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経産省/飲料配送で貨物の毀損範囲、廃棄負担や料金明確化提言

2019年07月29日 18:24 / 行政

国税庁、農林水産省、経済産業省、中小企業庁、国土交通省は7月26日、飲料配送の関係者や法律の専門家を構成員とする「飲料配送研究会」を立ち上げ、「飲料配送研究会報告書」を発表した。

「飲料配送研究会」は、飲料配送に関係する飲料メーカー、卸、物流事業者、法律家、学識経験者、関係団体で構成する組織。清涼飲料メーカーではコカ・コーラボトラーズジャパン、サントリー食品インターナショナル、アルコール飲料メーカーではアサヒビール、キリンロジスティクスグループ、卸は三菱食品、小売はイオングローバルSCM、運送事業者は日本通運など7社などが参加している。

報告書では、飲料配送における貨物の毀損範囲、廃棄負担、配送に係る料金の明確化を提言した。

<配送可能な資材の傷>
配送可能な資材の傷

飲料については、配送中に荷崩れが発生した場合、炭酸漏れなどの商品の毀損状況が外観から判断しづらい面があり、商品に毀損が生じた場合、毀損範囲の決定や、毀損した商品の費用負担などについて、荷送人又は荷受人と運送事業者の間でトラブルが発生するケースがある。

これは、飲料配送に関わる関係者間で、毀損範囲の決定や、廃棄の費用負担などに関して、法律や標準貨物自動車運送約款を踏まえると、どう処理すべきかについて、これまで十分な整理がされていなかったことに起因する面も大きいと考えられている。

今回、飲料配送の関係者や法律の専門家を交えて検討を行い、荷崩れなどに際しての処理に関して、法律や標準貨物自動車運送約款も踏まえて、「飲料配送研究会報告書」を取りまとめた。

報告書は、荷崩れなどが発生した際に、標準貨物自動車運送約款に従うとどのように処理をすべきか、当該約款の適用について明確化したもの。

今後は、現場において報告書に沿った処理がなされるよう、関係省庁が連携して飲料配送の関係者に周知を行う。

<配送不可な場合>
配送不可な場合

包装資材(段ボール)の扱いは、包装資材は輸送、保管時における商品保護のためのツールであり、商品である中身が毀損していなければ、包装資材に傷や汚れがあったとしても、包装資材の傷がその後の輸送や保管等に支障をきたす場合、カートン表示(JANコードなど)が読みとれない程度に汚れているため荷受できない場合、別に特約がある場合を除き、そのままの荷姿で販売することについて、SDGsの目標の一つである廃棄物削減、食品ロス削減の観点からも許容されるべきとしている。

貨物の毀損範囲の判断について、飲料の配送に当たり、商品である中身の毀損の状況が外観から判断しづらい場合があること、商品である中身の毀損の状況を個々に確認しようとした場合に包装資材を開封するなど時間や手間がかかる場合がある。

そのため、商品である中身について個別に判断する方法に加えて、包装資材の傷み具合に応じて商品である中身の毀損の程度を推定する方法も取り得るところである。その場合、特に資材の傷み具合の場合については、貨物の毀損の範囲について、包装資材の外観が判断基準となるため、飲料メーカーと運送事業者の間で基準に関する理解が十分共有されていないとその判断に差違が生じやすくなることから、飲料メーカーと運送事業者の双方が理解しうる合理的な基準を共有するべきとしている。

また、飲料メーカーは、判断基準を作成・共有されていない状態で、やむなく出荷が行われる場合など個別に荷受けの可否を判断せざるを得ない場合は、運送事業者と協議の上で、貨物の毀損の範囲を決定することが求められる。

毀損の範囲の決定方法について運送事業者との協議が調わなかった場合には、原則に従い、毀損があることを1品ずつ飲料メーカーが確認する必要がある。

さらに、運送事業者が安定した運送を行うために、運送距離に応じて、パレット積みに際しての包装資材の糊打ちやストレッチフィルム巻きなどの措置が必要であると判断した場合は、それらの措置を荷送人において適切に行うことが原則となる。

荷送人・元請運送事業者として、適切な運送のためにはストレッチフィルム巻きが必要と考えるのであれば、ストレッチフィルム巻等を運送事業者に委託する場合には、その旨及びそれに伴う作業コストの明確化を契約において図ることが重要であるとしている。

毀損に伴う損害賠償の対象については、標準貨物自動車運送約款における損害賠償の額に関する規定(標準貨物自動車運送約款第47条)からも、実際に毀損している商品がその範囲となる。

<実際に毀損している商品がその範囲となる>
実際に毀損している商品がその範囲

その一方で、荷受人が包装資材を開封する等個々の商品の単位で特定を行うことが手間や時間がかかる等の理由から、効率性を考慮して、包装資材の外観から毀損の範囲を推定る方法も実務上とりうるところであるとしている。

<基準に基づいて推定される毀損の範囲を損害賠償の対象とする>
基準に基づいて推定される毀損の範囲を損害賠償の対象

あらかじめ飲料メーカーと運送事業者との間で共有された判断基準があり、それに従って処理が行われるのであれば、その基準に基づいて推定される毀損の範囲を損害賠償の対象とする方法もとりうるものと考えられる。

今後も、実際の飲料配送では、発着荷主が荷出し・荷受けを他者に委託している場合や、元請運送事業者が運送委託を行う場合など委託関係により複層の構造となっている場合が多く、報告書で示した取り決めが行き渡りにくい点があることから、関係者間で理解の共有化が進むよう周知を図るなど、研究会において引き続き必要な検討を行うこととする。

また、荷送人又は荷受人(卸売事業者及び小売事業者等)が運送事業者に、契約で明確化されていない、運送以外の役務(貨物の積込み又は取卸し、荷造り、仕分け、保管、検収・検品、横持ち・縦持ち、棚入れ、ラベル貼り、その他貨物の取卸し後等の清掃・後片付け等)を依頼する場合は、それらの役務がコスト化され、追加の料金として明確化される必要がある。

荷送人がより質の高い運送(速達性のほか、貨物の毀損や延着が生じにくい特別な運送サービスなど)を求める場合には、そのような取扱いをすることについてコスト化され、付加的な輸送対価として明確化される必要があると解説している。

■飲料配送研究会報告書
https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190726003/20190726003-1.pdf

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