スノーピーク/5年間の売上成長率10%超目指す、アパレル強化などで顧客接点拡大
2025年10月02日 12:03 / 経営
スノーピークは2030年まで売上を毎年10%超伸ばす。日本で10%程度、海外で15%超それぞれ拡大させる。鍵となるのが「エントランス(顧客接点)」の拡大だ。
スノーピークは10月1日付で元スターバックス コーヒー ジャパンCEOの水口貴文氏が社長に就いた。
9月30日に開かれた戦略発表会で水口氏は「お客様との接点をしっかり持ちながら『日本の自然観』を軸にして世界に広げていく。これが我々が今後やっていきたいこと。我々の会社の存在意義は、自然を通した人間性の回復。これをできるだけ多くの方々に広げていきたい。そのためにはできるだけ大きなエントランス、入口を作っていく」と今後の方針を述べた。
従来のギア(キャンプ道具)中心の商品ラインアップを広げ、より多様なアイテムを提供していく。具体的に5つの施策を掲げる。
1つ目がアパレルの強化だ。「ギアを超えるスノーピークの大きな軸になる」(水口氏)とし、アパレルを第2の柱に育て、普段キャンプをしない層も取り込んでいく狙い。
2024年からアパレルアイテムの拡充を進めており「すでに大きな結果が出ている」(同)と手応えを感じている。今後はギアで培った機能性をアパレルに注入していく計画で、世界的なクリエイティブ・ディレクターと組み新たなアパレルラインを始める予定だ。
2つ目は主力であるギアの深化。「日本のキャンプ人口は全体の5~6%。キャンプに行かない理由としてテントを設置するのが難しそうという意見があるが、逆にこれをクリアすればキャンプのエントランスは大きく広がる」と水口氏。
そこで空気を入れると誰でも簡単に設営ができる「エアフレームシェルター」を2026年に発売する。「エアテントはヨーロッパを中心にいくつか販売されているが、快適な居住性を備えつつデザイン性も伴っている商品はスノーピークならでは」と自信を見せる。
施策の3つ目は新たな体験だ。スノーピークはすでにキャンプ場や体験型施設を展開しているが、これらを融合させた新業態「スノーピークグラウンズ」を10月から始める。
キャンプ場だけでなく、その周辺エリアの自然遺産や地域文化も楽しむというコンセプト。日帰りで焚火や地域の文化を体験したり、テントを張らずに宿泊できたりする。
4つ目の施策として、野遊びを提供するサービス「キャンププラス」を始める。北海道の石狩川の支流「空知川」最上流部で、ラフティングをしながらフライフィッシングやアウトドアサウナを楽しめるサービスを2026年に開始する予定。宿泊施設も用意し、独自の体験価値を提供する。
「ブランドには尖っている部分が必要。こうした取り組みを行うことで、ブランドとしてエッジを出していくことにつながる」(水口氏)。
5つ目は海外の強化だ。グローバルブランドに向けた展開を本格化する。韓国では9月に初の直営キャンプ場「スノーピーク エバーランドキャンプフィールド」をオープン。3Dドローンスキャンや空間技術を使って、予約前にキャンプ場の様子をシミュレーションができるなど付加価値も備える。韓国では9月時点で取扱店舗数が208店に上っている。
アメリカでは2026年に、ニューヨーク、ポートランドに続く新たな拠点として、シアトルに新店舗をオープンする。「アメリカは直営店やECが強いので、自分達でブランドをコントロールしながら、健全で大きな成長が期待できる」(同)。
中国も現地の関連会社をこのほど完全子会社化しており、2030年までに120店舗まで出店を加速する。中国ではキャンプの市場が大きくないため、店頭ではアパレルを中心に販売していく。
水口氏は「5つの施策には横展開できるものもある。これをしっかり進めることでエントランス、つまりお客様との接点を広げ、成長していきたい」と今後を見据える。
これらの施策によって、2030年までの5年間で売上の年平均成長率(CAGR)を日本で10%程度、海外で15%超伸ばし、全体で10%超の伸長を目指す。カテゴリー別では、ギアが10%程度、アパレルが15%程度の伸びを目標としている。
取材・執筆 比木暁
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