東急不動産/体験型店舗メインのリーシングで新たな商業施設運営に挑戦
2024年07月19日 17:46 / 店舗レポート
東急不動産は7月25日、JR渋谷駅直結の複合施設「渋谷サクラステージ」のまちびらきを行う。
商業施設部分は、生活必需品を展開する『生活サービス』『飲食』『体験型』の3つのテーマでリーシングを実施。業種別のテナントの店舗数構成比は、生活サービス20%、飲食20%、体験型60%程度。店舗面積では、生活サービス30%、飲食30%、体験型40%程度となっている。
今回、商品やサービスを販売しない体験型店舗を主力とした商業施設運営について、都市事業ユニット渋谷事業本部の黒川泰宏執行役員本部長に聞いた。
――渋谷サクラステージのテナントリーシングの狙いを教えてください。
黒川 これからの商業施設を考えると従来の延長線上の考え方だけでは対応できないと考えています。これからは、モノを売るだけではダメで、リアル店舗に来店してもらえる価値をつけないといけない。
――今回のリーシングの軸は、どうやって決定しましたか。
黒川 新しい視点として、企業のショールームやインディーゲームクリエイターのクリエイション拠点といった「体験型」店舗を当初から軸の一つとしていました。また、人と人が交流することで、新たな創造が生まれると考えていて、「飲食店」も軸の一つとしました。そのほか、生活必需品を販売する「生活サービス」を加えました。
渋谷駅は、大規模ターミナル駅ですが、地域で暮らす人々が多いエリアでもあります。旧東急プラザ渋谷を再開発し「渋谷フクラス」を開業したのですが、旧東急プラザには生鮮食品を販売する店舗がありました。それが再開発でなくなってしまい、地域で生鮮食品を買う場が減ってしまった課題がありました。そこで、東急ストアを誘致しました。
やはり、商業施設は地域に根付くことも大切な視点で、地域にあるニーズに対応するため「生活サービス」カテゴリーを考え、ドラッグストアのココカラファイン、コンビニのLAWSON+toksといった店舗を導入しています。
――ファッション・アパレルの店舗をゼロにした理由は。
黒川 渋谷サクラステージでは、「カルチャー」も一つのテーマであり、いまのカルチャーという観点でファッションが必要ないということではありません。ただ、今回、JR渋谷駅直結という立地特性を考え、コロナ禍後の商業施設の在り方の変化も考慮しました。変化がある中で、新しい商業施設のあり方のチャレンジとして捉えていただきたい。
――ショールームなどモノやサービスを売らない店舗は売上がありませんが、賃料はどうなるのですか。
黒川 これまでの商業施設は、モノやサービスを売ることを前提としていました。そのため、売上があることを前提にした賃料体系がありました。ご指摘の通り、ショールームなどは、売上がありません。そのかわり、企業としての認知度の向上など、情報発信や価値創造ができます。当社は、テナントやテナントを支援する企業をパートナーと位置付けています。
また、当社も理事として参画する一般社団法人渋谷あそびば制作委員会が運営するインディーゲームクリエイターのためのクリエーション拠点404 Not Foundなど、これまでになかったテナントもあります。こういったテナントも賃料が発生しますが、この拠点を支援する組織が資金を提供しています。クリエーション拠点の活動が活性化することで、支援するパートナーが増え、資金が増えることもあります。
不動産業なので、クリエーション拠点も、従来型の賃料というビジネスモデルですが、賃料を拠出するパートナーが増える可能性を感じています。そのため、スタート時の賃料設定も考慮しています。
――クリエイター活動を支援する拠点を設置することで、インキュベーション機能を持っているのですね。
黒川 ある意味、こういった活動は、新しい事業を生み出すインキュベーション機能とも言えます。渋谷サクラステージでは、ゲームを生み出す404 Not Foundのほか、ゲーム実況集団「高田村」初の公式ショップ、キャラクターグッズ専門店も誘致しています。これから生み出されるゲームが実況されたり、キャラクターの認知度が高まり、キャラクターグッズが販売されることもあるかもしれません。そういったストーリーも感じられるリーシングになっています。実際に、これらの取り組みが連携し、回っていくサイクルを作りたいと思います。
――物販店舗がメインでない場合、集客策の一つであるセールはどうなりますか。
黒川 これまでは、在庫処分を目的としたクリアランスセールといった手法がありましたが、渋谷サクラステージでは、その必要はありません。ただ、JR渋谷駅直結という立地も意識して、集客策には常に注力しています。最も分かりやすい施策は、JR渋谷駅新南改札にもっとも近いエリアに、イベントスペース「BLOOM GATE」を設置しました。
従来の発想ならば、もっとも賃料が期待できるエリアですが、あえてイベントスペースにしています。イベントなので、このエリアでは、常に何か新しいことが発生しています。施設を訪れた時に、いつも何か新しい出会いがあることは、有力な集客手段となります。にぎわいがあることで、そこからいろなことが生まれ、結果的に購買にもつながります。
――1年間、通年でイベントを実施するためのコンテンツはどう準備するのですか。
黒川 渋谷サクラステージは、ターゲットを特に定めず、あらゆる世代の人が来ること想定しています。そのため、イベント内容も、あまりラグジュアリーなものにならないようにしています。いま、映画ミニオンズのプロモーションを展開していますが、こういった外部コンテンツのほかに、テナントと連携したイベントも一つの鍵となります。
渋谷というカルチャーを考えるとアートや音楽のイベントもあります。また、デジタル技術と連携したイベントも考えています。まだ、発表できるものはありませんが、404 Not Foundが生み出したインディーゲームの発表もあるかもしれません。コンテンツの主体や切り口を変えて、多様なイベントができる体制を目指しています。
――渋谷サクラステージには、屋外にも「にぎわいステージ」がありますね。
黒川 屋外にもイベントが可能なスペースを設けています。これからの商業施設は、なにか来館するワクワクするような仕掛けが必要だと思っています。そのため、にぎわいステージのデザインは、工夫を凝らしています。夏には、ビアガーデンも開催します。さまざまなイベントに対応できる場として、期待しているところです。
――渋谷サクラステージには地権者区画もあります。地権者との連携は考えていますか。
黒川 これまでの実績として、渋谷駅前共栄会が実施する「渋谷桜丘 桜まつり」への協力があります。当然、協力できるところは、協力していきたいと考えています。
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