伊勢丹新宿店/売上高が過去最高へ、若年層の取り込みに成功
2022年10月12日 11:00 / 経営
三越伊勢丹ホールディングスは10月11日、伊勢丹新宿店の2022年度売上高は過去最高の2018年度売り上げ2526億円を上回る見込みだと発表した。
<若年層の取り込み、CRM戦略を強化していると栗原執行役員>
同日行われた伊勢丹新宿本店事業説明会で栗原憲二執行役員 営業本部伊勢丹新宿本店長が明らかにしたもの。
栗原氏は「創業以来の文化と実績をもとに、DXなどを推進した結果新宿本店の業績は好調に推移している。本店にしかない特別なMD、イベント、顧客ごとの分析を強化したコミュニティーマーチャンダイジングを推進。集客の強化、若年層の取り込み、CRM戦略でさらなる成長を目指す」と意気込みを語った。
2022年度上期はピーク時1割を超えていた免税売り上げシェアが5%にとどまるも、4月以降6カ月連続2018年度の実績を超えており「値上げが続き、消費マインドが冷え込むかと思った8、9月ではむしろ伸びが大きかった。顧客のほしいもの、いいものをほしい方法で提供すれば、消費は喚起できると考えている」という(栗原氏)。
領域別では2022年上期は2018年度の同期比で、化粧品が11%から7%に落ち込んだが、宝飾・時計は7%から18%となっており、売り上げシェアを拡大している。
<高感度上質戦略を推進>
※6月28日「ISETAN MEN’S 22FW PRESS REVIEW」で流通ニュース撮影
2022年度開始した現在の中期経営計画の中で、高感度上質戦略、顧客とつながるCRM戦略強化を発表しており、伊勢丹新宿店ではこれらの計画が軌道に乗り始めている格好だ。
また、コロナ前からの課題だった顧客の若返りなどに向け、「ファッションの伊勢丹」の培った歴史を生かしながら、商品に依存したマスマーケティングから、顧客ニーズを徹底的に探り、顧客のファン化を図る「個」を重視したマーケティングに切り替えた。
将来有望な「ターゲット顧客」の興味・関心を探り当てたうえで、さまざまなイベント・コンテンツを提供し、伊勢丹のファン化・ライフタイムバリュー向上を図っている。
InstagramなどSNSを活用し、顧客の潜在ニーズを顕在化する「感情接客」のトレーニングを受けた店頭スタッフが拾い上げた顧客の声をもとに、「呼びたい顧客」を具体的に想定した「カスタマーイン」手法を採用している。顧客がまねしたい人を特定し、その人が勧めるモノ・コトに関し、イベント・コンテンツを充実させている。
その結果、売上金額では40代未満の若年顧客シェアが、2022年上期で22%と2019年上期の20%から増加。ターゲティングしたコミュニティーの関心の高いサウナ・キャンプなどのイベントや、旬なブランドの世界観と話題性を発信することで、若い世代を呼び込んでいる。
具体的には、ジル サンダーの最新のカプセルコレクションをいち早く紹介することで話題性を作り、新たな顧客を動員。8月のイベント実施中のブランド40代以下シェアは69%だった。
9月のミュウ ミュウのポップアップストアでは、1階のイベントスペース「ザ・ステージ」と同ブランドがもとから入っている階との連係で、伊勢丹限定商品、伊勢丹先行商品などを紹介した。イベント実施中のブランド40代以下シェアは59%となった。
ミレニアム・Z世代顧客コミュニティーをターゲットにしたイベント「アキュートガール」は、「かわいいもの・はかなく美しいものに囲まれて、自分自身も爪の先までかわいくありたい」をコンセプトとする伊勢丹新宿本店独自のプロモーションを推進。売上予算比10%増、買い回り金額92%増、カード会員獲得数もイベント時期の店全体獲得数の20%を占めた。
さらに、MIカード会員の獲得を強化。加入インセンティブをポイントだけでなく、人気催事の内覧日開催、希少アイテムの限定・先行販売、行列アイテムの優先販売などを用意している。
年間買い上げ額300万円以上のプラチナ顧客には特別なイベント、専用ラウンジを提供。年間100万~300万円のゴールド顧客には骨格診断・カラー診断などコンサルティングサービス、営業部ごとのプロモーション「ISETAN FAN WEEK」など利用額向上の動機づけのため、買い上げ金額に応じたイベント・サービスも行っている。
流通ニュースでは小売・流通業界に特化した
B2B専門のニュースを平日毎朝メール配信しています。