ファミリーマート/澤田社長「市場は飽和。加盟店との信頼関係が問われる」

2020年01月15日 17:10 / 流通最前線トップインタビュー

ファミリーマート/澤田社長「市場は飽和。加盟店との信頼関係が問われる」

経済産業省が実施したコンビニ本部ヒアリングで、ファミリーマートの澤田貴司社長は、「残念ながら市場は飽和している」との考えを示した。一方で、「地域異常密着」を掲げ、飽和市場でもファミリーマートは成長できるとも語る。今後のコンビニ市場での戦い方を澤田社長に聞いた。

加盟店がフランチャイズ本部を選ぶ時代に

――経産省のヒアリングの時に、市場の飽和という話をされていましたが、どうやって成長していくのですか。

澤田 残念ながら、少子高齢化、人口減少などを背景に、市場は飽和していると思っていますが、僕はまだまだ、コンビニは成長の余地があると思っています。一方、そのためには加盟店との信頼関係を築き、地域に異常なくらいに密着していくことが大切になると思います。

――信頼関係を築きオーナーに選ばれるチェーンになる必要があると。

澤田 当然、その必要があると思います。「ファミリーマートは、本当に良いチェーンだ」と、皆さんに思っていただけるようにならなければいけません。

大量出店をして店舗を拡大するという時代は、終わっていると思います。いままでのコンビニは、店舗を増やして売上・利益を作っていく発想でした。しかし、人口が減少している中で、もうマーケットに十分(店が)あるわけです。僕は社長就任からずっと同じことを申し上げています。

――来期以降の出店、閉店も今年並みですか。

澤田 具体的な計画は現在策定中ですが、店舗の開発担当者には、収益性の高い店舗を出店することを繰り返し伝えています。単純に、数を追い求めるような出店は一切しません。そのような出店は、加盟店さんにご負担をかけるので、ナンセンスだと思っています。

――売上は追わないのですか。

澤田 もちろん売上は大切です。しかし、僕が大切にしているのは、本当に加盟店さんからの信頼感No.1チェーンになることと、加盟店さんの利益です。トップライン(売上)は、後からついてくると思います。

――新しいひとつの成功モデルができて、それが拡大する可能性はどうですか。

澤田 それもないと思いますよ。逆に申しますと、そのようなことはあまりしたくないですね。適正な成長をしていきたいです。一番は、加盟店さんと信頼関係を築いて、地域の皆様に喜ばれるような状態を作り上げたいですよね。僕は客数が一番大事だと思います。客単価を上げて、売上を作るのは、あまり健全ではないと思います。

――24時間営業の深夜の需要はどう見ていますか。

澤田 あくまでもその店舗の立地によると思います。1店1店のマーケットを見極めていかないといけません。もちろん、需要が全くないところで24時間営業をする必要性はないと思います。

――全体的に深夜営業はしない方がいいという声もありますが。

澤田 地域によってニーズは全く異なります。24時間営業をどうするかという議論ではなく、いろいろな選択肢を用意して、加盟店さんと一緒になって考えることが必要です。市場は常に変化しているので、その変化に合わせていくことが小売業で大切だと思います。ただし、合わせていく上では、一定のルールを決めていく必要が出てくると思います。

時間がかかる「地域異常密着」の信頼関係

――ファミリーマートは地域異常密着ということを掲げていますね。

澤田 それ(地域異常密着)しかないと思っています。地域に密着するためには、時間がかかります。加盟店さんとの信頼関係が一番大事で、信頼関係があってこそ、加盟店さんと我々社員が一体になって、お客様に対してコミュニケーションできると思います。

大量出店するには、大量にスーパーバイザーを教育する必要があります。ですから、大量採用、大量即席栽培、大量異動、大量出店のような構図になってしまいます。

――大量出店が大量異動を生み出しているのですね。

澤田 全国で展開している以上、出店数に関わらず異動はある程度発生しますが、今年の春から人事異動の考え方を変えて、できる限り地元で働けるようにしています。また、スーパーバイザーが担当する店舗も、頻繁に変えないように指示を出しています。

