つだったという。
ココミテ導入でマニュアル作成の内製化がスムーズに移行
保坂氏は「即時にマニュアルを公開でき、マニュアル作成から公開までを内製化したいという要望をかなえるには、ココミテが最適でした。内製化で業務負担が増えるというネガティブなイメージを持たれてしまうのは避けたかったので、作成しやすいシステムやツールを探していたのです。ココミテは、メール作成、PowerPoint操作程度のスキルがあれば、誰でも直感的に操作ができます。それがマニュアル作成の担当者にも理解をしてもらえたので、本部社員が、必要な時に必要な部分のマニュアルを即時更新するという行動へと変化しました。それにより以前に比べ改訂頻度が向上しています。今回の内製化が、結果的にポジティブな業務改革につながっています。
これまで1つのマニュアルを公開するまで3~4週間程要していましたが、改訂内容や部署にもよるものの、現在は、社内承認を含めて10日前後で公開が可能となりました。第一四半期での計算になりますが、50項目の改訂を行い、所要時間はココミテ導入によって50%程度削減することができました」と話す。
また、オペレーション本部 店舗運営業務部 運営企画グループの室山龍太郎マネジャーは、「作成中のマニュアルを特定の作成者のみの閲覧にしたり、編集権限を与えたりできるのも便利ですね。新紙幣対応や、新しいオペレーションが開始するタイミングに合わせて一斉にリリースするために、事前にマニュアルを作成することがあります。準備をしなければいけないときに、関係者だけで特定のマニュアルだけに集中して、共同作業ができるというのはかなり利便性が高いです。そのほか、作成したマニュアルの社内承認フローのための機能もあり、本部においてマニュアル全体の管理もしやすいです」と説明している。
また、ココミテ導入によって、検索機能の性能面や店舗事務所でしかマニュアルを確認できないといった店舗側の悩みも解消されたという。
今までは決まったシステムの中に電子化したマニュアルを格納し、それを店舗スタッフがストアコントローラー(以下:ストコン)で閲覧していた。ココミテは、ストコンに加え、検品や返品業務などの店舗業務に使用する携帯可能なスマートフォン型端末(以下:MAT)でも閲覧できるマルチデバイス対応となっている。検索は、全文検索、タイトル検索、タグ検索が可能となっており、利便性が飛躍的に向上した。
室山氏は、「検索に関しても、あらかじめ決まったフレーズがヒットするだけでなく、全文検索もでき、日常使いしている検索機能と類似した機能を保有していたのがココミテでした。困りごとがあれば、すぐマニュアルを検索して確認できるので、現場の教育もしやすくなります」と述べている。
「マニュアルに関して店舗側が内容を理解しづらいとき、現場のスーパーバイザーが本部に問い合わせをすることで、業務負担となる場合もあった。ほしい情報を現場ですぐに検索でき、ストレスを減らせました。マニュアルの作り手としてはわかりやすいものを提供したつもりでも、業務で使っている側からすると、わかりにくいという場合もあります。店舗側からフィードバックをもらえると、短時間で修正や反映することもできますので、柔軟に対応できるのもメリットですね。
問い合わせ対応の場合も、マニュアルのここに書いてありますというだけでなく、現場のスーパーバイザーと本社スタッフで同じマニュアルを見ながら、マニュアル作成の意図や、オペレーションの意味を伝えています。理解がスピーディーになり、コミュニケーションが円滑になっていると感じます。店舗で検索しやすくなれば、本部の店舗からの問い合わせ対応や検索の補助も減り、双方の業務負担の軽減につながると考えています」と室山氏。
全国約1.6万店舗・約20万人の24時間365日利用に耐えるシステム強度
約1万6000店舗、約20万人が24時間365日利用する仕組みに、システムの強度、技術的な不安はないのだろうか。コニカミノルタの中村氏は「ココミテではスクラム開発を行っており、顧客要望をバックログで管理、優先順位をつけながら、週1回のシステムアップデートで改善・追加機能をリリースし続けています。今回のプロジェクトは、24時間365日、全国約1万6000店舗と多店舗展開されている企業において、スムーズにココミテを導入・運用を軌道に乗せられるかという、我々としても大きな挑戦でした。それまで顧客ごとの環境において、最大のアカウント数は1000人程度だったものが、最大アカウント数3万人規模、店舗スタッフを含めた利用者数20万人規模まで拡大したので、この取り組みはサービスのレベルアップにつながりました」と話す。
ファミリーマート側の要望を取り入れながら拡張した機能として、メールアドレス以外のIDでのログイン機能がある。従来のココミテはメールアドレスとIDがひもづいた仕様だったが、店舗ごとにログインできるようにIDをキーにしたログイン認証方式を追加。店舗IDを利用することで、パート・アルバイトなどメールアドレスを持たない人もマニュアルへのアクセスができるようになった。
セキュリティー対策も充実させた同機能は、製造業の顧客にも好評で、現在30社ほどが利用しているという。
