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粉ミルク/少子高齢化で「大人向け粉ミルク」が市場を拡大

2018年09月04日 14:30 / POS分析

本稿は、流通現場における製配販それぞれのマーチャンダイジング提案活動を、POSデータ分析を中心にいろいろな角度からサポートするマーチャンダイジング・オン(MDON)が、ホームページで連載している「RDSから見る売上トレンド」を、一部編集した上で「流通ニュース」に転載するものです。

粉ミルク市場は大人向けの登場で成長カテゴリーに変化

ちょうど1年ほど前に、各種メディアでも取り上げられていた粉ミルクの話題を覚えていますか?当時は、高齢者の基礎栄養とカルシウムの摂取補助などの目的で需要が伸びていると話題になっていました。

最近また粉ミルクの話を公私共に耳にする機会が多かったので、「大人向け粉ミルク」をRDS-POSで調べてみました。今回は、特定の商品をグループ化し分類を作って分析できるPOS分析ツール「Plano-POS_My属性機能」を活用しました。

注:RDSとは、食品・日用品を中心に取り扱い、POSシステムを導入している全国の小売業(総合スーパー、食品スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア等)からPOSデータを収集、整備、データベース化したもの。

まず、「大人向け粉ミルク」商品がどれだけ発売されているのかを調べてみました。

<大人向け粉ミルクの商品一覧(順不同)>
大人向け粉ミルクの商品一覧(順不同)

大人向け粉ミルクは2014年4月に発売された救心製薬の「大人の粉ミルク」(9.5g×7袋希望小売税別価格1600円・9.5g×30袋5500円)が先駆けの商品のようで、2016年10月には森永乳業が通販限定で、大人のための粉ミルクとして「ミルク生活」を発売します。

森永乳業は2018年2月に店頭販売商品として「ミルク生活プラス」(300g2250円)を投入し、「ミルク生活」(300g1950円)をリニューアルし、販路を通販に加えて店頭販売にも拡大しています。

森永乳業のプレスリリースによると、「ミルク生活」の2017年2月~2018年1月までの出荷金額は計画比30%増以上の実績だったそうです。

大人向け粉ミルクを明確に打ち出していませんが、雪印メグミルクが2016年8月に特定保健用食品の「毎日骨太 スキム」(200g400円)と「毎日骨太 スキム スティックタイプ」(16g×7本390円)をリニューアル発売しています。

「毎日骨太 スキム」は2012年から発売していますが、コップ1杯で1日分の1/2のカルシウムが摂取できるのが特徴で、乳幼児用の粉ミルクではありません。

2017年9月には、雪印ビーンスタークが「プラチナミルクforバランス」(300g2400円)、「同パワー」(8g×14本2400円)、「同ビューティー」(10g×14本2400円)を発売し、商品ラインナップが豊富になりました。

ここで、2016年7月から2018年6月までの大人向け粉ミルクの販売実績を調べてみました。

<大人向け粉ミルクの販売実績>
大人向け粉ミルクの販売実績
RDS市場データ:SM全国2016年7月~2018年6月実績推移(100店舗当り)
分類:Plano-POSのMy属性機能で成人飲用用途の粉ミルクをグルーピング 

2016年7月から2017年6月を緑、2017年7月から2018年6月を黄色の棒グラフで表しています。

2017年7月から9月までの3カ月間は販売実績で前年割れとなっていますが、新製品の投入された2017年10月以降は毎月、前年実績を超える売上で、2018年6月は前年比で92%増と大きく伸長しています。

赤矢印の2017年9月はメディアなどでもスキムミルクの成人飲用が広く取り上げられはじめた頃です。脅威の伸張で正直なところ驚きました。

なぜ、ここまで伸びてきているのか、Webサイトやメディアを調べてみると栄養補給のほかに、「サプリメントと違い、安心感がある(そもそも赤ちゃんが飲んでいるから)」「牛乳が飲みたくても飲めないので代替品として(お腹がゴロゴロしてしまう)」
「ダイエットに適しているから(脂肪分が無く栄養価が高い)」「スーパーフードブームで、高栄養補助食品に関心が高い?」といったコメントが多く見受けられました。

こんな認識を消費者がしているとは、個人的には全く思っても見ませんでした。正直調べてみてなるほどと思った次第です。

ここで、粉ミルクの本家本元ともいえる育児用の粉ミルク市場を調べてみました。

<粉ミルク全体の市場推移>
粉ミルク全体の市場推移
RDS市場データ:粉ミルク_SM全国2016年7月~2018年6月実績推移(100店舗当り)
分類:Plano-POSのMy属性機能で成人飲用用途の粉ミルクを除く商品をグルーピング

大人向けの商品を除く粉ミルク市場を見てみると、直近2年間では下降気味の実績となっており、決して順調とは言えない実績であることがわかりました。

特に粉ミルクカテゴリの中で一番のボリュームカテゴリである「乳児・育児用粉ミルク」については少子高齢化もあり、大きなダウントレンドになっていることが見て取れます。

厚生労働省の発表では2017年度の出生率は94.1万人(推計)と過去最低だそうです。2014年度から2017年度の出生数と育児用粉ミルクの販売実績を比較してみると、出生数の減少にともない育児用粉ミルクの販売実績も低下しています。

この数値を見ると更に厳しさを実感しました。

<出生数と育児用粉ミルクの販売実績>
出生数と育児用粉ミルクの販売実績
RDS市場データ:育児用ミルクSM全国2016年7月~2018年6月実績推移(100店舗当り)
出生数:厚生労働省 人口動態調査(2017年度は推計)

少子高齢化で苦戦が続く粉ミルク市場ですが、大人向け粉ミルクの登場で市場がどう変化したのか。RDS-POSで検証してみました。

粉ミルク全体の販売実績を見ると、2017年度では総計で前年比2%増となり市場は拡大していました。

成人飲用向け粉ミルクのカテゴリ貢献度は、SKUが少ないにも関わらず、市場全体への貢献度が高いことがわかりました。

<育児用粉ミルクと成人向け粉ミルクの販売実績>
育児用粉ミルクと成人向け粉ミルクの販売実績
RDS市場データ:SM全国2016年7月~2018年6月実績推移(100店舗当り)

販売構成比を見ると、2018年6月の実績では、乳児・育児用粉ミルクの構成比は85.2%で大人向け粉ミルクの構成比は14.8%となっています。

2017年7月時点では、乳児・育児用粉ミルクの構成比は92.2%、大人向け粉ミルクの構成比6.8%であったため、大人向け粉ミルクの構成比は2倍以上まで拡大しています。

<育児用粉ミルクと成人向け粉ミルクの販売構成比>
育児用粉ミルクと成人向け粉ミルクの販売構成比
RDS市場データ:SM全国2014年7月~2018年6月実績推移(100店舗当り)

少子高齢化により、これからも健康志向への注目が集まるほか、行政から自分自身で健康管理をするセルフメディケーションについての情報発信も強化されると思います。

大人向けの粉ミルクの有用性と、単品飲用だけでなく、ヨーグルトに加えるなど、他食品にプラスできる利便性を売り場でアピールしてみるのはいかがでしょうか?

お客様は、特に○○が良い!○○に良い!などの言葉に敏感で、直ぐに反応する人も多いと感じます。

なかなか定着しづらいというのも特徴かと思いますが、身近なものは受け入れやすくそこに「ちょっとしたプラス要素」が加わることで、新たな価値を見出し、大きな売り上げにつなげられると思います。

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