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トランジット/日本初ブランド成功の鍵は、情報発信と実行力

2014年12月12日 / 店舗流通最前線経営

トランジットジェネラルオフィスが手掛けるカフェレストラン「bills」やチョコレート専門店「MAX BRENNER」が好調な業績をあげている。

<垂水副社長>
垂水副社長

今回、トランジットジェネラルオフィスの取締役副社長CFOで、MAX BRENNERを運営するトランジットチョコレートサプライCEOを務める垂水謙児氏に、海外の飲食店ブランドが日本で成功するために必要な要因を伺った。

トランジットジェネラルオフィスは、ブランディングや飲食店運営などの事業を展開。2008年にシドニーのカフェレストラン「bills」の日本進出1号店を鎌倉市の七里ヶ浜に出店し、その後、パンケーキブームのきっかけを作り、横浜、お台場、表参道でいまも行列ができる店舗に育てた。

MAX BRENNERはイスラエルで創業したチョコレート専門店で、2013年11月に表参道ヒルズに1号店、同12月に東京スカイツリータウンに2号店をオープンした。両店とも行列のできる繁盛店で、2店合計で年間50万人が来店したという。

12月13日には、東京メトロ日比谷線広尾駅前の商業施設「広尾プラザ」に3号店を出店。2015年春にはJR大阪駅直結の商業施設「ルクア イーレ」に4号店を出店し、5年で10店体制を目指す計画だ。

海外ブランドが日本で成功する要因は?

垂水 海外でいま流行っているブランドだけではなく、これから流行りそうな店、業態、ブランドを見つける感性が必要だ。ただ、感性だけでは、成功できない。日本のマーケットでブランドが認知され、事業化できる過程は、偶然ではない。しっかりとしたロジックが必要で、まずは1号店の情報発信力が鍵となる。

情報発信力にはさまざま要素があるが、出店する店舗やブランドにあったロケーションにきちんと出店することが必要だ。billsはシドニーの海辺のビーチのシーンが、ブランドイメージにあり、1号店を七里ヶ浜に出店した。MAX BRENNERは、夢のチョコレート工場というイメージがあるが、ビーチのイメージではない。七里ヶ浜にMAX BRENNERを出店しても違和感があるだろう。

billsは、横浜赤レンガ倉庫、お台場に出店し、ブランドイメージを固め、表参道にも出店した。MAX BRENNERは、話題性づくりを重視し、表参道と東京スカイツリータウンというロケーションを選んだ。

日本初上陸ブランドは、当然、ブランド認知度がない。1号店でいかに情報発信をし、ブランド認知度を高められるかが勝負となる。MAX BRENNERは、1年間でテレビの100番組ぐらいに取り上げられた。おそらく日本で500万人程度の人が、MAX BRENNERを知っていると思う。ブランドを知っていて、実際に来店するのは1割ぐらいと考えている。10万人の来店を目指すなら、100万人にブランドを伝えるイメージだ。

情報発信力を高める要素は?

垂水 情報発信をする上では、まずは店舗のロケーションが大切だ。単に表参道というエリアではなく、トラフィックの多い場所に出店できるか重要な要素だ。例えば、表参道エリアで好調な海外ポップコーンブランドも、ロケーションはメインのトラフィックを押さえている。

テレビだけでなく、実際に来店したお客さんによる情報発信も必要となる。来店したお客さんが写真を撮って人に伝えたくなる、SNSに投稿したくなるメニューづくり、店舗の雰囲気づくり、接客も重要となる。

日本初出店というブランドは、テレビなどで取り上げてもらいやすいという点もある。その意味では、日本初出店、初ブランドという要素は有利だ。また、初上陸業態やメニューであれば、競合する店舗がないため、自分たち自身で、味わいや価格の基準を作ることができる。2番手、3番手では、他社が作り上げた基準を超える何かを加えなければ競争に勝つことできない。

ただ、なんでも日本初が良いわけでなく、ある程度市場が確立して、2番手で出店する方法もある。商品認知度が高まることで、市場が形成され、事業として成功する土壌が育つ場合もある。クロワッサンドーナツなどはその可能性があると思う。

海外の味わいは日本で通用するのか?

垂水 日本人の味覚は繊細であり、海外の味わいがそのままでは市場で受け入れられないこともある。甘味の要素は、海外と日本で違いが大きい。また、原材料の調達が日本国内となるため、本国とまったく同じ味わいを再現するのが難しいという課題もある。

原材料の安定供給や店舗オペレーションを含め、提供するメニューをきちんと詰める必要がある。海外のランセンサーが求める本国の味の再現と、実際の日本のマーケットで実現できる味、求められる味を、しっかりと話し合える環境づくりが不可欠だ。日本独自の成功を作り、それを海外にフィードバックさせるくらいのパートナーシップが必要だ。

提供するメニューの選定、価格設定など、考える要素は複数ある。単に海外メニューを円換算して、提供することはない。量目や店舗ロケーション、事業計画などを加味して、メニューと価格は決定する。

例えば、MAX BRENNERの看板メニューの一つであるチョコレートチャンクピザは1スライス420円で提供している。1号店の表参道というロケーションを考えると600円でも提供できる商品と思うが、多店舗展開を考えた時、ロケーションに合わせた価格設定で良いのかという課題もある。

店舗ロケーションごとに価格設定を変えるという選択肢もあるが、大切なのは、看板メニューでしっかりとブランドを打ち出せる商品を、手に取れる価格で提供することだ。

海外ブランドをしっかりと事業化するには、店舗のロケーションが1番重要で、次に情報発信があるが、それだけではない。結局は、実行力が決め手となる。狙った立地にきちんと出店できるのか、海外ライセンシーとの条件交渉をどうするのか、店舗ブランドにあったスタッフを採用できるのか、店舗の雰囲気はイメージ通りなのか、店舗オペレーションをどうするのか、それらを実現する資金調達力があるか。それが問われる。

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