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ファーストキッチン/「勝ちを知る組織」に改革、2022年は出店・DX強化

2022年05月17日 16:40 / 流通最前線トップインタビュー

――社内改革がどのような成功につながったのでしょうか。

紫関 主力商品のハンバーガーのてこ入れもしましたし、2016年以降売り上げが大きく伸びた要因の一つに、2019年ジュエルタピオカのヒットがありました。もちろん「タピオカブーム」もありましたが、当社はこのタピオカを早い段階で導入できました。ある社員がジュエルタピオカというのを見つけてきて、まず、当時あった原宿店でテストをして好評を得たので、すぐ全店展開しました。大手チェーンのようにCMなど大掛かりな販促ができない分、われわれがどう戦っていくかといえば、スピードが最も大事です。いけると思った時に、それをすぐに具現化して、全店でいち早く展開する力、これが求められていると思います。

<セルフオーダーシステム>
ファーストキッチンセルフオーダーシステム

――セルフオーダーシステムなどの導入もコロナ前からいち早く取り組んでいましたね。

紫関 セルフオーダーシステムはかなり早くから構想し、業界でも早い段階で導入しました。社長就任時は人手不足が大きな課題だったこともあります。注文レジを機械に置き換えることはできると思ったのですが、われわれの商売で唯一顧客と従業員のタッチポイントはレジです。これをセルフ化するということの、実は私にはジレンマがありました。ホテルマン出身なので、ファストフードは単に商品を提供し、顧客は食事をして単に空腹を満たすだけではなくて、やっぱりそこに安らぎやおもてなしを求めているから店舗に来るのではないかと思っていたのです。ただ、セルフオーダーで省力化したぶん、そのほかのおもてなしにスタッフの力を使ってもらう方向に切り替えました。

――DXでは昨年の12月に顔認証決済の実証実験も開始しましたね。

紫関 顔認証決済のニーズがどこまであるのか探ると同時に、将来的に1on1のマーケティングにこのデータが利用できるのではないかと思い、実験中です。私がホテルマン時代、ドアマンで何千台という車の番号と顧客の顔を覚えている人がいましたが、このように究極的に、私だけのためにサービスしてくれる、私を気遣ってくれるということがサービス業に求められていると思っています。こういったことをファストフード業界で、できたらすごいなと思っています。それを実現するためのDXが必要です。ただ単にコスト削減とかではなく、より良いサービスのためには何ができるのか、手間を削減しても顧客には迷惑がかからず、その分をより良いサービスに振り分けられないかということは常に考えています。現在も自由が丘、川崎、東陽町のファーストキッチンの店舗でテストを続けています。今後、集まってきたデータをいかに分析し、どうサービスに生かすかが課題ですね。

<顔認証決済機能付きセルフレジ>
ファーストキッチン顔認証決済機能付きセルフレジ
※2021年12月1日実証実験発表会時撮影

――顧客対応の充実ではほかにどのような施策に取り組んでいますか。

紫関 コロナはゲームチェンジャーでした。2019年までは都心のダブルネーム店舗が、アメリカ風のハンバーガーを求める外国人、アジアから来たファーストキッチンが珍しい観光客、ボリューミーなハンバーガーを求める男性客などを呼び込んでくれました。しかし、2020年以降、都心は通勤客が減少し、インバウンド客も望めなくなってしまいました。そのため、客層の拡大に向け、プライス戦略を変更しました。2021年12月から500円、550円、600円のグッドプライスセットを導入しました。

大手チェーンでは客単価がセットで500円~600円が大きなボリュームゾーンで、こだわりの個人商店的な高級ハンバーガーショップだと1500~2000円になります。ウェンディーズ・ファーストキッチンは、セットで900円前後しますがボリューミーで、アメリカと同じようなものが食べられるのが強みでした。しかし、コロナで都心店の男性客、外国人需要が見込めない今、郊外・地方のファミリーや高校生など若年層を取り込むため、グッドプライスセットをしっかり訴求することによって、来店回数増、客層拡大を目指します。さらに、われわれの強みは「たまにちょっといい、高いハンバーガーを食べてみようかな」と思ったら、価格帯の高いボリューミーなハンバーガーという受け皿もあります。そのほか価格だけでなく、時間帯別のメニュー戦略も強化しています。

