社員のフリーランス化、大胆な働き方改革に挑戦
――積極的な事業展開に人材開発、働き方改革が欠かせませんね。
谷田 2017年から、社員の主体性を重視した人事改革を開始しました。社員のフリーランス化という大胆な働き方改革に取り組んでいます。今年1月から3期目になるのですが、現在21人が個人事業主として働いています。総務、開発、デザイン、営業などさまざまな部署に所属しています。
6月26日にこの人事改革について、詳細を語った著書『タニタの働き方革命』(日本経済新聞出版社刊)も出版しました。具体的に参考になればと、フリーランス1期生メンバーの確定申告を掲載し、実際の収入面の変化も公表しています。
社員のフリーランス化により、社内組織が空中分解するのではないかとの懸念の声もありましたが、新制度導入前後に外部機関の組織診断も受け、定量的な改革前後のデータも公開しています。
――なぜフリーランス制を導入したのですか。
谷田 私は、社員が主体性を持って働いてもらうには、フリーランス制がいいと思いました。働き方改革では、ともすれば残業規制ばかりが取り上げられます。しかし、労働時間の削減だけでは本当の働き方改革はできないと思い、社員に主体性を持ってもらうことを重視した改革に取り組んでいます。
当社の仕組みはまだまだ完成していませんし、こういう方法があると思ってもらうのが第1歩だと考えています。いい意見があれば、積極的に取り入れ、改良したいですね。新しい働き方への提言であり、ご意見いただいて、ブレイクスルーを助けていただきたいと思って本を書きました。
――人事制度改革の今後の課題は何でしょうか。
谷田 個人事業主の信用の問題が新制度にとって、大きな障壁です。日本社会は、人が何らかの会社に所属していることが前提です。フリーランスだと家を買うにも、ローンを組みにくくなりますね。会社員でない個人事業主は、車一つリースするにも高い料率を提示されてしまい、苦労します。
政府が働き方改革を提唱し、フリーランスといった旧来の雇用形態から離れた働き方にも光を当てていただき、信用面でのサポートもお願いしたいです。
――数々の新規事業、改革のアイディアはどこから生まれるのでしょうか。
谷田 イノベーションは、同じような業界の人と話していては生まれないというのを実感しています。
タニタ食堂をはじめたことで、他業種の方と話す機会が増え、彼らの何気ない一言でアイディアがひらめくことがあります。
現在、クラウドファンディングで集めた資金により、ゲームのコントローラーの商品化を進めているところで、考えのまったく違うゲーム業界の方との対話は刺激的です。自分と違う視点の方と話すときに思いつくことが多いです。
趣味は事業で、ゲームをしていても、何を見ていても、事業のネタにならないかなと思って見ているので、仕事と趣味のボーダーラインはないですね。
――次の10年に向けて抱負をお願いします。
谷田 もともと当社は、シガレットケースを出発点としており、その後トースター、体重計、体脂肪計などの製造に変更、製造業の分野でも転換を繰り返し、法人として脱皮してきた歴史があります。その経験値があると私は信じています。今後、顧客ニーズとチャンスがあれば、業態転換にも恐れはありません。もっともっと面白いことをやっていきたいと思っています。
■プロフィール
1972年生まれ
1997年:佐賀大学理工学部卒業
1998年:船井総合研究所入社
2001年:タニタ入社
2005年:タニタアメリカ取締役
2007年:タニタ取締役
2008年:代表取締役社長就任(現職)
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