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コンビニ検討会/報告書発表「加盟店の苦境」明確化、プロセスに意義

2020年02月14日 16:50 / 行政

経済産業省は2月10日、「新たなコンビニのあり方検討会」報告書「令和の時代におけるコンビニの革新に向けて」を発表した。2月6日に開催した第5回新たなコンビニのあり方検討会での議論を踏まえ、概ね事務局が示した報告書案が最終報告書に反映された。

報告書は、コンビニの現状と課題を整理し、「店舗数が増加しても、一店舗あたりの売上が横ばいとなっている」「売上が伸びない中で、人件費などのコストが上昇すれば、加盟店の利益は圧迫されていく」といった環境変化を指摘。

その上で、加盟店優先・オーナー重視という視点からのビジネスモデルの再構築を求めた。具体的には、「統一から、より多様性を重視するフランチャイズモデルへの転換」「本部の加盟店支援の強化、フランチャイズへの加盟メリットの可視化」「オーナーとの対話の強化」の3つを柱とした。

<新たなコンビニのあり方検討会>
新たなコンビニのあり方検討会

最終回となる第5回検討会の最後に、藤木俊光商務・サービス審議官は、「規制業種でもない民間契約で行われているビジネスに対して、我々はどこまで、何が見えるんだろうかということは、正直、大きな課題、悩みであり、依然として悩みであります。ただ、いささかカッコイイことを言いますと、良識と正義感、そういうところが拠り所ではないかと思っています。『社会として、どういうところが常識だよね』『この辺がまあ、そういうラインだよね』というところから、考えた時に何ができるのか。そういう意味では、バランスが難しい議論に取り組み、良いご意見をいただいたことに感謝いたします」と述べた。

その上で、「(各社が打ち出した加盟店支援計画の)フォローアップをちゃんとやるべきだという意見があり、これはおっしゃる通りだと思います。出しっぱなしで終わらせては意味がないと思います。タイミングとやり方は工夫をしなければいけませんが、これは確実にやって、皆様に見える形でどこまで進捗しているのかを示す必要がある。また、検討会の一つであるADR(裁判外紛争解決手続)は、業界主導で検討を進めていただかなければならないことは間違いない。経産省としても、しっかりと相談に乗りながら、業界と一緒になって悩んでいくことをやらしていただければ思います」と語っている。

藤木審議官の言葉の通り、経済産業省にはコンビニの課題に対して介入する根拠法規がない。廃棄ロスの負担、値引き禁止、24時間営業の強制といった事案であれば、公正取引委員会が独占禁止法に基づき、事案を調査し、調査に基づき是正措置を求め、勧告を出すことができる。

フランチャイズ加盟店オーナーは労働者か否かという問題に対しては、労働組合法に基づき、厚生労働省の外局である中央労働委員会や都道府県労働委員会が、裁定を下すことができる。ただ、2019年3月15日、中央労働委員会は、コンビニエンスストアを経営する加盟者は、労働組合法上の労働者には当たらないとの判断を示した。その上で、加盟者は労組法上の労働者ではないが、経済法等の下での解決が想定される、事業者間における交渉力格差があると述べ、事実上、公正取引委員会に問題の解決をゆだねている。

このような状況を踏まえ経済産業省は、個別・具体的な事象の解決を目指すのではなく、業界全体を俯瞰して、幅広い視点を持って、コンビニ業界全体の課題を明らかにすることに注力した。

これまで、コンビニ加盟店を巡る課題は、公正取引委員会が行っている実態調査、値引きを巡る裁判、都道府県労働委員会や中央労働委員会に提出される資料、経済産業省が実施するコンビニ調査が主な公的な資料だった。

マスコミもコンビニの取材は、原則として本部取材であり、加盟店取材はNGという取材慣行の中で、一部の告発本を除き、コンビニ加盟店の苦境が明らかになることは、ほとんどなかった。1チェーンで店舗数が1000店を超え、1万店、2万店という規模の組織を取材する上で、1店1店の個別事象をもって組織全体の課題・問題として、報道することは難しいとの配慮もあった。

<経済産業省>
経済産業省

新たなコンビニのあり方検討会は、2019年6月28日の第1回から2020年2月6日の第5回まで開催。その間、コンビニオーナーヒアリング、コンビニ本部ヒアリングを実施した。

コンビニ本部ヒアリングは8月21日の東京を皮切りに、9月17日の札幌まで全12回を全国で開催し、10年以上全く休みがないなど、コンビニ加盟店オーナーが抱える問題を浮き彫りにした。

一方で、コンビニ本部ヒアリングでは、本部が土地・建物を提供する契約タイプの場合、本部の出店費用は5000万円~6000万円かかり、家賃の負担もある。そのため、投資回収のために10年という長期の契約が必要なこと。収納代行サービス・宅配サービスはほとんど収益につながっていないといった課題も表明された。

検討会は、フルオープン形式で実施され、第1回~第5回までWEB中継を実施。これまでに第4回までの動画が経産省の公式YouTubeで公開されている(第5回も今後、公開予定)。

加盟店オーナーが話やすい環境を配慮しマスコミ非公開としたコンビニオーナーヒアリングは、議事録を全文公開した。コンビニ本部ヒアリングはWEB中継はなかったが、マスコミ完全公開の下に実施、議事録も全文公開している。

40年を超えるコンビニの歴史の中で、これほどコンビニ加盟店が直面する幅広い課題が明らかになったことはない。

検討会の取材で、委員の一人は、「コンビニ本部は、これまでさまざまな精緻な仕組みを作り上げてきた。一方で、加盟店の苦境が経営陣に伝わっていないと思われる面もある。加盟店の実情が明らかになれば、コンビニ本部自らが現状を打破する施策を打ち出すことが、十分に期待できるのではないか」と語っている。

実際、コンビニ8社は、検討会が開催される前の2019年4月に、加盟店支援のための行動計画を発表。さまざまな施策を打ち出し、行動計画の進捗状況も継続して発表している。

経済産業省の「新たなコンビニのあり方検討会」は幕を閉じたが、大手コンビニ各社の行動計画は現在、実行中だ。また、公正取引委員会は1月17日、「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査(Webアンケート方式)」を実施。2020年夏に調査結果を公表する予定となっている。

新たなコンビニのあり方検討会の報告書は冒頭で、「報告書においては、コンビニを取り巻く環境変化がどのようなものか、その中で、持続的発展のためにコンビニが進むべき道はどこにあるか、というビジョンを提示することとしたい。こうしたビジョンを踏まえながらコンビニ各社や加盟店オーナーが新たな時代に対応したビジネスモデルを創出することを期待するものである」と記述している。

委員の一人は、「フルオープン形式で行われた検討会のプロセスそのものが、コンビニ業界の発展にとって意義ある取り組みになった。今後、研究者も含めて、公開されたアンケートなどを分析し、より具体的な問題解決策が打ち出されることが期待される」と検討会を評価している。

新たなコンビニのあり方検討会

■関連記事
経産省/新たなコンビニのあり方検討会「報告書案」発表
https://www.ryutsuu.biz/government/m020642.html

経産省/「コンビニ調査」加盟店の61%が人手不足、50%が売上減少
https://www.ryutsuu.biz/government/l032647.html

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