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紀伊国屋書店、CCC、日販/書店主導の出版流通改革を担う合弁会社設立で協議

2023年06月23日 10:42 / 経営

日本出版販売(日販)、紀伊国屋書店、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は6月23日、書店主導の出版流通改革及びその実現を支える合弁会社設立に向けた協議を開始する基本合意契約を締結した。

<基本合意契約を締結>
基本合意契約を締結

時代の変化に伴う紙媒体市場規模の縮小や、従来の委託販売制度に付随した負の側面である高い返品率、さらには物流費の高騰などによって、出版流通モデルは様々な危機に瀕している。日本全国における書店の数は過去10年間で約3割減少し、全国市区町村のうち4分の1を超える自治体が書店ゼロ市町村となっている(2022年9月現在、出版文化産業振興財団調べ)。書店という、子どもから高齢者まで様々な年代の読者が本と出会う拠点、そして地域の交流拠点が全国各地から失われつつある。

このような現状に対し、街に書店が在り続け、より多くの人々が読書習慣を育み、本を通じた「知」や「文化」との接点を持ち続ける豊かな未来を、書店自らの手で切り拓きたいという思いから、書店主導による出版流通改革に取り組むことを決めた。そして、この思いのもと、各出版社が発行する多種多様な出版物を、書店を通じて全国各地の読者に届け続けるための出版流通サイクルの創出と、そのサイクルを持続可能なものとするための仕組み変革によって、業界の成長のみならず、日本の文化と社会の発展に寄与することを目指し、3社による協議を開始する。

<事業スキーム>

協議事項として、書店と出版社が販売・返品をコミットしながら送品数を決定する、新たな直仕入スキームの構築を目指す。粗利率が30%以上となる取引を増やすことで書店事業の経営健全性を高め、街に書店が在り続ける未来を実現させる。

新たな直仕入スキームの構築にあたっては、紀伊国屋書店・CCC・日販各社が保有するシステムやインフラストラクチャー、単品販売データ等を利活用し、欠品による販売機会の喪失を最小化すると共に、売上増大と返品削減、環境に優しい流通を実現し、読者・書店・取次・出版社全員のメリットを向上させる。

そのため、「機械学習等のテクノロジー(AI発注システム)を活用した、精度の高い需要予測に基づく適正仕入の実現」「適時適量かつESGに基づくサスティナブルな流通(環境・働く人に優しい流通)の実現」「ユーザー利便性向上による購入者の拡大や購入数の増加に向け、書店横断型サービス・共通アプリなども視野に入れた新たな販売促進施策やレコメンド施策の実施」に取り組む。

また、新たな直仕入スキームを実効的に推進していくため、紀伊国屋書店・CCC・日販が出資する合弁会社の設立を検討する。さらに、より豊かな未来を築いていくために、3社の志に賛同する他書店も合流できる、オープンな仕組みを目指す。

まず、3社の担当者による協議を速やかに開始し、他書店や各出版社へも説明しながら、2023年秋を目途として、実行計画の策定と合弁会社の設立に向けた準備を進める。

紀伊国屋書店の高井昌史代表取締役会長兼社長は、「このたび、書店と取次による『書店を核にした出版流通改革』に取り組むことで、持続可能な出版流通サイクルを創り出していこうと決意した。『文化・情報の発信』『知のインフラ』としての書店を存続させ、出版文化を継承していくことは、我々に課せられた使命と考えている。まずは3社で、それぞれの書店としての良さを生かしながら、新しい仕入れの仕組みを整備し、同じ志をもって取り組んでいただける他書店とも手を携えていくことを目指す」とコメントしている。

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