例えば、淡路島では、スーパーバイザーを職住近接にして地域密着し、加盟店さんとのコミュニケーションの時間を増やす取り組みを始めました。以前は、神戸市から瀬戸内海を渡って訪店していましたが、それをやめて、淡路島に住むように変えました。スーパーバイザーの運転距離が3分の1になり、在店時間が2倍になりました。その結果、客数も増加しました。

僕は、いろいろなお店にお伺いしてきましたが、「活気があるお店はしっかりと理由がある」と思います。お客様との距離が異常に近く、加盟店さんが、お客様のことを良く分かっていると思います。

――信頼関係を作るうえで大切なことは何ですか

澤田 僕は、(加盟店さんの)誕生日に、スーパーバイザーが自然とお祝いするような、温かい家族のようなチェーンを作っていきたいです。しかし、それには時間がかかります。話したり、食事したり、いろんなことを一緒に経験して、はじめて信頼関係ができると思っています。

――元々コンビニは地域の酒屋さん、米屋さんなど地域に密着した店でしたが、そこに戻るということですか。

澤田 先祖返りをすればいいと思います。それが正しいことであれば、僕はやっていきたいと思います。

――棚割りでは、昔は地域の調味料などがありました。今はプライベートブランドが増えています。地域密着の品ぞろえはどう考えていますか。

澤田 僕はバランスだと思います。地域に合わせたマーチャンダイジングを進めていきます。一方、工場のスペックや品質管理、原料の調達や生産性などは、本社にノウハウが蓄積されていますので、中央で把握します。地域に全部、権限移譲して、地域が全部、決済するようなやり方が効率的ではないと思います。

例えば、関西地方の加盟店さんと一緒になって、どのような商品を開発していくのか、どのようなものを作ったら、お客様に喜んでもらえるかを考えています。実際に、加盟店さんが考案した商品は好調です。

原動力は「仕事が好き。良い仕事がしたい」

――異業種との協業についてはどう考えていますか。

澤田 なかなかトップラインが上がらない現実があるので、いろいろな方のお力を借りながら、トライしていきたいと思います。良いものはお互いに活用して、一緒にやるということを繰り返しやっていきます。自分たちでも頑張るし、かつ、いろんな方のお力を借りながらチャレンジをする、それを繰り返すしかないと思っています。マーケットが飽和する中では、いろんなことにトライしていかないと、何も見えてこないと思います。

――新しい施策のファミペイは400万ダウンロードを突破しましたね。

澤田 皆様のお蔭で順調なスタートをきっています。今後もさらに便利でお得なアプリとして、さまざまな機能を充実させていきたいと思います。

――社長は、ものすごい体力を使う仕事で、ハードワークですね。

澤田 体力がなければ社長は正しい経営判断ができないと思います。ですので、日々のトレーニングは欠かせません。今日もしっかり筋トレをやってきました。社長が元気でないと、会社は絶対に元気になりません。そもそも僕は仕事が大好きだから、全然、ハードワークと感じたことはありませんよ。

――ご自身をそこまで動かす原動力は何でしょうか。

澤田 今、この瞬間も頑張っている加盟店さんや社員に報いたい、お客様に喜んでいただきたい、その想いに尽きます。今、僕がここにいることができるのも、皆様のおかげだと思います。本当に「感謝」の一言しかありません。

■澤田貴司(さわだたかし)氏のプロフィール
1957年7月12日生まれ(石川県出身)
略歴
1981年4月:伊藤忠商事入社
1998年11月:ファーストリテイリング取締役副社長
2003年2月:キアコン設立 代表取締役社長
2005年10月:リヴァンプ設立 代表取締役社長(兼)CEO
2016年3月:ユニー・ファミリーマートホールディングス(UFHD、現ファミリーマート)顧問
2016年4月:リヴァンプ会長
2016年5月:UFHD取締役専務執行役員社長付
2016年9月:旧ファミリーマート社長
2017年5月:UFHD取締役副社長執行役員事業統括本部CVS事業部長
2018年3月:UFHD取締役副社長CVS担当
2019年5月:UFHD社長(UFHDによる旧ファミリーマートの吸収合併により同年9月から現職)

■ファミリーマート/澤田社長「情報は自分で取りに行く」SNS活用経営の現場報告
https://www.ryutsuu.biz/column/m010005saizen.html

トップインタビュー/大和ハウス工業 下西佳典取締役専務執行役員

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