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ファミリーマート/澤田社長「情報は自分で取りに行く」SNS活用経営の現場報告

2020年01月10日 16:40 / 流通最前線トップインタビュー

ファミリーマート/澤田社長「情報は自分で取りに行く」SNS活用経営の現場報告

ファミリーマートの澤田貴司社長は、インタビューで「組織って、そんなもの」と現場の情報が経営陣に上がりにくい状況を語った。一方で、加盟店支援策として、「時短営業」選択制、季節商材の完全予約制、24時間分担金の増額など、次々と施策を打ち出した。施策の背景にある現場、加盟店のリアルな現状を社長として、どう把握しているのか。今回、SNSを活用した澤田流経営術の現場を聞いた。

社長に情報は上がってこない「組織って、そんなもの」

――経済産業省の「新たなコンビニのあり方検討会」では、加盟店の現状について「良い情報しか経営者に上がっていない」と指摘されていますが。

澤田 僕は今までいろんな会社で社長を経験させていただきましたが、組織って、そんなものですよね。やはり組織って、上に行けば行くほど、情報が上がりにくいというのは事実です。そんなものですよ。

まず、「そんなものなんだ」というのをトップは理解しなければいけない。「自分のところに情報は上がってこないんだ」「所詮、そんな立場なんだ」「社長が一番、知らないんだ」ということを、自分が本当に、分かっていなければいけないと思います。

――社長として、どうやって問題を見つけているのですか。

澤田 まず、どうやって情報を取りに行くかを考えないといけない。僕は、LINEで300人くらいの加盟店さんとつながっているので、常に生の現場の情報が入ってくる。それだけでなく、いろいろなところで加盟店さんとミーティングもする。もちろん店舗も訪問する。全国各地のディストリクトの部長や所長をはじめ、社員とも話をする。

でも、やっぱり僕が行くとみんな忖度する。ですから、まとめてくる情報だって、僕に耳障りの良いことをまとめてるなって思って聞く意識を持っています。「それ、本当か」みたいな。だから、「本当に感性を研ぎ澄ましていないと、(情報は)入ってこない」ということを分かった上で、あらゆるミーティングに臨まないといけないし、それでも入ってこないと思わないといけない。

――組織の特性って「そんなものだ」って思うことが大切なんですね。

澤田 あなただって、悪い情報をボスに上げにくいでしょう。

――たしかに上げにくいですね。

澤田 やっぱり、そんなもんですよ。でも、ボスがそう思ってるかどうかって、極めて重要だと思います。トップは「自分は裸の王様だ」と思っておかないとダメですよね。

――それでもあえて、情報が上がってくる仕組みづくりはできますか。

澤田 自分が動くしかない。組織として情報を経営陣に上げる仕組みはもちろんありますが、それは、ワンオブゼム(one of them)であって、自分が相当、動かないといけないんじゃないかと思います。動かずして「上がってこない」と不満をいうのは、「僕が仕事していない」ってことだと思いますよ。

社内SNSで社長の日常も情報発信

――社内のコミュニケーションの現状を教えてください。

澤田 まず会社として社員に伝えたい情報を、毎月整理し、「マンスリーメッセージ」という動画を作っています。そこでは、12月だったら、先月11月の結果を踏まえて、僕が何を感じているか、今後どのように対応していって欲しいかを、7、8分程度にまとめて、毎月配信しています。僕が今、何に危機感を感じているのかを自分の言葉で伝えることが重要だと思っています。

もう一つGoogleさんの仕組みを使って、社内SNSを作りました。そこには、毎日、僕が何をしているのかが、投稿されていくんですよ。

例えば、沖縄に行っている、加盟店さんと会っているなどを公開しています。掲載する内容は、映像の時もありますし、写真の時もあります。だから、僕が何を考えているのか、何に対して危機感を覚えているのか、何をしたいのかが理由も含めて、伝わっていくと思う。こうやって、社内でも、コミュニケーションが活発になっていくのではないでしょうか。ほぼ全社員がこのSNSを閲覧していますよ。

――LINEは加盟店版のほかに、社員版もあるのですか。

澤田 もちろん、社員ともLINEを使ってコミュニケーションする時もありますよ。思い立ったらすぐに発信、それが基本です。

――加盟店さんとのLINEでは、どんなことがありましたか。

澤田 例えば、ある加盟店さんから、「バッジ(名札)の文字が消えてしまうって」とのお声をいただいたことがあります。調べたら、バッジの上から文字が印刷されていました。すぐに直すよう、指示を出しました。その結果、直ちに改善されたのですが、その状況をLINEで報告したら、その加盟店さん、とても感激して喜んでくださいました。問題が判明したらすぐ対応することは、当たり前のことですが、そのように加盟店さんの反応がすぐに分かることは、僕は大事だと思っています。

