トリドールHD/店長制度を刷新し最大年収2000万円に、家族食堂制度も導入
2025年09月17日 16:18 / 経営
トリドールホールディングスは9月17日、人的資本経営をさらに深化させた独自の経営手法「心的資本経営」の始動を発表した。具体的には、店長の年収が最大2000万円を見込める新たな人事制度や、従業員の子どもに無償で食事を提供する「家族食堂制度」などを導入する。
永続的な人材確保や離職率の改善、求人や教育コストの削減など長期的なメリットを生み出し、グループ全体で持続的な事業成長を目指すための取り組み。手づくり・できたてのうどんを提供する「丸亀製麺」をはじめとする人手を介した事業・サービスを継続することで、競合他社との差別化を引き続き推進したい考え。
トリドールHD社内では、昨年6月から「心的資本経営」の浸透を進めてきた結果、従業員の離職率が約12.9%低下するなど、ポジティブな効果が表れ始めているという。人口減少・人材獲得競争の激化によって、飲食業界で省人化・機械化が進む中、人手の確保に一層注力する方針だ。
粟田貴也社長は「食の感動体験は人が生み出すものであり、機械にはできない。トリドールの経営で最も大切なのは、働く従業員の心と、お客様の心だと確信している。その考え方を我々なりにまとめたものが『心的資本経営』だ。従業員の心のハピネスと、お客様の心の感動。この2つを最も重要な資本と捉え、最優先課題として経営に取り組んでいく」と意気込む。
「心的資本経営」は「ハピネス(幸福)」と「カンドウ(感動)」の頭文字を組み合わせた「ハピカン経営」という呼称で既に全従業員に共有済み。この実践モデルを「ハピカン繁盛サイクル」と定義している。データサイエンスも活用。顧客・従業員からのアンケートも収集し、スコアによる可視化も行う。
顧客の感動体験が積み重なることで支持が高まり、店舗の持続的な繁盛へとつながる。その成果を従業員に還元することでモチベーションを高め、従業員の内発的動機※を引き出し、顧客へのサービス向上を促す。これを繰り返すことで事業の成長につなげていく。そのサイクルの実現に向けて、人事制度と福利厚生を強化した。
※顧客に感動体験を提供するために一人ひとりが自ら考え動けるようにすること。
まずは従来の店長制度を刷新し、新たに「ハピカンオフィサー制度」を導入する。従来、店長が担っていた管理業務を、副店長や別のメンバーに移管することで、店長は従業員の内発的動機を引き出す役割を担う。店長は、店員との交流を増やしたり、労ったりするなど、働きやすい環境づくりに取り組む。
報酬体系も見直し、本社でキャリアアップせずとも、現場での仕事を続けることで高額の報酬を得られるようになる。現在の店長年収は最大520万円台だが、ハピカン繁盛サイクルの実践レベルに応じて報酬が変動し、最大で年収2000万円を得られるという。当然、残業代・インセンティブを除いた額となる。店長以外の報酬増額については、現在検討中とのこと。
粟田社長は「店が大好きなんだという人が、店で働き続けることで自己実現が完結する仕組みがハピカンオフィサー制度だ。そういう人をたくさん増やしたい」と語る。
丸亀製麺では「ハピカンキャプテン」という呼称で、11月からの導入に向けて研修等を進めている最中。今後、国内その他業態へも同制度を広げていく。
2028年には、丸亀製麺で300名のハピカンキャプテンを育成し、このうち年収2000万円クラスの店長を10名育てることを目標にしている。今後、トリドールHDの総人件費は当然上がるが、十分に確保できる見込みだという。
また、トリドールグループの店舗で働く従業員の家族(15歳以下)を対象に、その従業員が所属するブランドの全店舗で、いつでも無償で食事を楽しめる機会を提供する「家族食堂制度」も設ける。
家族との団らんの時間づくりや従業員の子育て支援、親の職場への理解につなげる。12月より丸亀製麺・天ぷらまきの・焼き鳥とりどーる・長田本庄軒・とんかつとん一で導入を開始し、その後他ブランドへの展開も視野に入れているという。
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