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ファーストキッチン/「勝ちを知る組織」に改革、2022年は出店・DX強化

2022年05月17日 16:40 / 流通最前線トップインタビュー

2016年サントリーグループからウェンディーズ・ジャパンがファーストキッチンを買収し、新生ファーストキッチンとしてスタートを切ったと同時に社長に就任した紫関修氏は、チェーン全体を活性化するため「勝ちを知る組織」へ社内改革を推進している。2022年は、新たな出店形態も開発し、店舗増への戦略を加速する。チェーン全体の成長に向け、客層・商圏の拡大、DX強化、ドライブスルーといった新たな出店形態の開発など紫関社長に今後の展開を聞いた。

ファーストキッチン/「勝ちを知る組織」に改革、2022年は出店・DX強化

――社長就任以来約5年間の振り返りを聞かせてください。

紫関 ファーストキッチンは、ファーストキッチンブランド以外に、親会社のウェンディーズ・ジャパンとのダブルブランド「ウェンディーズ・ファーストキッチン」という業態を運営しています。競合チェーンがM&Aで合併することはあっても、ダブルネーム店舗は日本でも、世界でも珍しい業態だと思います。まず、社長就任以来、ウェンディーズ・ファーストキッチンというダブルネーム店舗を増やすということ、ファーストキッチンという40年以上続いてきた企業の改革の2つに取り組みました。ダブルネーム店舗についていえば、もともと私が就任する前、サントリーグループ時代、上野浅草口店と六本木店で両ブランドのコラボ店舗を出店したところ、ものすごく成功したのです。売上も既存店舗60パーセント以上伸びたという実績がありました。

――ダブルネーム店舗にポテンシャルを感じたのですね。

紫関 そこで、ウェンディーズ・ジャパンのアーネスト・M・比嘉会長がロングリーチというファンドの出資を受け、ファーストキッチンを買収し、ウェンディーズ・ファーストキッチンというブランドを広げることによって企業価値を上げていこうという方向性が決まりました。そして、より効果が高い場所からダブルネーム店舗に変えていくことに取り組みました。

その際、コラボ成功の理由としてあげられるのは、都心店において、インバウンド需要の高かった時期ですからアメリカのような商品が食べられ、日本以外のアジアにはあまりないブランドなので外国人観光客が取り込めたことがあります。また、女性客の多かったファーストキッチンに、ウェンディーズのボリューミーなハンバーガーを投入することで、男性客の需要も生まれたことが成功につながりました。そこで、新宿南口や赤坂見附など都心店からダブルネーム店舗に改装していきました。

<赤坂見附店>
ファーストキッチン赤坂見附店

――ファーストキッチンの社内改革については何に取り組んだのですか。

紫関 私がこの会社に入った時に、本社のほぼ全員と30分~1時間面談しました。その時にいろいろな質問をしたのですが、その中の一つの質問として「ファーストキッチンの強みは何?」と聞きました。そうしたらほとんどの人が、「人」と答えたのです。これは色んな意味が答えた人にはあったと思います。ファーストキッチンというのはサントリーの子会社であってかなり厳しい時代も過ごしてきたわけです。でも、リストラもせずに会社として存続してくれた、という意味で「人」という言い方をしたのだと思います。人に優しい、それはそれで素晴らしいことだと思います。

しかし、人は大切ですがぬるま湯じゃ駄目で、今後は独り立ちしなきゃいけない。そのためにはどうやって戦っていくのかということを、徐々にやっていったというのがファーストキッチンに対してのアプローチです。また、気になったのが「何が強みですか?」と聞いた時に誰も「商品」と言わなかったのです。ファーストキッチンしか知らない人たちがほとんどなので、なかなか「自分の弱みは何?」って言われると答えられるけど、「あなたの強みは何?」と言われるとなかなか答えられなかったのかなと思いました。

――まずは自分たちの強みを自覚することから始まったのですね。

紫関 自分たちの売っている商品に対して誇りを持つということが重要だと考えていたので、まずは誇りを取り戻してもらい、そのうちにもっとバリューがあって、価格が高いものを作っていこうよということをずっと言い続けてきました。

当初、マーケティングの人たちと話をすると「ファーストキッチンブランドでは400円以上の商品は売れないです」と言われました。今「クラシックバーガー」という、だしなど和のコンセプトを入れたパティを使った商品を作っているのですが、600円、700円の物も普通に売れます。その商品をただ単にリリースするということではなくて、本社の人間も含めて売っている人たち、店舗の人たちも含めて、ファーストキッチンというのはしっかりとしたブランドで、どんな価格でも売れるような価値のあるブランドだという、誇りを取り戻してほしいと思ってこの5年間やってきました。

<ブランドに誇りをと紫関社長>
ブランドに誇りをとファーストキッチン紫関社長

――ファーストキッチンというブランドに誇りを取り戻したわけですね。

紫関 プロダクトアウトでただ単に商品を作って「これ作ったので売ってくれ」と言ったら、もしかしたらそんなにうまくいかなかったかもしれません。やはりプロセス、売れるのだという自信を取り戻すということが重要だったのではないかと思います。私は以前さまざまな会社に在籍していましたから、駄目なところを指摘するより、ファーストキッチンの持っている潜在的な力、価値をちゃんと伝えることが大事だと考えました。「駄目なところを指摘し合ってそれを改善していくと会社は良くなる」と思っている人がいますが、強みだったり長所だったりを伸ばしたほうが絶対いいと思います。これは私が自分の子どもを育てるときもそうでしたが、駄目なことはいくらでも見つかります。しかし、褒めるのは難しくて、しっかり相手を観察しないといけないし、時系列をしっかり見ないといけないわけです。

――具体的にはどのような施策で自信を取り戻していったのですか。

紫関 地道にマインド作りから入っていきました。「失敗を恐れないカルチャーにしよう」と、口ではいくら言っても、やはり体験していかないとカルチャーとして根付きません。これを地道にやるしかない。会社を変えるとは、私はそういうことだと思っています。

具体的には、まず短期で達成できる目標設定を徹底しました。幹部陣には「目標設定するときに、届きそうな目標にしてください」と言います。人間はなかなか1年後の目標をバンッと突きつけられて「頑張れ」と言われてもなかなか頑張れないですよ。それよりは1カ月後の目標を立て、「勝った、勝った、また勝った」と成功体験を積み重ねると、会社の勢いがつくし、店も勢いがつくと思います。そういう目標設定の仕方ということをすることによって、勝つということが当たり前になっていく感覚、これが重要です。長期的目標だと、すぐに成果が見えないです。

また、まねしやすい成功事例のチェーン全体での共有を始めました。月1回マネジメントレターという名前で、フランチャイズオーナーと店舗に向けてレターを書いていますが、その中には私のメッセージ、考えていることや今やってほしいことなどのメッセージを伝えています。それに加えて、日別で過去最高売上を取った店舗、月間最高売上店舗、過去の同じ月で一番良かった店舗などを紹介し、店長やエリアマネジャーにそのために何をやったのかを聞いて、皆でその情報を共有しています。

ファーストキッチンのいいところを残しつつ、彼らの持っているポテンシャルをどう引き出すかということと、あとは「勝てる」「勝つ」ということに慣れる組織にするということ。改革はこれに尽きると思います。この会社をもう一回元気にするにはどうしたらいいか、ということをずっと考えてきた5年間ですね。

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