――社長がやっているようなことをスーパーバイザー(SV)にもやってほしいですか。

澤田 強制するつもりはありません。でも僕がいいと思ってやっている理由を、しっかりと理解してもらわないといけない。

そのためには、時間もかかるし、年月もかかる。やっぱりキャッチボールが必要ですよ。苦労も共にしなきゃいけない。信頼関係だと思います。

このようなことを丁寧にやっていける、そのような会社にしたい。ただし、バックインフラは、異常なくらいハイテクでありたいです。ファミペイとか、ITの分野にはしっかり投資していきます。もちろん、素晴らしい商品開発も続けます。社員には、「僕も含めて、成長しないやつはダメだ」と言っています。優秀な社員をバンバン登用する。この組織は、強烈に変わっていくと思いますよ。

――メールでコミュニケーションをとる経営者もいますが。

澤田 もうそんな時代じゃないですよ。特定のコミュニケーションツールこだわっていてはいけないと思います。道具が進化しているのに、メールがいいだとか、社内ルールがどうだとか、リスクはどうだとか、いろいろご意見があるのは承知していますが、まずやってから言ってほしいと思っています。そもそも問題解決をするために、コミュニケーションをとることが目的ですよね。

あらゆる方法を使って、僕は、純粋に加盟店さん、社員と一緒になって、どんどん問題解決をしていけばいいだけの話であって、「そこにルールはない」というぐらいに、社内で言ってますけどね。

社員とは「加盟店の課題を共有」迅速に対応

――LINEでつながっていない社員とのコミュニケーション格差はないのですか。

澤田 あまり関係ないですね。しっかりコミュニケーションがとれれば、いい動きは出てきますよ。例えば、今日ね、これちょっと見て欲しいんですが、プライスカードがありますよね。従来のものは、商品名と価格しか書いていないので、どの商品のことを指しているのか分かりにくいんです。ところが、この新しいタイプは、(プライスカードに)写真がついてるんです。だから、お客様にとっては商品名と価格も一目瞭然ですし、ストアスタッフにとっても、どこに何を置くが全部、分かるんですよ。

<写真付きプライスカードを説明する澤田社長>
写真付きプライスカードを説明する澤田社長

加盟店さんとのコミュニケーションから出てきた課題を、社員が一生懸命考えてくれたんです、おもわず「みんな良く考えた!」と褒めてしまいました。これ(写真付きプライスカード)は、もうすぐ導入決定する予定ですよ。

――写真付きプライスカードはどんな効果がありますか。

澤田 これで、ストアスタッフの作業時間が4割減少します。オペレーションがとても楽になる。外国出身の方でも、作業が非常に楽になるし、不安もなくなると思います。何より、お客様からクレームをいただくこともなくなります。

良い店は、本当に商売を楽しんでいる

――LINEなどを活用したコミュニケーションの有効性は分かりました。一方で、加盟店との直接のコミュニケーションはどうですか。どんな基準で訪問する加盟店を決めていますか。

澤田 訪問する加盟店さんの決定は、現場に任せています。忖度しないで、選んでもらっています。でも、それでも何かしらの意図を感じることがないわけではありませんが、それも、現場の社員が考えたことですので、ちゃんと受け入れています。

いろいろな加盟店さんがいらっしゃいますよ。厳しいお叱りを受けることもあります。それでも、本当に真剣に、しっかり1人1人のお話を聞きます。「今現場で起きていること」を直接聞きます。とにかく聞かないと何も始まらないです。

――「良い店」とは何でしょうか。

澤田 私が考える良い店とは、加盟店さんが本当に、商売を楽しんでいるお店ですね。「今日も頑張ろう、お客様が来てくれることがうれしい、ピークタイムに向けてこのような売場を作ろう、このような発注しよう、あれもしたい、これもしたい」って、ずっと考えていますね。それをスーパーバイザーが支援していく。それがやっぱり良い店ですよ。本当に商売を楽しんでいて、地域の皆様との信頼関係が厚い。悪いことも人のせいにしていません。本当に頭が下がります。

■澤田貴司(さわだたかし)氏プロフィール
1957年7月12日生まれ(石川県出身)
略歴
1981年4月:伊藤忠商事入社
1998年11月:ファーストリテイリング取締役副社長
2003年2月:キアコン設立 代表取締役社長
2005年10月:リヴァンプ設立 代表取締役社長(兼)CEO
2016年3月:ユニー・ファミリーマートホールディングス(UFHD、現ファミリーマート)顧問
2016年4月:リヴァンプ会長
2016年5月:UFHD取締役専務執行役員社長付
2016年9月:旧ファミリーマート社長
2017年5月:UFHD取締役副社長執行役員事業統括本部CVS事業部長
2018年3月:UFHD取締役副社長CVS担当
2019年5月:UFHD社長(UFHDによる旧ファミリーマートの吸収合併により同年9月から現職)

■ファミリーマート/澤田社長「市場は飽和。加盟店との信頼関係が問われる」
https://www.ryutsuu.biz/column/m011540saizen.html

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