「コンビニで利用されるオンラインマニュアルとして、24時間365日店舗で稼働する中で、サーバーのメンテナンスがあると、その時間帯はマニュアルを使うことができないというのでは困ります。今回のココミテ導入プロジェクトを通じ、ほぼ無停止で、いつでもマニュアルを閲覧できる状態を実現しました。システム稼働率は99.97%を実現したことで、小売業以外の製造業、介護業界でも支持される結果となりました」と中村氏は胸を張る。
また、ファミリーマート側では、店舗・本部側共にマルチデバイスで、マニュアルを確認できる点も評価している。
室山氏は「ココミテはストコン、MAT、発注端末とマルチデバイスで、バックヤードに限らず店舗内でも確認できます。スポットワーカーの店舗スタッフの方でもマニュアル閲覧が可能ですので、安心して働くことができます。今は日本語のみですが、当社はネパール、ベトナム、中国、ウズベキスタン、ミャンマーといった海外出身のスタッフも活躍されていますので、多言語化も検討します」と話す。
AIを活用したココミテ新機能での進化に期待
小売業の店舗、製造業の工場で外国人従業員の存在感が増す中で、ココミテでは年内に読みたい言語にマニュアルを翻訳する機能を30カ国語程度まで対応する予定。さらに、導入企業ごとの専門用語に対応した翻訳機能拡張を予定している。
中村氏は「ココミテとAIは相性が良く、マニュアルの作成、管理、活用、利用状況分析の利便性は大きく進化できそうです。例えば、知りたいことをチャットボットのような形でココミテと対話型で回答を得られるようにするなど、よくある質問といったQ&A集や、ココミテに集約したマニュアルを開くことなく、いち早く示唆を得られる機能を開発中です。
マニュアルを開くことなく、知りたいことへの回答が即時で得られる。ワンクリックで知りたいことがわかる仕組みを作るべきだというのが、今回のプロジェクトを通じた、今後の課題として見えてきました。これまでにない高いレベルのナレッジ活用の体験やさらなる生産性向上につながるサービス開発を生成AIも活用して進めていきます」と意気込みを語る。
さらに、「読み手に分かりやすい文章を書くことにつまずいた経験は、多くの方がお持ちだと思います。特にマニュアルでは読み手のレベルを意識し、再現性のある手順として書く必要があります。マニュアルを書く時点で属人化しやすいというお困りごとに対応するため、AIマニュアル作成アシストという機能も昨年度リリース済です。この機能を使うことで、マニュアルの書き手のトレーニングもできるようになります。
マニュアルのタイトルに加えて、5W1Hの情報を入れると、ココミテの機能がガイドしながら、章節項立てをし、本文の下書きまでしてくれるという機能です。これにより、文章作成そのものに苦手意識がある人でも、マニュアル作成の第一歩を踏み出しやすくなると考えています。この機能の発展も既に実証実験が始まっています。音声やテキストでの対話型インタビューを40分程度熟練者が対応するだけで、高度な業務の概要・手順や仕事のコツなどがマニュアルに落とし込まれます。これまで言語化しにくかった分野での業務手順書の作成支援に成功しています」と話している。
<AIでマニュアル作成をアシスト>
※マニュアルのタイトルを入力すると、AIが目次や本文の下書きを作成。構成の抜け漏れが防げ、作成工数を1/6まで短縮出来た事例も
人手不足による生産性低下や現場の負荷増などが社会課題化している日本において、いかに店舗のDXを図り、スタッフの働きやすさを向上させ、業務効率化を図るか。ファミリーマートのココミテ導入による改革は、顧客だけでなく、働き手にも選ばれる店舗になるため、さまざまな施策を検討している流通各社にとって、大きなヒントになるに違いない。
≪ファミリーマートのCOCOMITE活用事例をこちらよりダウンロード≫
■室山龍太郎氏略歴
ファミリーマート 店舗運営業務部 運営企画グループ マネジャー
1982年、福岡県出身。2005年にファミリーマートに入社し店舗研修、スーパーバイザー・営業所長と現場に18年従事。2023年に店舗運営業務部デジタルプロジェクト推進を経て現在は店舗オペレーションに関する制度・仕組み、システム・ツールの企画・立案・実施支援・運用管理及びマニュアルの監修及び全体管理を担う。
■保坂知己氏略歴
ファミリーマート 店舗運営業務部 運営企画グループ 担当
1980年、千葉県出身。2004年サークルKサンクスに入社し、その後、経営統合を経てファミリーマートへ入社。店舗勤務及びスーパーバイザーで現場経験を積み上げ、2020年より人財開発部へ異動し、新入社員を対象とした人財育成業務に携わる。2022年より現部署の配属となり、異動まもなくCOCOMITEへの移行作業、社内向け運用ルール策定に携わる。現在は、マニュアルの監修及び管理を行っている。
■中村圭氏略歴
コニカミノルタジャパン ICW事業統括部 ナレッジDX事業開発部 部長
1977年、佐賀県出身。東京理科大学大学院修了後、大手電機メーカーで設計開発に5年、ICT分野新規事業開発に7年従事し、2015年にコニカミノルタ 新規事業開発専門組織へキャリア入社。「COCOMITE」を発起し、2020年ローンチ以降は事業責任者を担う。
取材・執筆 鹿野島智子
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