川崎重工業ほか／自動配送ロボットでフードデリバリー、西新宿で実験

2023年01月31日 17:10 ／ IT・システム

川崎重工業、ティアフォー、KDDI、損害保険ジャパン、menu、武田薬品工業の6社は1月31日、東京都の「西新宿の課題解決に資する5G等先端技術サービス」での取り組みとして、5Gを用いた遠隔監視で運行する複数台の配送ロボットを使った食事・医薬品などの自動配送サービスを提供すると発表した。同日、メディア向け取材会を行った。

＜6社の代表と配送ロボット＞

プロジェクトテーマは「ヒトが移動する街からモノが移動する街、スマートシティへ」。5G通信環境と自動配送ロボットを組み合わせた自動配送サービスの実現を目的としたもので、人口減少に伴う物流業界の人手不足も解決する。

実施期間は1月23日～2月10日まで。東京都新宿区西新宿周辺の約4キロを走行する。フレッシュネスバーガー新宿三井ビル店、京鼎樓新宿住友ビル店、AFURI 新宿住友ビル店の商品を京王プラザホテルまでデリバリー。取材会当日には、東京医科大学病院から血友病患者向けに処方箋医薬品も配送した。

2022年の公道配送実証に引き続き、西新宿エリアで、5Gを活用した配送ロボットによる自動配送サービスを一定期間提供し、事業性を検証する。各課題を抽出し、同エリアでの継続的なサービス提供や、東京都内の他エリアへのサービス拡大の早期実現を目指す。

各社の役割分担として、川崎重工業が全体統括、配送ロボットの開発、自動配送サービス提供を担当。ティアフォーが自動運転や遠隔監視など各システムの開発・提供を担う。KDDIが5G通信環境を用意し、損害保険ジャパンが自動運転リスクアセスメントやロボット専用保険を提供する。ユースケースの供給は、フードデリバリー全般を管理するmenuと、医療機関との連携を支援する武田薬品工業の2社が務める。

＜自動配送ロボット「FORRO」＞

今回使用するロボットは、川崎重工業のロボティクス技術と4輪バギーの走破性を組み合わせた「FORRO」。特徴的な車輪を持ち、前回の実証時とは別物となる。同社の社長直轄プロジェクト本部石田正俊本部長は「4センチの段差を超えられる走行性の良さに加え、小回りが利いて安定している」と説明する。

＜川崎重工業の井上課長代理＞

2022年の実証との差異について、川崎重工業の社長直轄プロジェクト本部近未来モビリティ総括部の井上健輔課長代理は、「昨年度の目的は、技術の検証であったり、どういったユースケースが自動配送サービスに適合するかなどを考えた上で、どのような課題があるかを洗い出すこと。今年度は実際に一定期間サービスを提供することで、運用面・技術面の課題、あるいは収益性やコストなど事業面での課題や実現性を検証するのが狙いだ」と述べた。

＜配送ロボットを使ってフードデリバリー＞

具体的なサービス内容は2つ。1つ目は、配送ロボットを使ったフードデリバリーサービスで、人手が足りなくなる雨天時や夜間での配送ロボットの適応可能性などを検証する。商品の保温機能など、配送ロボットならではの配送品質アップにも着眼し、配送サービスを行う。

実施期間は1月23日～2月10日まで。東京都新宿区西新宿周辺の約4キロを走行する。1月31日のメディア向け取材会では、フレッシュネスバーガー新宿三井ビル店の商品を京王プラザホテルまで配送した。

＜オンライン診療・服薬指導後に薬を自動配送＞

2つ目は、患者の負担軽減を目的とした、配送ロボットを用いた医療物資配送・回収サービス。オンライン診療・オンライン服薬指導に加え、配送ロボットによる自動配送サービスを組み合わせる。こちらの実施は、1月31日のみ。オンライン診療・服薬指導からロボットによる医薬品配送と、医療廃棄物の回収まで一連の流れを検証した。

走行エリアは、東京都新宿区西新宿周辺の1.2キロ区間。東京医科大学病院から血友病患者向けに処方箋医薬品を配送し、京王プラザホテルで医療廃棄物の回収を行った。配送ロボットならではの「非接触」、遠隔監視による「荷物のトレーサビリティ」、かさばる処方薬などの「重量物の配送」といった利点を検証し、患者のアドヒアランス（治療の継続性）向上や、医薬品を安全かつ効率的に医薬品を届けるための知見も収集している。

サービスを利用した患者は、「2か月分の薬を処方されると荷物が多く、これまでは何処にも寄らずに帰宅するほかなかったので、配送は便利だと思う。肘や関節を曲げられない人は（ロボットから配送物の）出し入れに苦労するかもしれないが、私の場合、不便はなかった」と話した。