<時間帯別の戦略も強化と紫関社長>

――時間帯別の戦略を教えてください。

紫関 ファストフードの定番であるランチ以外のアイドルタイム向け商品を充実させています。アイドルタイムは今、和のデザートなどがありますが、ファーストキッチンの強みだと思います。この会社に来て、びっくりしたのは、平均月商が高いことでした。なぜなら、アイドルタイムと夜の売り上げが高いからなのです。アイドルタイムの売り上げが高い理由は、デザートが充実しているからでした。

今、日本から甘味所が減っていますし、和のデザートはシニアの需要が見込めます。また、若年層も和菓子を食べないわけではないですしね。夜の時間帯には、クラフトビールを試験販売する予定です。ウェンディーズバーガーというのは比較的ボリューミーなので、夕食でも対応できますし、夜ですとハンバーガーにコーラじゃなくてビールが飲みたい顧客の「ちょい飲み」「一人飲み」需要を取り込みたいと思っています。

<ドライブスルー型店舗ウェンディーズ・ファーストキッチン246秦野店>
ドライブスルー型店舗ウェンディーズ・ファーストキッチン246秦野店

――今後の店舗展開はどう考えていますか。

紫関 コロナ前は都心店が売上をけん引していましたが、コロナ流行後は郊外型店舗のほうが好調に推移しています。今年3月、チェーンとして初めてドライブスルー型店舗を開業し、郊外のファミリーなどの取り込みを図っています。また、郊外では従来型の店舗だけではなくてトレーラー型ドライブスルー店舗という、簡易的な形態で店舗を増やしやすくするという新しい出店にもチャレンジします。

――トレーラー型ドライブスルー店舗とはどのようなものですか。

紫関 トレーラーの上にコンテナを載せた新たな店舗を開発しました。コンテナ内にはキッチンや客席が備えられ、トレーラーという特長を生かし、店舗ごと移動することが可能です。この店舗は、撤退時に取り壊す必要がなくリユースできるほか、木材の使用量が少ないことから、環境に配慮しながら出店できると考えます。出店コストは、最大で従来の2分の1程度まで抑えられる見通しです。トレーラー型ドライブスルーの直営1号店は、今年夏以降にオープンする予定です。

<トレーラー型ドライブスルー店舗イメージ>

――新たな出店形態で出店戦略を加速すると。

紫関 大きい売り上げをやっぱり見込める立地は、しっかりとした店舗は作りますが、売り上げ規模がそこまで大きく見込めない立地でも出店できる形態をトレーラー型店舗で作ります。ガソリンスタンドと併設したり、パチンコ店、紳士服など広い駐車場を持っている業態に置いて営業したりということも場合によってはできるのではないか。新しいマーケットを作れるのではないかと思いチャレンジします。3月のフランチャイズショーでも今まで以上に引き合いが多く、今後、今まで以上にスピード感を持って出店し、店舗網を拡大していきます。

<出店を加速していくと紫関社長>
出店を加速していくとファーストキッチン紫関社長

紫関 修社長略歴
1985年:東急ホテルチェーン入社
1994年:ボストン大学経営学修士(MBA)取得
1994年:さくら綜合研究所入社(現日本綜合研究所)
1997年:日本マクドナルド入社
2005年:ゴルフパートナー入社、取締役副社長就任
2010年:ゼビオ執行役員就任(兼務)
2011年:ヴィクトリア取締役就任(兼務)
2012年:ユニマットホールディング執行役員就任
2012年:フレッシュネス代表取締役副社長就任
2014年:フレッシュネス代表取締役社長就任
2016年:ファーストキッチン代表取締役社長就任(現任)

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