上半期「飲食業倒産」/淘汰加速で過去最多493件「バー・キャバレー」「すし店」2倍に
2024年07月23日 12:19 / 経営
東京商工リサーチは7月11日、2024年上半期(1~6月)「飲食業の倒産動向」調査を発表した。
2024年上半期(1~6月)の飲食業倒産(負債1000万円以上)は493件(前年同期比16.2%増、前年同期424件)で、2年連続で過去最多を更新した。飲食業の倒産が増勢を強めていて、現在のペースで推移すると、年間では初めて1000件超えとなる可能性も出てきた。
調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂、レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場、ビヤホール」「バー、キャバレー、ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2024年上半期(1~6月)の倒産を集計、分析した。
業種別では、「バー、キャバレー、ナイトクラブ」(161.1%増)と「すし店」(157.1%増)が前年同期の2倍以上に増加した。これらの業態では、繫華街の人流回復や好調なインバウンド需要の恩恵を受けている。だが、コロナ禍で傷んだ事業者は、財務改善や過剰債務の解消が困難なまま、人件費・光熱費などの上昇を受け淘汰が進んでいる。
「新型コロナウイルス」関連倒産は244件(15.2%減)で、飲食業倒産に占める割合は49.4%と3年ぶりに5割を下回った。一方、食材やエネルギー価格上昇などによる物価高倒産は32件(45.4%増、22件)、人手不足関連倒産は28件(33.3%増、21件)と、それぞれ集計開始以来の最多を更新した。
コロナ禍の収束で人流や客足が戻り、飲食業の集客や売上は回復傾向にある。だが、歴史的な円安による物価高やエネルギー価格の上昇、人件費高騰などが収益を圧迫している。コロナ関連支援策でひと息ついていた過小資本の飲食業者は少なくない。だが、客離れを懸念して、押し寄せる物価高への対抗策としての値上げ(価格転嫁)も十分に進まないなか、小・零細規模の事業者を中心とした飲食業倒産は、引き続き高水準での推移が見込まれる。
コロナ禍の手厚い資金繰り支援で、飲食業者の倒産は大幅に抑制されていた。特に、各種支援策が浸透した2022年上半期の飲食業倒産は237件にとどまり、2005年以来、17年ぶりの200件台の低水準だった。
しかし、新型コロナの5類移行後は、コロナ関連支援の終了や縮小、ゼロゼロ融資の返済の本格化などに加え、コロナ禍で潜在化していた人手不足問題が再び浮上。人件費高騰も飲食業者の採算悪化に拍車をかけている。また、食材やエネルギー価格の上昇など、さまざまなコストアップが進み、人流回復による売上増加だけでは追い付かなくなっている。円安や物価高に収束の兆しはみえず、2024年は飲食業倒産が年間初の1000台に乗せる可能性が高まっている。
業種別の最多は「専門料理店」の123件(32.2%増)だった。以下、「酒場、ビヤホール(居酒屋)」の98件(8.8%増)、「食堂、レストラン」の97件(11.8%減)と続く。
増加率の最大は、「バー、キャバレー、ナイトクラブ」の161.1%増(18件から47件)だった。次いで、「すし店」の157.1%増(7件から18件)、「持ち帰り飲食サービス業」の52.6%増(19件から29件)の順となった。
コロナ関連倒産の構成比は、最大が「すし店」の77.7%(14件)で、唯一の7割だった。また、飲食業の人手不足関連倒産28件のうち、7件(構成比25.0%)は「宅配飲食サービス業」で、配達スタッフの確保も課題になっている。
原因別では、「販売不振」が最多の430件(22.8%増)だった。次いで、「事業上の失敗」が23件(91.6%増)、「既往のシワ寄せ」が15件(40.0%減)の順。『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)の構成比は90.2%(445件)で、上半期としては3年ぶりに9割を超えた。
自治体などの積極的な創業支援を背景に、飲食業は参入しやすい環境が続いているが、杜撰な経営計画により採算ベースに乗せることができないまま事業継続を断念するケースも目立つという。
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